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大根ズ ズラリ干されし冬の海2022【エッセイ】

今年の師走もまた、この海に来てしまったわ…。

トレンチコートの襟を立て、海風に髪を巻き上げられてトロールみたいになるロッタ。
すみません。トレンチコートは着ておりません。寒すぎますもの。

今年ももうすぐ来年になる。
海に干された大根達を見ると、毎回そう思います。

冬の海に突如現れた大根ズ。
干され干されて白い肌を海風にさらす、大根、大根、ひとつとんで大根足。 失礼いたしました…。

私の大根足の話などどうでもよいのです。

逆光だけど、かえってそれが、大根ズの後ろ姿に何とも言えない哀愁を漂わせ。

水分をグングンどんどん奪われながら、大根達は別のステージ(たくあん)へと一歩一歩近づいてゆくのであります。

今年の希望のわだち
大根ズ
ズラリ吊られて
何思う
萎びた前列
明日は漬物

海辺の大根ズは、私をにわか歌人にします。(なれとらんがな)

豆千さんの記事にあった詩『失われゆくもの』も、冬の寒さに追い討ちをかけるような、胸に迫るものがありました。そしてサンドイッチめちゃ美味しそう✨️


ただでさえ水分を奪われてゆく冬の乾燥肌。他人事(大根ごと)ではありません。わずかな水分が涙に変わる前に、足下に視線を移してみますと…

浜辺に生える謎の赤い植物
浜辺に横たわる宵待草らしき黄色い花
キダチアロエの花の朱色と
ひっくり返された白いボート
群青の海の冬景色が冴える

砂浜から少し離れた場所にも、澄んだ空気に洗われた凛とした世界が「冬来たり」と告げています。

おや?この木。なんだかとても賑やか。

海沿いに立つ木の枯れ枝に
海風に追われるようにしてわらわらと止まったのは
「俺だチュン!」←下を通っても最後まで逃げなかった猛者

海辺に集っていたのはスズメだけではありません。空にはトンビ、カラスなどお馴染みのメンバーが飛び交い、浜辺では、ザ・海鳥のあの方達が羽を休めておられました。

波打ち際の白い点々
猫で云うところの『香箱座り』をしている方々は
冬の海鳥といえば、カモメ!…いや、ウミネコ???

カモメかウミネコかで、いつも頭の中のロッタ議員がくるくる自分の論をひっくり返してきます。

見分け方は検索したんだ!

彼らはおそらく………カモメだ。
いや待て、なんとなく貫禄があるからウミネコ。
あいや待たれよ。可愛さからしてカモメでは?
違う違う!ここは夏でもこんなのがいたから、やっぱウミネコ!

クチバシの特徴、先端が赤と黒というのを確認できればウミネコ確定なのだが…近づくと逃げられる。

あーでもないこーでもないと混乱極まりしロッタのことを、ぽやぁ~ん))と見つめていたのは。

「おねいさん。ぼくは大根です」
「白いです」
「ほぅら、もう顔も半分白くなった」
「あなたはもう、ぼくを大根だと信じはじめている…」

ロッタ:「大・根…? カモメでもウミネコでもなく、
あなたは大根だというの?」(仲間由紀恵さんの声真似で)

海鳥大根:「そうだよ。ぼくは大根さ」

ロッタ:「ハッ!もしや、干された大根達の霊魂が、こうして姿を変えて?」

海鳥大根:「フフッ、ご名答!萎びるまで黙って干されているぼくらじゃないよ。一丁、飛んでやっか!…ってね」

その心意気に感動し、ついに落涙。

「このにんげん…チョロい」

脳内イリュージョンコントで、たっぷりカモメもしくはウミネコに遊んでもらったロッタは、再び大根ズのもとへ。

日の入り時刻が早くなってきたので、
海から射す太陽の光が低くじんわりと感じられます
前列の大根達はすでに切られ、
たくあんへの最終段階に突入した模様。
美しい冬の名物風景は離れがたく、
けれども、そろそろお時間です。

また来年。今度は穏やかな思い出とともに、この海を訪れられたらと思います。

それでは、今年もまたあの呪文でお別れです。


「エクスペクトパトローナム!大根ズよ、美味しいたくあんになぁれ✨️」


杖をしまいながら、ローブをひるがえし、満足げに冬の海を去ってゆく。ロッタ2022年の師走。


~ fin ~


最後までご覧いただき、ありがとうございました🍀

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