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ティール組織③利益よりもビジョンの実現を優先する存在目的とは

ティール組織を構成する要素としてセルフマネジメントと自分らしさ、そして最後は存在目的です。今回は「存在目的(Evolutionary purpose)」についてまとめたいと思います。ちなみにEvolutionaryとあるのはPurpose自体が進化・変化していくという意味も含まれています。

心理的なオーナーシップを持つために

先のセルフマネジメントが成功できるかどうかは従業員が心理的オーナーシップを持てるかどうかにかかっています(ここでの従業員とはリーダー層とかではなく全社員のこと)。その社員が心理的なオーナーシップを持ち仕事や組織へ思いを強くなる前提条件として組織の存在目的が明確であり共感できることあります。ティール組織ではそのために採用で組織の存在目的と個人の存在目的との適合が重視されたりもします。

これまでの組織の価値観

オレンジ型組織の価値観は「勝利」でした。オレンジ型組織として成功したゼネラル・エレクトリック社のCEOであるジャック・ウェルチが経営について書いた書籍名は「Winning」、まさにオレンジ型の代表とも言えます。オレンジ型の根本にあるのは(限らずレッド型やアンバー型も)常に競争相手がいて脅かされる危険にされることでの恐れです。利益を増やしシェアを拡大することが目的であるためエゴ(生存本能)が働き、保身や縄張り争いを生みます。そのような組織にミッション・ステートメントはお飾りに過ぎなく、CEOでさえ覚えてないほどです。

競争から進化型社会へ

例えばコカコーラのレシピを教えることは競争が前提の組織ではありえないことです。それが世界をより良くするというティール組織の目的において市場シェアを追求することはバカげたようにも見えます。競争を選択しなかった会社があります。アウトドア用品を手掛けるパタゴニア社は衣服の修繕、再利用、リサイクルのためだけの広告を出すことがあります。売上や財務を考えたら売上の減少を懸念して新商品の宣伝を優先するところですがパタゴニアには自社の存在目的に沿った行動を優先しています。

進化型社会の存在目的

オレンジ型組織の価値観は株主の構造に基づいており、利益を追従しているかを監視するために四半期ごとや月ごとに利益の報告と予測を課せられています。もちろん利益は必要で株主はリターンを得る資格がありますが、人は空気が無いと生きていけないが呼吸するために生まれてきたわけではありません。ティール組織の事業は存在目的を達成するためにあって利益のためではありません。

利益を追求しない企業の出現

パタゴニアCEOのシュイナード氏はある日、主力事業であるピトン販売から手を引きました。自社の製品が山の岩場を破壊していたことに気づいたからです。代わりに抜くこともできるチョックを販売したら製造が追いつかないほど売れました。サウンズトゥルーCEOのタミ・サイモンはビジネスをこう定義します「それぞれのニーズを満たし、人生を活性化するために人々が1つのコミュニティーとして集まることです。」と。

そして存在意義について考える

戦いの最中では考える余裕は無くオレンジ型は戦いの連続でした。ティール組織では自分らしさによりエゴを抑えることができ、行動や意思決定、そして存在意義を深く考える余裕が生まれます。それが人の意識が保身から存在目的に変わると人々は勇気づけられ、方向性を導くエネルギーが生まれます。

存在目的の普及

存在目的は単にミッション・ステートメントを理解することではなく、組織がどうのような姿になろうとしているかを理解して、その姿に相応しい意思決定を行うことで存在目的は浸透していきます。

マーケティングの変化

これまでの大量消費の時代では新しいニーズを作り出し人々の内なる心をいかに操るかが多かったマーケティングもティール組織のマーケティングアプローチでは自分たちが本当に誇れるものをシンプルに提案しています。これは一見非効率ですが楽しいからという内なる声に従って進めることでマーケットの方からドアをノックしてくれることがあります。

予算策定のためのプランニング

ティール組織のプランニングはリーン生産方式やアジャイル開発のアプローチの原則ととても似ています。長期計画を準備するのではなく短期のスパンで繰り返し改善を行いながら、情報がアップデートされると判断は常に見直され、また改善します。予算策定や予実分析も実績が足らなければ未達の原因を言い逃れ、責任転嫁にエネルギーが費やされてしまいます。サン・ハイドローリックス社では社員の目標達成の度合いを管理しません。トップダウンの目標がなくとも全力で活躍しているからです。また、株主への年次の業績予測をやめ、四半期ベースの予測値だけを発表しています。

顧客との接し方

存在目的を真剣に突き詰めると自社だけのことを考えるのではなく周囲に目を向けるようになります。パタゴニア社では環境対策が完璧な素材サプライヤーとしか取引をしません。また、RHD社は従業員の労働環境を大事にしているサプライヤーを優先します。もちろんサプライヤーや顧客が喜んで受け入れるとは限りませんが。

個人の目的と組織の目的

エゴを持たない個人と組織の目的が適合すれば、人は天職でであり使命だと感じられれば人はより成長できます。採用、訓練、評価面談は目的が適合しているかを図る機会となり、特に採用は組織の目的と個人の使命との一致が同じ船に乗ることの大切な条件です。ティール組織を構成する中で存在目的は個人の成長とモチベーションを引き出します。

終わり

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