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老いとカネ

人間は誰しも必ず老いていくわけだけれども、その老い方にはかなり個人差が出てきてるよね。

若いうち、壮年のうちの、老いに対する備えと言うのも、個人者が大きい。
特に考えもなしに歳をとっていくっていう人もいれば、高齢になっていくにつれてどうしたらいいかっていうことをきちんと想定して考えて対策してる人たちもいる。

しかしながら、ただ一つ言えるのは、どんなに考えていても、不測の事態っていうのはゼロにはできない。
想定内っていうことだけで、人生が進んでいくわけではない。

それと、もう一つ。老いというのは、自分自身だけの問題ではない。
例えば親だけではなく、身近にも、老いによって急に状況が変わっていく人たちもいる。

典型的なのは認知症だけれども、今は若年性認知認知症の人たちも増えてきていて、それはある意味で老いを先取りしてるとも言えなくはない。

老いっていうのは、何かが失われていくと言うプロセスなんじゃないかな。
ただし、何もかもが失われるわけではない。
どちらかと言うと青年・壮年期の活力というか、何らかのパワーを前提に作られた現代社会の中で、そこからこぼれ落ちていく部分っていうのが大きいよね。
例えば体力や記憶力なんかもそうだし、様々な生理的な要素、ホルモンにしてもそうだし、ビタミンにしてもそう。生命活動に必要なさまざまな機能や素材の生産能力が急激に落ちていく。

でも、筋力とか、知恵系の能力あるいはエピソード記憶っていうのはほとんど限界がなくて、本人次第で維持することができるし、さらに増強することもできる。

昔は、「年寄り」と言うのは尊敬語だった。
江戸幕府では「老中」とか「年寄り」っていうのは上席の家臣だった。
なぜそうかと言うと、経験知が違うんだよね。
どんなに賢くても若いうちにはまだまだ分からないようなこと、複雑な裏事情、そういうことがいろんな総合的な形で見えるようになり、それを考慮して現実に対処することができるようになってくる。

ところが、現代社会では、急激な科学技術の進展のおかげで、そういった経験からくる知恵っていうものがあまり重視されなくなっている。
そんな事はもう不要なのだと、ほとんどの人が思い込んでいるようだけれども、実を言うと、急速な進歩を制御できなくなっているのは、経験知のない単細胞の若者的発想でしかない。

それはヨーロッパ社会という特殊な世界が作り出した非常に偏った発想が元になっている。
もともとヨーロッパは、例えばアジアのように自然に恵まれていなかったし、過酷な労働をしなければ生きていけない貧困な地域だった。
唯一豊かだったのは、アジア世界と貿易をして富を得ていた今のイタリアの一部ぐらいだった。ローマ帝国もそういう基盤の上に長い長い繁栄を享受していた。

それが、いわゆる大航海時代に横行した略奪によってスペインやポルトガルといった西ヨーロッパ社会へと広がっていった。
単に盗むだけではなくて、原住民と呼ばれる人たちを裏切り、収奪し、虐殺し、黄金やスパイスなどのヨーロッパではありえないような、黄金に相当するような希少品を世界中からかき集めてきた。
そうして、それを金に換算して、金さえあれば生きていけるという風な奇妙な社会を作り上げた。

なぜ奇妙かというと、この発想には限度というものがないからなんだよね。資本主義社会なんか特にそうだし、共産主義であろうがなんであろうが、とにかくカネを基盤にした経済社会では、永遠に成長しなければ破滅する。
赤の女王のパラドックスだね。

それに対して他のほとんどの地域では金と言うのは、仮にあったとしても、ごく一部でしか必要のないものだった。
通常の生活のために必要なものは、大体が自然の中から得ることができた。ヨーロッパではそういうことができない。
遊んで暮らすなんてもってのほかで、それこそ命懸けで働かないとまともに暮らしていくことはできなかった。しかも、休んではならない。ずっと走り続けなければ倒れてしまう。

何か思い当たりません?
そう、今の日本や先進諸国と言われる国々の社会がまさにそうだよね。
金がないと生きていけない。
おお。
素晴らしい。

実は、たいして金がなくてもちゃんと生きていける地域は、現在でも僻地と呼ばれるところに残っているのだけれど、ほとんど知られてはいない。
そういうところでは、むしろ金を崇拝しているような人の方が、ちゃんと生きていけない。
なぜか?
金儲けの知恵はあっても、自然の知恵がない「無能者」だからです。

そういえば、私自身、初めてそういう土地を訪れて居候させてもらった時、かまどの火も起こせなくてみんなから笑われましたっけ。w
でも、幸いなことに、その僻地の人々に受け入れられたのはなぜか?
追々お話していきます。

To be continued

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