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“地元の魅力”を魅力的に伝えるには/「Ready for BIWAICHI MORIYAMA」守山を世界に通じる自転車のまちに!

【“地元の魅力”を魅力的に伝えるメディア】の要点を読み解く『ローカルナナメヨミ』。第3回は、滋賀県守山市の「Ready for BIWAICHI MORIYAMA」をピックアップします。


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①支点(視点/始点):どのような視点で地元を見つめ、どのようなコンセプトで企画し、運営をしているか
②力点:どうデザイン(設計)し、どんなアプローチで伝えているか
③作用点:コンテンツの発信により、どのような反響があるか


#3/守山を拠点に琵琶湖を楽しむ「ビワイチ守山」

「ビワイチ」に興味を持ったのは、近所のサイクルショップに立っていたのぼりがきっかけです。東京から滋賀に移住して1年ほどの私には馴染みのない言葉だったので、さっそく調べてみました。

「ビワイチ」とは?
「琵琶湖一周」の略称。琵琶湖を自転車で一周するサイクリングルートのことで、日本を代表するサイクリングルート「ナショナルサイクルルート」の一つに選ばれています。

日本一大きい湖・琵琶湖を自転車で一周? 運動不足解消によさそうだけど、ちょっとハードル高いな…。早くも諦めかけながらも検索結果をスクロールしていくと、一際ポップなこちらのサイトを発見。

イラストが多めで分かりやすくて楽しそう。なんだか私にもできる気がしてきました!

滋賀県が取り組む「ビワイチ」を地域の特色を生かして盛り上げる「ビワイチ守山」について、守山市役所地域振興課の杉本さんに、企画をスタートした経緯や込めた思い、これからの目標についてお聞きしました。


①メディアの支点/企画の狙いとコンセプト

―「Ready for BIWAICHI MORIYAMA」は、初心者に寄り添った雰囲気が印象的でした。まずは、守山市で独自にビワイチの楽しみ方を発信し始めた経緯をお聞きしたいです。

平成27年から全国的に地方創生をがんばろうという動きが出てきた中で、大学時代に自転車部に所属していた守山市長のもと「自転車のまちづくり」プロジェクトがはじまりました。
今でこそ自転車は、SDGsへの取り組みや3密を避ける移動手段として注目されて、多くの自治体が観光や地域振興に取り入れていますが、当時自転車のまちづくりを進めているエリアはまだまだ少なく、自転車といえばしまなみ海道でした。そこでしまなみ海道をロールモデルとして、

■ 土地が平坦で走りやすい
■ 琵琶湖を横断する琵琶湖大橋の袂に位置する

という土地柄を生かした「ビワイチの発着点・守山」を目指す取り組みを、約6年間続けています。

キャプ入り

― 滋賀県のシンボル・琵琶湖×自転車×守山の立地で「ビワイチの発着点」という新しい魅力を生み出したんですね。ちなみに…ずっとこのプロジェクトを担当されている杉本さんも自転車がお好きなんですか?

それが、全然なんです(笑)

― えぇ!(予想外の返答に戸惑う)

もちろんきらいではないですし、普段からスポーツバイクに乗っています。でも何時間も走り続けるのはいやで、せいぜい1時間くらい子どもと一緒に楽しむくらいが好きなんです。いわゆるサイクリストではないけど、こういう観点もまちづくりには重要だと思っています。
サイクルツーリズムを推進するために、琵琶湖をサイクリングの聖地にしたい。それにはたくさんのサイクリストに走ってもらう必要があるので、プロのサイクリスト監修のコースマップや走行動画を作成するなど、上級者に向けたコンテンツも作っています。

その反面で、地域振興としては自転車大好きじゃなくてもいいんです。市民の皆さんの移動手段や休日の過ごし方として自転車という選択肢があればいい。そこで自転車を選ぶ人が増えるように、自転車購入補助金制度を実施したり、ビワイチをやってみたいと思ったときに準備やコース選びの参考になる「Ready for BIWAICHI MORIYAMA」を制作しました。

自転車を軸にして、“サイクリストへ向けた観光振興”と“市民の皆さんと一緒に進める地域振興”の2つを両立しているのが守山のまちづくりです。


②メディアの力点/誰でも入りやすい「カフェ」のような雰囲気でビワイチの楽しさをアピール

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―「Ready for BIWAICHI MORIYAMA」のサイト制作にあたってはどんなことを意識されましたか?

