とりあえず、富士山に会いに(続)
「わあぁっ! 入っちゃダメ〜」
夜はキャンプ地らしいお客さまがやってきた。
だれかがシャワーから戻るたびに、バッタ系の虫さんたちが一緒に
「こんばんは」
と戻ってくる。
お部屋の入り口に虫取り網が置いてある理由がわかった。
ただ、そこまで嫌ではない。山の雰囲気がなせる技だ。
「わっ!」 「おぉっ!」
にぎやかに夜はふける。
(ぱちりっ)
朝4時40分。
1人、目を覚ます。
朝はとても苦手だが、“何かありそうレーダー”が反応している。
静かにベッドを出る。
裏手の森に回ろうとすると……
(…っ どどっ……)
鹿だ! 鹿が7頭、駆け出した。
ブランコや、なまくびごっこをして遊んでいたあたりで、朝露に濡れた草を食べていたようだ。
ネットレビューで鹿が近くにいること、HOSHI FULL DOOM FUJIのスタッフの方からも「野生動物が来る」という話を効いていたが、あんなに沢山の鹿が間近に来るとは思っていなかった。
それにしても、鹿たちが一斉に地面を蹴る力強い音は素敵だった。
おしりが白いのもかわいい。
とても幸福な気分に包まれ、テントに戻る。
「うわっ!」
ドアを開けると、昨夜虫が入って来た時と同じ反応で迎える夫。
「目が覚めたらいなくなっていたから、
神隠しにあったと思った……」
さすがに、そんなに民話チックなことは(笑)
すっかり明るくなった午前7時。
朝日を浴びながら、3人で無料のヨガ体験に参加する。
みんなはじめてで、正しいポーズができているとは思えなかったが、それでも、自然の中で光や風、虫の羽音を聞きながら体験するヨガはとても心地よかった。
その後、朝食をいただく。
慎重派な子どもがちょこちょこ確認する様子を見て、「ビビリだな〜」と笑っていたのだが、自分の分は……
上手く焼けたパンを食す子と夫に、
「イカ墨パン、イカすね!」
などと言われながら朝食を終えた。
充実した気持ちで忘れそうになっていたが、この旅の目的は富士山を見ることである。
チェックアウトし、本日の目的地へ。
美しい庭園と富士山、貴族が愛したオルゴールコレクションが楽しめる場所だ。
多少、雲が多いが晴れている。
富士山に会えるか……
残念ながら、全景を見ることは叶わなかった。
悲しい……。
とりあえず、1泊2日の旅行スケジュールの中で、富士山をしっかり見ることはできなかった。
でも、
思い出やお土産話は山のように作ることができて、楽しかった。
富士山には、また近いうちに会いに行こう。