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学会遠征編ショート版 第42話 倍増

明日の作戦

 ひとつ思惑通りにうまくいったことがある。それは飲料水のサービスだ。この部屋にはデフォルトで飲料水が500ml×4本あるのだが、これはちゃんと掃除のたびに補充するようだ。これが本当にサービスとして機能しているのかを試すために、実は朝に1本だけ冷蔵庫に隠しておいたのだ。連泊する部屋の冷蔵庫など、まともな清掃員ならのぞかないことだろう。仮に除かれたとしても水1本以外には何も入れていないので良かったが、こちらもちゃんと無事だった。つまり、よく冷えた水が1本と机の上に4本、飲み水が計5本も確保できているということになる。チェックアウトまでは今まで冷やしてあった1本、明日の日中はこの4本を持ち歩けば、もう水に苦しむことはない!今日のようにへとへとにはならずに済むだろう。残りの4本も冷やしておいた。
 シャワーは気持ちよかった。しかしぞっとしたことがある。それは、もしかしてシャワーを浴びることができるのはこれで最後なのではないかという懸念だ。こんなに暑い中を明日も歩かないといけない。明日は電車1線分、距離でいうと7km程歩いていくことに決めたので、体中に汗をまとうことになるのは確定している。こうなってしまうのも、空港であまりお金を交換しておかなかった自分が悪いのだが、それはいい教訓になったと割り切ることにしている。とはいえやっぱり汚いのは好ましくない。洗濯は諦めている。明後日は人に会うので、最低限の清潔感を持ち合わせていたいのだが、少なくともタイ国内ではもう無理なのだろう。こう思いながらベッドに飛び込もうと思った時、異変に気が付いた。なんと枕が朝のときより倍増し、4個もあったのだ。なんというサービス過多だろうか。頭の両横に枕を置くスタイルだと考えても2個あれば十分である。もしかして、誰かしらを連れてくるとでも思ったのだろうか。残念ながら、このキングベッドは自分一人の領土である。大の字、背伸び、グリコなど様々なポーズでくつろぎながら、ゆっくりとストレッチもしながら今日はもう休むことにした。

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