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<文章の書き方>Vol.1 「1対1」最少単位の“書く”コミュニケーションツール「お手紙」から始める

このnoteでは、私自身がライターとして仕事をする中で教わってきたことや気づき、「私はこんなことを大切にしています」ということを書き綴っていきます。
 
「文章を書くことに苦手意識があるけれど、気持ちや思いをじっくりと伝えるために、好きになれたらいいなぁ」「自分が出会った素敵な人や場所、出来事について、文章で誰かと共有できるようになれたらいいなぁ」と思っている方にとって、少しでも何かご参考になれば嬉しいです。
 
具体的には、
 ◎原稿を書くこと
 ◎インタビューをすること
 ◎個人フリーペーパーで発信すること
といった内容で展開していく予定です。
 
記念すべき、第1回目は「文章を書く練習として、お手紙を書いてみませんか?」という提案をします。

“たった1人に伝える”ことから始める

「え? どうして、お手紙?」と思われるかもしれません。
 
そもそも私がお手紙でのやりとりが好きということもありますが、その経験と、雑誌やウェブマガジンなどのライターをしてきて思うのは、お手紙は“書く”コミュニケーションの中でも「1対1」という最少単位であるということです。
 
マスメディアやSNSの投稿のように、多くの人たちのことを意識する必要がありません。一方で、日記のように、自分の好き勝手に書くものでもありません。
 
お手紙は1人、誰かのことを思って、そのたった1人に伝えるために書きます。
 
そのほかにも、1対1のツールといえば、メールやLINE、Messengerなどがありますね。ただ、それらは即時的なやりとりができるため、主に連絡ツールとして、端的な言葉のやりとりやレスポンスの早さのほうが重要視されているのかなぁと思います。
 
それらのツールが登場し普及したおかげで、お手紙は日常の中の“余計なもの”として、気持ちや思いをじっくりと書いて伝えることのできるツールになっているのではないでしょうか。

伝えたい相手を、1人思い浮かべる

どうして、最初に「お手紙」「1対1であること」をクローズアップするのか、そこには理由があります。まずは1人を想像できないと伝わりやすい文章は書けないのかなと考えるからです。
 
たとえば、何かの企画などを考える場面、「ペルソナ(ターゲットとなる、具体的で代表的な人物像)を考えましょう」と言われたことはありませんか? 私は編集プロダクションに入社した当時、雑誌の企画出しをする時によく言われました。
 
雑誌には「○歳代の、○○○に関心のある人たち」といった読者層というものがあります。

その読者層について、深掘りして「何歳で、どんな1日を過ごしていて、趣味は何で、どんな暮らしをしていて、どんなことに喜びを感じていて・・・」といったことを細かく考えた架空の1人の人物像をつくり上げるんです。そうすることで、企画を考える時は多くの人たちではなく、その1人の人物像に向けて考えるといいので、その1人に届くメッセージを選べるようになります。

その1人は、読者層の代表的な人物像ですから、結果的にたった1人ではなく、読者層に届くメッセージとなるわけです。
 
このように、多くの人たちを意識するマスメディアでも、1人の読者像を具体的にイメージして意識した上でどんなメッセージを、どう伝えていくのかを考えています。具体的な1人に向けて、その1人に伝わるように書くお手紙は、“書く”コミュニケーションのいい練習になると思いました。

相手が具体的に思い浮かぶからこそ

お手紙なら書けそうと思いますか? それとも、反対に気構えてしまうでしょうか? そもそも、日常生活の中でお手紙を書くことはありますか?
 
