もしイソップが「アリとキリギリス」風に『論語』のことばを読んだら
「松柏の凋むに後るるを知る」の教訓
前回投稿した孔子のことば、「松柏の凋むに後るるを知る」の話の続きです。
春夏の季節には、樹木はすべて葉を茂らせているので、落葉樹と常緑樹も青々として、区別することはできない。寒くなると、落葉樹の中にまじっていた常緑樹である松柏の存在が、はっきりとわかる。
(それを同じように人間も、危険困難な情況になって、はじめて、その本性がはっきりするものである)。
イソップ寓話「アリとキリギリス」流に読み替えると
孔子のことばが肚落ちしにくいようなら、イソップ寓話「アリとキリギリス」を参考にしてみるとわかりやすい、と論語講師の安岡定子先生に教わりました。
たしかに、厳しい冬を耐え凌ぐことができるアリと、冬の寒さを前に飢えて、凍えて死ぬキリギリス。その違いは、温暖で食物の実りもある季節をどう過ごしたか、その違いにあるわけです。
そこで、大胆に、論語をイソップに置き換えて読んでみましょう。
松柏は常緑樹でアリ、落葉樹はキリギリスということになります。キリギリスのように、寒い冬への備えをしないで夏秋を過ごした落葉樹は、葉をつけた状態では厳しい冬をしのげないため、葉をすべて落としてしまいます。 こうして冬を越すことができました。
ここからの学べることは、何でしょうか。
想定外の事態、いざというときになっても、生き延びていけるように、備えをしておく、研鑽を積んでおく、ということ。
会社なら、事業が存続できるように、経費節減、無借金経営など経営体質強化を心がけておく、ということ。
「アリとキリギリス」3つの結末
さて。
イソップ寓話は「アリとキリギリス」として知られていますが、ともとは「アリとセミ(セミとアリ」でした。セミがヨーロッパの北部ではなじみのない昆虫だったため、翻訳しているうちにキリギリスに改変されて、その話が日本に伝わってきたのです。
ネットで調べてみると、その結末には3パターンある、という記述がありました。
あらすじ
1 一般的に広まっている結末
2 アリがキリギリスに食料を与えない結末
3 キリギリスが最期に自分の生きざまを語る結末
ビジネスにおける「アリとキリギリス」の例
ここから学べることは、なにか。
日ごろから備えをしておくのが大前提。ただ、想定外の窮地に陥ることもあります。そのときに、どう行動するか。そして、相手や周囲が支援の手を差し伸べてくれるのか、見放されてしまうのか。
それには、危機を脱出するために、いくつかのプラン、シナリオを描いて臨むこと。
コロナ禍に飲食や宿泊などのサービス業でピンチに立たされた企業経営者がどう対応したのかを、インタビューする機会がありました。
ある企業は、コロナ前にインバウンド需要でかなりの利益を上げていました。その多くを、内部留保にまわす堅実経営を実践していたのです。このため、売上ゼロの状態でも、一部融資を受けることができたこともあり、従業員を解雇しないで凌ぐことができました。
ある企業は、自力で乗り切るプランAと、並行してプランBも検討していました。コロナ禍が想定以上に長期化したことから、他企業との提携や事業を切り離して生き残りを図るプランBに切り替えたのです。これによって、事業が総崩れになるのを防ぐことができました。
どちらの経営者にも共通していたのは、想定外の事態に「思考停止」状態に陥らなかったこと。(秘密事項は伏せたうえで)経営方針を明示し、社員の動揺を鎮める対応を迅速にとっていたことです。
こうして、危機を脱出。松柏として生き延びることができたのです。
イソップ寓話から話がどんどん展開してしまいましたが、「松柏の凋むに後るるを知る」の教えは、このようにビジネスの実際にも生かすことができる。
私はそう思います。
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