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カンロに聞く、サーキュラーエコノミーを実現する廃棄物の価値創造とは

1912年の創業以来、その時代や消費者のニーズに合わせた「ひとつぶ」を作り続けているカンロさん。近年は他業種との協業でやむを得ず廃棄となってしまうモノたちを生まれ変わらせています。

お話をうかがったのは
カンロ株式会社
フューチャーデザイン事業本部長兼経営企画部長 渡邊真治さん
フューチャーデザイン事業本部 担当部長 礒辺友里子さん
研究・技術本部 技術部 評価技術チーム 係長 小沼麻美さん

※2023年8月取材。本文中の肩書きは取材時のものです。
(左)礒辺友里子さん (右)小沼麻美さん
渡邊真治さん


廃棄される飴を再生する新たな試みとは


カンロを代表する商品カンロ飴は、砂糖や水あめを溶かしながら煮詰め、細長いロープ状にした生地をアメ玉の形にカットして作ります。この成形の工程で出る削りかすや、気泡が入ったり欠けがあったりして検品ではじかれて廃棄するものが発生します。そのうち約85%は飼料や肥料としてこれまでも活用してきましたが、新たな価値を付与できないかと模索してきました。

そんな時、カンロが参加したサーキュラーエコノミー(循環型経済)の勉強会で、独自の発酵技術を持つバイオエンジニアリング企業と出会ったのです。

この発酵技術を使い、廃棄予定の未利用カンロ飴にお米などを加えて、アルコールを精製。そのアルコールなどを染みこませ、「キャンディを取る手と渡す手に使ってもらいたい」とウエットティッシュを誕生させました。コンパクトで可愛いパッケージを採用し、カンロ直営店「ヒトツブカンロ」のサステナブルライン「ヒトツブカンロearth」として発売し、新たな価値を見いだすことができました。

ヒトツブカンロearth「地球をあるくウエットティッシュ」
  • また「ヒトツブカンロearth」ではサトウキビやトウモロコシなど“糖”にゆかりの深い植物を原料とする生分解性素材を使用したハンドタオルや、清見みかんを搾汁したときに残る繊維質「清見パルプ」を使用したグミ「リ ミカングミ」も開発。本来「清見パルプ」は、香りが高く、味もおいしいという理由からグミに採用したのですが、結果として食品ロスの削減へとつながりました。

ヒトツブカンロearth「リ ミカングミ」


長年の問題を解決した廃棄包材のアップサイクルとは


カンロでは、マイナスをプラスに変えるサステナビリティと、ゼロからプラスを生み出すウェルビーイングの2軸でさまざまな取り組みを行っているのですが、今回サステナビリティ軸でチャレンジしたのが、製造工程上どうしても発生してしまう廃棄包材の活用です。今までも廃棄包材が出ないように努力していたものの、どうしても出てしまう廃棄包材に関して心を痛めていました。良い活用方法を模索しましたが見つからず、自社でできる限界を感じていました。

そこで、流通規格から外れた和紙の損紙や破棄される屋外広告などからファッションや雑貨などを生み出しているデザインファームと出会い、コラボレーションを決定。廃棄包材を雑貨として生まれ変わらせることにしたのです。その第一弾としておなじみのカンロ飴と、ポップで可愛いピュレグミの廃棄包材を使ったバッグやサコッシュ、ペンケースの作成に着手。職人がひとつずつ手作業で廃棄包材を分解して圧着し、一枚のシートにしてから縫い上げることで、使われる包材の部分によって柄の配置が異なる世界にひとつの雑貨を完成させました。これをカンロ初となるクラウドファンディングのプロジェクトとして販売したところ、「可愛い!」という声が続々と寄せられ、初日で目標を達成。自社では解決できなくても協業すればできることがあると改めて実感しました。

カンロ飴とピュレグミの廃棄予定のパッケージ包材からアップサイクルされた
ペンケース、サコッシュ、バッグ(画像提供:カンロ株式会社)
廃棄予定のパッケージ包材からアップサイクルされたバッグ
【カンロ飴パッケージ】(画像提供:カンロ株式会社)

またサーキュラーエコノミーの観点から、せっかく新たな価値を得た廃棄包材を再びゴミにしてしまわないよう、雑貨が傷んだときに修理できる仕組みやサービスも構想中です。この先も、食品業界にこだわらず幅広い分野の企業や人と出会う機会を作り、私たちの想像の範疇を超えたアップサイクルや新しい取り組みに挑戦して、社会全体を良くしていきたいと考えています。

賞味期限延長を実現したカンロ技術部の取り組みとは


一般的な飴は「定められた方法により 保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなる恐れがないと認められる期限を示す年月日」としての法的な消費期限は設定されておらず、おいしく食べられる目安としての賞味期限が表記されています。

そもそも飴は、主原料が砂糖と水飴で、水分が3%程度と他の食品に比べて低く、品質の変化が起こりにくい食品です。カンロではこれまで夏場の暑さに弱いという飴の性質を考え、夏を2度越すことがないよう賞味期限を長いものでも1年としていましたが、食品ロス削減の観点から賞味期限の見直しを実施。輸送中や卸・店舗のバックヤードなどさまざまな環境を想定した長期間の耐久試験を行い、風味や色の劣化がないかを実際に試食してチェックする官能検査のほかに、必要に応じて理化学検査でも確認し、半数以上の飴の賞味期限を1年間から2年間に延長しました。

また飴が包材にくっついたことによる廃棄がなくなるよう、飴がべたつきにくいバリア性の高い包材に変更するなど各種製品のパッケージも工夫。これからはカンロ全体で、飴の保管方法を伝えていくなど、消費者の皆さんサイドでも食品ロスを削減していただけるよう努めていきます。


Information



執筆:河野聡子(有限会社キーノート)
取材:明石麻穂(ロスをロスするProject
   河野聡子(有限会社キーノート)
撮影:鹿島祐樹(株式会社エンビジョン
   羽田幸平(株式会社エンビジョン


※この記事は、2023年10月4日にロスをロスするProjectのWEBサイト「ロスは、きっとロスできる」に公開した記事をnote用に編集したものです。

WEBサイトも続々更新中ですので、ぜひご覧ください!

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