私が主催する「おてがみぃと」(ゆるやかにお手紙を書く時間を楽しむ会)で、「最近、仕事ではなく、プライベートで、お手紙を書いたのはいつですか?」と質問すると、日常の中でお手紙を書く習慣があるという方もいれば、「学生時代に」「今のパートナーと結婚する前に」と数十年書いていないという方がいたり、「お誕生日や母の日・父の日、お祝い事のプレゼントに添えて」「お礼を伝えるために」と特別な日には書くという方がいたりします。
 
メールやLINE、Messengerなど便利なコミュニケーションツールが複数ありますから、わざわざ手書きして、封筒に入れて、切手を貼って、郵便ポストに投函するという非常に手間も時間もかかるお手紙は、特別になっているのかもしれません。
 
ゆえに、「上手に書かないといけない」「充実した内容でなければいけない」と気負ってしまい、お手紙を書くハードルも上がっているのではないでしょうか。
 
意外と、お手紙よりSNSの投稿のほうが書きやすかったりします。
 
SNSは多くの人たちに向けて書くとしても、特定の誰かの顔が思い浮かんでいるわけではありません。漠然とフォローしてくれている人たちは意識しながらも、ぼんやりとした姿しか見えていないので、自分が好きなように書いて発信できてしまう部分があります。
 
一方で、お手紙は1人の顔が思い浮かんでいるので、「あの人なら、ここから話さないとわからないよな」「あれはどう話したらわかるかなぁ」など、いろいろ悩むポイントが出てくるんです。その悩むポイントが出てくるのがいい!

それによって、何を、どこから、どう書けばいいのかという文章構成や言葉の選び方などが見えてくるからです。また、「この内容じゃ、わからへんで」とか、頭の中で相手と会話するイメージも広がるので、つっこみも生まれてきて、文章をよりよくしていくポイントも見出せます。
 
私が原稿を書く時でも考えるのは、こういうことなんですよね。

その1人に伝えるために、心を尽くす

お手紙を書くハードルを下げたいので、ここで1通見ていただきたいお手紙があります。
 
私が小学校時代に宿泊学習に行った際、父からもらったお手紙です。

受け取った当時は思春期だったというのもあったのでしょう。「なんじゃこりゃ」と思って、嬉しさより、恥ずかしさのほうが強く(私は父子家庭だったので父からでしたが、友だちの多くはお母さんからだったからというのもありました)、正直嬉しくありませんでした。
 
でも、大切に保管していたわけではないのに、なぜかずっと手元に残っていたんです。
 
大人になってから、改めてこのお手紙を読むと、受け取った時よりも、心に響いてきました。特に、実のある内容でもなく、何でもないお手紙なんですが、伝わってくるお手紙だと思っています。
 
これは極端な例です。
 
ただ、こんなふうにお手紙は特別なものではなく、コミュニケーションツールの1つでしかありません。芸術作品のように、何かすごくいい文章を書かなければならない、上手な文章を書かなければならないではなく、たった1人に伝えたいことが伝わるように意識して文章で表現するだけで十分なんです。
 
書くことはあくまで、コミュニケーションの一つ。お手紙は、そのことも思い出させてくれます。
 
余談ですが、編集プロダクションに入社して、初めて雑誌の原稿を書いた時に先輩から言われたことが「すごい文章を書こうとしなくていいんだよ」。つまり、芸術作品のようにかっこいい言葉や文章を書こうとしなくてもいい、シンプルに伝えたいことが伝わる言葉や文章を書いてということです。当時の私は「いい文章を書こう」としていたんですね。今もそのメッセージが心に残っています。
 
お手紙を書いてみる、そのハードルは下がりましたか?
 
すごいことを書かなくても、上手な文章ではなくてもいいんです。シンプルに、伝えたいことを、伝えたい相手に伝えることに一所懸命になることが何よりも大切だと思います。そのはじめの一歩として、お手紙がぴったりだと思っていて、今回「お手紙を書いてみませんか?」という提案をしました。

書くことが特別になっているお手紙は、もらうことも特別になっていると思うので、サプライズな贈り物にもなると思います。実際に、誰かにお手紙を書いてみませんか?



次回から、私がお手紙を書く上で大切にしているポイントやコツについて、お手紙だけではなく、文章を書く時にもご参考としていただける内容も絡めてお話しします!

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