【随想】小説『ゴールデンスランバー』伊坂 幸太郎
ゴールデンスランバー読みました。
伊坂幸太郎は色々途中まで読んでうっちゃってしまっているものが多く、これはどうであったか。
読み返しても、中身を思い出せないから、きっと読んでいなかったのだろう。
本屋大賞と、山本周五郎賞を受賞しているらしい。
2007年の作品。16年も前か。
タイトルは、ビートルズの同名曲から。
邦訳で「黄金のまどろみ」
元ネタは、トマス・デッカーの子守唄である。
次の歌詞が、
作中で何度も引用される。
ゴールデンスランバーの入ったビートルズ11番目のアルバム『アビイ・ロード』は、
とある。
「You Never Give Me Your Money」~「The End」が一つのメドレーということだ。
本書の構成は、
となっており、ほぼ紙幅の9割が、第四部の「事件」にあてられている。
しかも、その事件は、たった3日間の出来事である。
濡れ衣を着せられた無実の男が、
ただひたすら逃走するさまを描いている。
という友人の言葉を胸に、行動していく主人公に、
ドラマ『エルピス』最終回の長澤まさみの言葉が重なる。
読んでいて、巧妙に伏線が張り巡らされていくのは、いつもの伊坂マジック。
置かれていく布石に、気づいてしまうとゲンナリするが、
その気なく読んでいると、点と点が繋がったときに、それが気持ちよさに変わる。
追い詰められた主人公もまた、
アビイ・ロードのポール・マッカートニーさながら、
ことで、現状を打破しようとする。
この伏線回収のプロットをキャラクターに自由意志のない予定調和とみるか、
稀代のストーリーテラーのなせる曲芸もしくは逃れられない個性とみるかは、紙一重であろう。
P.S.シーマンが懐かしかった!
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