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落葉樹タイプと常緑樹タイプ。人財をどう見極めて、育てるか―『論語』

その人の本性がはっきりするとき

 想定外のことが起こったとき、非常事態になったときに、どう行動するか。
それによって、人の真価がわかる、と言います。

 想定外のことでなくとも、ゴールや目標の数値や期限が決まっている場合には、ふだんからの積み重ね、精進の度合いが、成果に反映されます。
 たとえば――。
 ビジネスにおいては、企画書の提出、コンペ、語学や資格試験の勉強など。
 プライベートだと、ダイエットや体調管理、お金の管理・運用、ライフプランなど。

 さて。
 2500年も前に、樹木の営みにたとえて、いざというときに人の真価がわかると、孔子が語っていますので、それをみていきましょう。

 春夏の季節には、樹木はすべて葉を茂らせているので、落葉樹と常緑樹も青々として、区別することはできない。寒くなると、落葉樹の中にまじっていた常緑樹である松柏の存在が、はっきりとわかる。
(それを同じように人間も、危険困難な情況になって、はじめて、その本性がはっきりするものである)。

 人の生き方がどうあるべきかを、自然界の営みにたとえて、見事に言い表しています。
 ちなみに柏は、日本でいう柏とは違う常緑樹とのことです。

読み下し文です。

歳(とし)寒くして松柏(しょうはく)の凋(しぼ)むに後(おく)るるを知る。        

『論語』子罕篇

落葉樹タイプと常緑樹タイプ、それぞれの持ち味

 この言葉をもとに、ビジネスの実際でどう考えるか。
 研修で話し合ってもらったところ、こんな解釈が提示されました。

 落葉樹と常緑樹はもともと生態系それぞれに営みが違うもので、落葉樹が努力をして常緑樹になれるわけではない。
 常緑樹が枯れない理由を、当人の努力の成果によるものと解釈するのは、おかしいのではないか、と。

 それまでは、教科書通りの読み方しかしていませんでした。
 冬でも枯れない常緑樹のように日々精進を怠ってはいけない、という解釈です。

 研修での捉え方に刺激を受けて、2つタイプの人材について考えさせられました。落葉樹タイプ、常緑樹タイプの人材がいるとして、それぞれに持ち味があるわけです。

落葉樹タイプ
 新緑や紅葉の季節に人を魅せるように、キラキラ光る才能があるが、まわりの状況をみて、取り組む姿勢やテンションを変えがち。うまくいきそうだと頑張るが、見込みのないものへの見切りは早い。

常緑樹タイプ
 四季の移り変わりにも同じ表情でいるように華やかな才能の持ち主ではないが、志を枉げずに、スキルアップを怠らない。最後までやり遂げようとする。

 春夏には山裾が青々と繁る様子を観て、そこに混在する落葉樹と常緑樹を見極めていく。
 それと同じように、マネジメントの立場にあるなら、スタッフや関係者のひとり一人が、落葉樹タイプか常緑樹タイプかを見極めて、それぞれにあった役割を委ねて、育てていく。
 チーム全体としては、多様な人材のよさを引き出し、パフォーマンを上げていく。

 孔子の教え「松柏の凋むに後るるを知る」を、チームでの仕事の仕方の視点で読むなら、こういう学びになるでしょうか。


 ところで。
 孔子のことばが肚落ちしにくいようなら、イソップ寓話「アリとセミ(キリギリス)」を参考にしてみるとわかりやすいです。
 論語講師の安岡定子先生にそう教わった後に、イソップ寓話についもネットの資料を参考に調べてみると、実に奥が深いことがわかりました。

 話がながくなるので、イソップ寓話「アリとキリギリス」をヒントに『論語』のことばを読んだら、と題して、別に投稿します。


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