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グランマ

けだかい貴女
慈しみをかけ育てた者から
弱さを隠すあなた

やさしい貴女
弱さを見せてしまった先の
彼らの哀しみを
腕の中に抱え込んで
出てこないように
出てこないように

そんなこと
気にしなくてもいいのにと
私なんかが思ったところで
あなたは静かに包み込む

私があなたの美しい庭先で
必死に愛想を振り巻いて
必死で隠そうとした
居心地の悪さを
あなたは色素の薄い透き通った目で見透かして
何も言わずに抱きしめたように

あの時、どんなに救われたことか

貴女を今思うとき
貴女はなぜか
なぜか会ったことのない若いときのあなた
色褪せたセピアの写真の中で
白いドレスに身を包み
伏し目がちに
すらりと細い両腕を夫となる人に差し出している
幸せそうなあなた

ここから全てがはじまって
私が知るあなたは
あなたが築いた愛の中にいた
やさしく、けだかく、するどく
ユーモアと愛をくるくる包んで
大勢の家族に与えていた

ああ、あなたの最後の吐息が
もう少し先であればいいのにと

ああ、貴女がいなくなってしまう

あなたの夫も
あなたの子どもたちも
あなたの孫たちも
あなたのひ孫たちも
ああ、もう少し、もう少し先であればいいのにと

静かで深淵な朝の湖面のような

貴女を思う



2年間闘病をしている、夫の祖母に向けて。


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