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お星さまでいいじゃない!

子育てへたっぴのネタには、事欠かない我が家。今度は娘の不登校騒動以前の、息子が保育園時代の話。

「息子くんは発達に問題があると思います。申請しておくので、市の施設で診てもらってください。」

面談の場で保育園の担任・副担任の先生から、こう言われた。息子が5歳、娘が11歳の時だから、今から7年前ぐらいの前の話だ。

息子は未熟児ギリギリで生まれたし、早生まれでもあったので、同じ学年の4月生まれの子と比べると二回りぐらいチビだった。
言動も幼いし、なにより不器用だ。

保育園の行事毎に子どもたちは工作やお絵描きをするのだけど、展示されているものの中で、ひときわユニーク、というか、体を無していない制作物はだいたい息子のものだった。

それでも彼は昨日より今日、確実に成長しているのを感じていた。

おしゃべりで話が面白い。本もよく読む。お友達も多い。ご飯を良く食べる。
幼児健診に行っても何も言われたことが無い。
小さな体で、ほかの子がまだできない懸垂や逆上がりだってできる。だからというわけではないが、私は何も心配していなかった。

「息子くんは集中する時間がほかのお子さんよりも短いです。次の移動や用意をする時に一人だけ、かなり時間がかかります。お片付けができません。皆で取り組まなくてはならない課題をやっている時間も、ぶらぶら歩き回り、関係ないおしゃべりをやめません。このまま小学校にあがるととても苦労すると思います。」

教育の専門家2名が居並んで次々にこういうものだから、「そういうものなの?」と、初めて息子の状況に不安を感じた。

それでもまだ小学校進学まで一年もあるし、他の子との差異もゆっくり埋まっていくのではないの?と思い、市の施設で診てもらうことへの返事を躊躇っていたら、
「お母さんはご自分のお仕事や出世の方が大切なのですか?二次障害が生じないように早い段階で手を打たないと息子くんがかわいそうです!」と若い方の先生にびしっと言われてしまった。

いやいや、そういうことではなくて。
親のひいき目と早生まれの差を踏まえて、相当広角で息子を思い返してみても、そこまで他のお子さんと違うとは思えなかったのだ。

たしかに自由人だけど。楽しそうなことがあると、そちらに元気に走っていってしまうけれど。

それは私も夫も同じだし、自分の子どもの頃は、そういう子は沢山いたように思う。私もお片付けは苦手だった。

それでも、教育の専門家二名に目を三角にして言われたら、萎縮するほか無く、市の施設に息子を連れて行くことにした。

私の居住する市は子育てに熱心な街で、他の行政区より子ども向けの支援が手厚い方だと思う。

施設に行ったら、知能テストのようなものや、運動能力をはかるテストを行った。
1回では終わらず、2回ぐらい通ってテストを受け、結果を説明してもらった。

息子の能力はギザギザで、言葉の能力はびっくりするほど高いのだけれど、アウトプットの際に問題があるようで、その能力が低いと出た。
レーダーチャートで示されたら、お星さまのようにギザギザした形をしていた。

「たしかに苦労するレベルだと思います。でも、その苦労している部分をカバーするように、他の能力が発達しているのだと思いますよ。」

施設の先生曰く、漢字学習に苦労をすることになるらしい。ダンスのような身体表現や運動も苦手らしい。
とはいえ、特別な学級に通わせるほどではなく、正常とされる範囲のグレーゾーンぐらいで、普段の暮らしの中で訓練していけば、ゆくゆくは追いついていくと言われた。

正直ホッとしたけれど、その後も保育園を卒園するまで、先生からは面談のたび、グレーゾーンの子として何かと発達度合いを指摘された。
親切心からの指摘だからありがたい反面、できないところ・遅れているところばかり、そこまで目くじら立ててあげつらう必要はあるのだろうか?彼には良いところがたくさんあるのに、と思ってしまうほどだった。

その度に、息子に「この子はこういう子。ここまでしかできません。」という何か見えない枠をはめられたような、才能の限界を示されたような気持ちになった。


今思うと、当時はニュースで発達障害が盛んに取り上げられるようになり始めた頃だったように思う。
息子の保育園でも、保護者勉強会で発達障害について説明されることもあり、一般に認知が広がっていく時期だったのかもしれない。
ちょうどそのタイミングで、保育園の子どもたちの中で発達障害に特徴が合致していた息子に、先生方が注目したことで、指摘が相次いだのかなぁ、と思う。

結局、彼が小学4年生になり、施設の先生にOKと言われるまで、月1回ペースで施設に通うことになった。

小学校に上がってからも、その当時の情報は必ず担任の先生に共有されるので、最終学年になった今も進級のたびに、発達状況の確認のための面談をしている。

こういった対応は、配慮が行き届いていてとてもありがたかった反面、私自身が「息子はこういう子」という色眼鏡をかけてみてしまうようになった。その影響は計り知れない。

悩んでしまった影響で発達障害のセミナーに通うようになったし、児童心理の本も読むようになって、結構な頭でっかちになってしまった。

その学びを通じてピグマリオン効果というものを知った。
子どもに対し明るい期待のまなざしを向けていると、その期待通りに育つのだそうだ。
逆の現象として、期待度が低いと、その期待通りにパフォーマンスが下がるというゴーレム効果というものもあるのだそう。Wikiを調べれば、詳しく掲載されている。

これらの効果を知ってから、できるだけ「息子はこういう子」という色眼鏡を外そうと努力したけれど、一度かけてしまった眼鏡を外すことはとても難しかった。

私と息子の場合、保育園からの一連の指摘は、正直ゴーレム気味の影響を与えたと思わざるを得ないことが多々ある。

それでも私たちなど、それほど深刻な状況ではなかったと思うが、世の中にはもっと深く追い詰められてしまっている親御さんもたくさんいらっしゃるのだろう。

今も各地の教育現場で改善への努力が続けられているのだと思うけれど、発達障害という指摘や改善のための対策と同時に、親御さんが子どもへの希望と期待を失わずにいられるような、心のフォローもセットになっていたら素晴らしいなぁ、と切に思う。

子どもたちの素敵な特徴・ユニークな特徴が、ギザギザのお星さまのほうに輝いて見えるような世の中になってほしい。
そんな風に思う。

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