エダ

あれこれ雑多な物書きです。

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『RAIKA』第三話

「門下生は、のきなみ逃げ出してもうたんやろ? こないなボロ道場はさっさと畳んだほうが身のためなんちゃう?」  いきなり道場にやってきた二名の女性の片方が、悪意のこもった声音でそのように言いつのった。  うねうねと渦巻く黒髪を肩まで垂らした、ひどく妖艶な女である。切れ長の目で、唇が赤く、毒蛇が人間に化けたような風情であった。  もう片方は厳つい顔立ちで、金色の短い髪にトライバルのラインを入れている。  おそろいのトレーニングウェアはホワイトを基調にしており、胸もとに『TRA

    • 『RAIKA』第二話

      『ドージョー・ムナチカ』の二階に位置する、和室の寝室――  ライカはそこで、安らかに眠っていた。  その腹に、メディシンボールを落とされた。  メディシンボールとは腹筋を鍛えるための器具であり、こちらの重さは4キロにも及ぶ。結果、ライカは「ふごわあっ」という妙齢の女子にあるまじき雄叫びをあげることになった。 「ロードワークに行く。五分で準備を」  メディシンボールを落としたマルティナは、感情の欠落した声でそのように告げた。  そうしてライカが『ドージョー・ムナチカ』で迎

      • 『RAIKA』第一話

         ライカこと虎徹蕾花、17歳。  身長165cm、体重はシークレット。  スリーサイズは90-59-89。  セミロングの髪はアッシュベージュ、インナーカラーはブラッドオレンジ。  アイドルグループ『ぴーきー☆ぱんきー』のお色気&体力勝負担当で、ついた二つ名は『令和の肉弾サンダーボルト』。  歌はアレだがダンスは抜群で、他のメンバーが嫌がるような体を張った仕事も率先して引き受けて、グループの屋台骨をがっしり支えてきた――つもりであった。 「お前は、クビだ」  ライカが事務

        • 『RAIKA』あらすじ

          ライカこと虎徹蕾花は、アイドルグループ『ぴーきー☆ぱんきー』のお色気&体力勝負担当。B90-W59-H89の肉感ボディと人並み外れた身体能力を活かして、グループを支えてきた。 しかし、大物プロデューサーのセクハラを撃退したことで事務所をクビになってしまう。 そこに見知らぬ弱小プロダクションの責任者が現れて、ライカの再デビューを提案したが――その条件は、格闘技の稽古をしてアイドルファイターを目指すことだった。 ライカはまったく乗り気でなかったが、同い年の少女ファイター・マル

        『RAIKA』第三話

          『からほら奇譚』第三話

          「あんたが……宇都宮白蘭さんか」  ツムグがそろりと問いかけると、白蘭はほんの少しだけ首を傾げた。 「見慣れない顔だな。それに……使用人とは思えないような気配を纏っているようだが」 「執事長さんから事情は聞いてるんだろ。俺たちは、あの忌々しい神社の関係者だよ」  ツムグの返答に、白蘭はぴくりと眉を震わせた。 「洞宮神社の関係者か。わざわざご足労をいただいて恐縮だが……御覧の通り、私は自力での解決を目指している。そちらの助力は必要ないので、どうかお帰り願いたい」 「

          『からほら奇譚』第三話

          『からほら奇譚』第二話

           からほら町の鬼門――北東に位置する山の麓に、洞宮神社は存在した。  ツムグの人生をねじ曲げた、忌まわしき場所である。ツムグはその洞宮神社の広々とした拝殿で、忌まわしき父親と相対していた。 「ご神体を授かってからわずか二ヶ月で、四人もの氏子を確保するとはね。ぐちぐち泣き言をこぼしていた割には、立派な成果じゃないか」  内心の知れない微笑をたたえながら、父親はそのように言い放った。  父親といっても血の繋がりはなく、年齢はせいぜい三十歳ていどだろう。その中性的な細面はむやみ

          『からほら奇譚』第二話

          『からほら奇譚』第一話

           ツムグは暗闇の中で、化け物と向かい合っていた。  羽山津見神――古き神の名を騙る化け物である。  化け物は白い肢体に薄物を纏い、ぬばたまの髪を長くのばし、勾玉や管玉の装飾具をじゃらじゃらとさげている。それは神に相応しい美しさであったが、それと同時に神を冒涜するような妖艶さと淫靡さを匂いたたせていた。 「うぬは、空っぽじゃな。これほどまでに何も持たない人間を見たのは、初めてのことじゃ」  神の姿をした化け物はその手の宝剣をツムグに突きつけながら、小馬鹿にしきった声音でその

          『からほら奇譚』第一話

          『からほら奇譚』あらすじ

          地方都市の片隅にひっそりと存在する辺鄙な町、からほら町。 そこは妖怪の因子が吸い寄せられる、集積の地だった。 神の依り代として育てられたツムグは、妖怪に憑依された人間を調伏し、氏子として支配する。 氏子が百名に達すれば、依り代としての使命は終わるという。 不本意な人生を押しつけられたツムグは氏子となった少女たちとともに、しぶしぶ任務を遂行していく。 しかしまた、ツムグに人間らしい心を育んでくれるのは、妖怪に憑依された氏子の少女たちだった。 第一話 第二話 第三話

          『からほら奇譚』あらすじ