自転車が好きでも普通でも関係なく、カフェのように気軽に入れるサイトを目指しました。琵琶湖の周辺に何があるか、ビワイチに必要な準備は何かが直感的に伝わるようにイラストを多用して、女性2人が自転車でゆったりと過ごす様子を載せています。

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コンテンツはビワイチを“自由に楽しむ”をキーワードにして、ビワイチに必要な物やレベルに合わせて選べるコースを紹介。行政のサイトは地域のお店やスポットだけを取り上げるものが多いですが、このサイトでは他の市町も含めたコースで魅力を発信しています。自転車で1時間も走れば初心者の方でも隣町まで行けるので、守山の中だけで過ごしてもらうのは不自然だと思ったんです。守山から出発してもらうための、近隣都府県からのアクセスや自転車を借りられるお店の情報は入れつつ、あとは琵琶湖周辺で好きな物を食べて、好きなところに泊まって「また守山からビワイチしたい」と思ってもらうことが大切だと考えています。

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― 自治体の枠にとらわれず「琵琶湖」の楽しみを伝える懐の深さが、サイトのおおらかな印象や初心者の動機付けにつながるのかもしれませんね!


③メディアの作用点/地域の活性化と今度の目標

―「Ready for BIWAICHI MORIYAMA」をはじめとしたビワイチ守山への反響やまちの変化はありましたか?

僕は自転車のまちづくりの他にも、守山でトライアスロンをやるというプロジェクトのお手伝いもしていて、琵琶湖周辺のお店やレンタサイクル店に行くことが多いんです。そこで自転車に乗った人に出会ったら、守山へ来た目的や自転車に乗ろうと思った理由、行先を聞くことにしています。夏休みにサークル仲間と琵琶湖へ来て、サンダルにタンクトップ姿でビワイチに挑む大学生。会社をリタイアした後の楽しみができたという70代の男性など、幅広い年代にビワイチ守山が浸透してきていると感じますね。
まちの変化という面でも、琵琶湖大橋付近にスーパー銭湯ができたり、美術館が過去最高来客数を記録したり、スポーツシューズメーカーが出店したり、プロジェクトが発足した6年前に比べるとかなり活性化しています。「守山といえば自転車だよね」といわれる回数が増えたことも、個人的にうれしいポイントです。

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― これまでの成果が順調に表れているんですね。最後に、今後の展開や目標について教えていください!

コロナ禍で国内旅行をする人が増えたり、移動手段として改めて自転車が注目されて、追い風が吹いていると感じます。“自転車のまち守山”、“ビワイチの発着点・守山”をキーワードにしたまちづくりはこれからも変わりませんが、今年は自転車の活用法を改めてしっかりと考えて、これまで築いてきたものをもっと広げていきたいです。
また、今は「ビワニ/ビワサン」(24時間で琵琶湖を2周/3周すること)にチャレンジする方がいたり、一生で100回ビワイチする「ビワ100」を目指す方もいます。そうやって新しい楽しみ方が生まれ、それぞれが自分に合ったビワイチを見つけて、いずれは文化になるといいなと思うんです。将来的には海外にも魅力を発信して、守山を世界的な自転車のまちにしたい! …ちょっといいすぎかな? でもそのくらいの気持ちでこれからも取り組んでいきたいです。


― 編集後記 ―

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完全インドア派の私でもできるかもと思わせてくれた「Ready for BIWAICHI MORIYAMA」。お話を聞いて、ポップなサイトの裏側にまちのことを思う熱い思いと長年の取り組みがあることを知りました。
テレワークで加速する運動不足の解消と、滋賀の新しい魅力発見のために、ビワイチ挑戦してみようと思います。もちろん発着点は守山で!


【Ready for BIWAICHI MORIYAMA】
守山市が平成28年から取り組む「自転車のまちづくり」の施策の一つ。サイクリング初心者人向けに、必要な準備やレベルに合わせた琵琶湖周辺のコースを紹介。旅行者や市民のビワイチデビューを後押しする。https://www.city.moriyama.lg.jp/biwaichi/


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