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僕と映画と多重露光

僕の作品の特徴はアナログな方法による多重露光です。多重露光と言うのは簡単に言うと1つのコマに2回以上シャッターを切って異なる被写体(同じ被写体でもいいですけど)を重ねて撮影することです。と言うことは、2回以上シャッターさえ切れば誰でもできることなんです。ただ誰でもできることをあまりする人がいないのはなぜでしょう?それにはいくつかの理由が考えれるのですが、その一つに「何と何を重ねたら良いのかわからない」と言う理由です。今回は僕が多重露光で撮影する際のアイデアがどのように生まれてきたかをお話ししたいと思います。

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僕が多重露光の撮影を始めた頃は、正直言って他の人が言うほど重ねる被写体に悩むことはありませんでした。それは多重露光の撮影は常に実験だと思っていたから。頭の中で「あれとあれを重ねたらどうなるんだろう?」みたいな。それは街中を歩いている時や、車を運転している時や、テレビを見ている時など。目に飛び込んで来るちょっと変わった形や景色を見ると頭の中でパズルを完成させて実際に撮影をしてみるのです。だからそこには何の意図もなく、ただ単純に重ね、偶然性を楽しんでいました。だから僕は悩むことがなかったのです。実験だから失敗は当たり前だし。

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そんな感じで多重露光の撮影を2〜3年続けていると段々と実験的な撮影というよりも、必然的な自分の意思に基づいた多重露光の作品を作りたくなってきたのです。それは今までの実験的な撮影で、ある程度の技術と経験を積むことができ作品をコントロール出来ていると自信がついたからです。

そんな時クリストファーノーラン監督の映画「Inception(インセプション)」を見て強烈にその映画の世界を多重露光で表現したいと思ったのです。この映画は内容も面白かったのですが、その世界観がとても僕の好みでした。もちろんこの映画はCGを多用したものですが、アナログでの多重露光でも表現できるシーンがいくつかのあったのです。そうです。僕はこの映画の世界を多重露光で表現しようと決意したのです。もはや実験ではなく必然的な自分の意思のもとに作品作りを始めたきっかけになったのです。

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ちなみに上の写真がその一枚。映画の後半で岸壁に並ぶ高層ビル群が海に崩れ落ちてくるシーンを再現(ポルトガルと香港で撮影した多重露光)。

この撮影がきっかけで僕の多重露光のアイデアは身近にある光景からではなく、映画のような非現実の世界へ目を向けるようになったのです。そしてその第二弾として撮影をしたのは「The day after tomorrow」という映画をモチーフにしたものです。下の写真はその映画でニューヨークが津波に襲われるシーンを表現したものです(ニューヨークとアイスランドで撮影)。

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この頃から僕の映画の楽しみ方がかなり間違った方へ進んで行ったのです。でもそのおかげで素晴らしいアイデアが思いつくこともあるので、これからもこれは変わることはないでしょう。

さて、こんな多重露光を撮影しようと思った時に「どこで撮影が出来るのか」と言う問題が出てきます。次回は僕のロケハンのお話をしたいと思います。

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