子供のためのルーブル美術館(41)月あかりに見えるもの/夜の海と大地・フリードリヒとミレー
人も寝静まる夜、広い空にぽっかり月が出てきました。
おや?あそこ、光ってない?
草原の暗闇の中、何かいっぱい動いています。いったい何がいるのでしょう。
これは、たくさんの羊?
羊たちは放牧を終えてむこうの山から戻ってきたところでした。
あ、猟犬もいる。
フランスの画家ミレーは、山小屋にたどり着いた羊の群れを描きました。
羊の背中に届いた白い月の光は、働き終えた羊飼いの姿を浮きあがらせました。
さあ今度は、夜の海にも行ってみましょう。
ここはバルト海の港、
暗い浜辺には漁で使った網が干してあります。取り残された帆のないヨットは、水にうつる月の光でやっと見えました。
雲からのぞいた三日月。
海には船の帆がいくつも波にゆれています。強い風で斜めになってたおれそう。
ドイツの画家フリードリヒは、ピンクや黄色、茶色の暖かい色、そして緑がかった大地の色も使って月夜の浜辺を描きました。
ミレーもフリードリヒも、こんな真っ暗な夜、大自然の中の羊飼いや漁師の生活を月のひかりで映しだしたのでした。
Bord de mer au clair de lune
Caspar David Friedrich
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ
月明かりの海辺 1818 (ルーブル美術館蔵)
Jean-François Millet
Le Parc à moutons, clair de lune Vers 1872
ジャンフランソワ・ミレー
月明かりの羊小屋 牧羊場の羊の群れ 1872 (オルセー美術館蔵)
お読みいただきありがとうございました。
今日は暗い月夜の地味な作品を、ルーブル美術館とオルセー美術館からご紹介しました。どちらの絵も美術館ではひっそりとした佇まい。見逃してしまうかもしれません。
人気のある印象派やゴッホのような華やかな作品ではありませんが、奥深い静けさが伝わってきます。フリードリヒの描く絵は、ドイツ留学中の東山魁夷に影響を与えました。
ミレーの月夜に光る羊たちは、遠くから見ればなるほど羊の群れ。近くで見ると白にベージュや深緑の混じった筆致も見えるほどの太い線で、いとも簡単にすっすっと、その月光を羊の背に描いています。
猟犬、見つかりましたか?(羊飼いの左側にいます)
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