卒業ケーキ

コンクリートで舗装された車道に寄りかかって金盞花はただ微笑んでいる

何に怯えているの細い体

水に沈んでいくことは得意で

風に揺れることは不得意で

振り向いたら消えていく君の面影

ときどき

君の横顔照らす無数の月明かりをちゃんと見えたことはなく

ときどき

夜は眩しいからと囁く君の言葉が逡巡する

向こうに切り立った崖

俯く女の足元

膨大な過去の手土産は堆積し地層を作るから

ナイフで切って見えたアリの巣が根深く蔓延る「学生時代」

「何からの卒業?w」

とアリの複製10号は聞いて

アリの複製18号は聞いて

体は反響する

「何からの卒業?w」

「何からの卒業?w」

「何からの卒業?w」

反芻する?噛み締める?

笑わせないでと、砂糖を少々振り撒いてやる

アリは集って

金盞花にまで届いた粒子で受粉をしてしまえば素敵よ

将来の夢は・・・と書いた作文をコンクリートの電信柱に

金盞花と共に手向ける

もうお終い

もうお終い

スカーレットに染まった可愛いリボンを

砂糖水に浸して排水溝は飲み込んでくれるの

断面が地層に似た甘ーいショートケーキ

食べさせて♡

きっともうお終い

これで「学生時代」は完売なのです

アリは何も言わないアリは何も言わない

アリは何も言わないアリは何も言わない

アリは思考するアリは思考する

アリは労働するアリは労働する

金盞花を手向ける君

幸せでありますように



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