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書物忘却の備忘録

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読書歴65年、いろんな本を読んで、いろんな本を書いて、作ってきたけど、それらの本についての思い出を、書いておきます。それは自分探しだったり、人との出会いだったり、本当に雑然とした…
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記事一覧

本の記憶。 詩集『マルスの薔薇』

荘原照子という戦前の昭和十年代に活躍した女流詩人がいる。      一冊だけ『マルスの薔…

塩澤幸登
3年前
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本の記憶。 『七十歳 男の出番』

古本としてどのくらいの価値があるか、知りませんが、大切にしている本の話です。この二冊の本…

塩澤幸登
3年前
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沈黙図書館について

【沈黙図書館】とはなにか。 先日、YOU TUBEに沈黙図書館を名乗るチューバーが現れて、ビック…

塩澤幸登
4年前
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本の記憶 小説『横しぐれ』

『横しぐれ』は作家の丸谷才一が一九七五年(昭和五〇年)に講談社から上梓した小説なのだが、…

塩澤幸登
4年前
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本の記憶。 ルソー『懺悔録』

ルソーの岩波文庫は『懺悔録』上・中・下巻、『民約論』、『孤独な散歩者の夢想』、五冊の文庫本…

塩澤幸登
4年前
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本の記憶。マルクスの『資本論』

わたしがこれまで読んだ本のなかで、一番大きな影響を受けた本はなにかと訊かれたら、わたしは…

塩澤幸登
4年前
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本の記憶。 D・カーネギー 『人を動かす』

本の帯の惹句に「邦訳410万部突破! 世界的ロングセラー」社会人として身につけるべき人間関係の原則を具体的に明示して、あらゆる自己啓発本の原点となった不朽の名著とある。 英文原題は「How To Win Friends and Influense People」 ここでのWinは勝ち負けのWinではなく、gain、getに近い意味だろう。influenceも名詞ではなく、動詞。影響を及ぼす、という意味だ。 サラリーマンだったころ、こういう人間関係のハウツー本を何冊も読んでい

本の記憶。ロバート・フランク写真集

わたしのプライベート図書館は【沈黙図書館】という。同名のブログをアメーバでやっているから…

塩澤幸登
4年前
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本の記憶。横光利一の『旅愁』

わたしは五冊というか、五種類の『旅愁』を持っている。 まず、横光の死後、改造社が作った全…

塩澤幸登
4年前
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本の記憶。『ドリトル先生航海記』

自分のなかの読書体験の原初の記憶をたどろうとすると、わたしの場合、この本にたどり着く。小…

塩澤幸登
4年前
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本の記憶。鴨長明『方丈記』

2008年6月15日の朝日新聞、「天声人語」である。三年後に日本を見舞う大震災を予言したようなコ…

塩澤幸登
4年前
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本の記憶。『魔の山』を読み終わる。

2年半前の話。2017年の11月の初めから2018年5月にかけて、読みつづけていたトーマス・マンの…

塩澤幸登
4年前
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本の記憶。『新進傑作小説全集・横光利一集』

自分が文章修行で一番お世話になった本。      わたしが一番好きな作家は昭和の文豪・横…

塩澤幸登
4年前

本の記憶。 新書『丸山ワクチン』

1976年9月発行。著者は丸山千里。 KKベストセラーズから刊行された新書版、ペーパーバックである。この本はわたしの人生初ともいうべき苦難と結びついている。 発端は1983年の夏、母にガンが見つかった。胃がんで、末期でもう直しようがない、医者からあと10ヶ月くらいの命ではないかと宣告された。このとき、母はまだ64歳だった。肉親の、それも最も大切にしていた人の死を宣告されて、このときは本当に辛かった。それで、あれこれ何とかならないかと考えて頼ったのが、丸山ワクチンだった。当