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コネなしポスドク就活記① なぜポスドクを目指したか編

僕は国内で博士号を取得し、現在は北欧でポスドクをしています。
コネなしで海外ポスドクの就活をした経験を記録に残しておこうと思います。

この記事を書こうと思ったのは、ネットで見る海外ポスドクの就活に対する一般論と自分の認識にかなり乖離があるように感じたからです。自分の博士時代の経歴も輝かしいものではありません。また、コネなし、ポスドクフェローシップの採択もなしでした。

しかしながら、今は満足する環境で研究ができています。私生活も楽しいです。博士取得後アカデミアにとどまり、さらに広い世界で自分を成長させたい。そういう方々は、ぜひ尻込みせず、自分のやりたいことをやりたいだけできる環境へ飛び込んだ方がいいです。ただ、ポスドクとして雇われるには、ある程度のtipsや事情を知っておいた方が良いと思うので、自分がどのように就活を進めたかシェアしようと思います。

あくまで僕の体験であり、n=1での話であるということを記憶にとどめながら見ていただけると幸いです。また、僕の経験はヨーロッパ、とくに北欧に限ります。他の地域のことは詳しくないのであしからず。


自分の意見と一般論との認識の乖離

博士取得後に海外でポスドクをする場合、学会や共同研究で面識のある研究室に行かれる方が割といる印象です。コネなしで全く知らない研究室 (あるいは学術領域) に行くのはリスキーだという意見もあります。

また、海外学振に代表されるポスドクフェローシップを取った方が有利、博士課程での業績があった方が有利 (学振採択歴、高IF論文掲載歴など) という意見もよく聞きます。まあそれも一理あります。

ただ、僕個人の印象としては、フェローシップの有無や博士課程での業績はそんなに重要ではないなと感じています。もちろんあるに越したことはありません。論文投稿の経験は特に。少なくとも、ヨーロッパ圏内で、博士号を取ったあとすぐの人に限った話ですけど。

就活開始時の自分について

一応、ポスドク就活開始時の自分の業績をざっくりと書いておきます。

筆頭論文 1報 (博士3年夏にパブリッシュ、IF 4後半)
共著論文 2報 (博士2-3年にパブリッシュ)
国内学会の学会賞 3つ
国際学会の学会賞 2つ
JST次世代 博士2年~3年
学振 全滅
海外ポスドクフェローシップ そもそも応募すらしてない

周りにはすさまじい業績の尊敬すべき同期や知り合いがいました。
その方々と比べたら大したことない業績だと思います。

今いるラボは20人規模のそこそこ大きい所です。PIは若手と中堅の間で、だんだんと名が知れてきたような勢いのあるラボです。そして、毎年CNSに出すようなラボです。でも、同僚ポスドクの博士時代の業績はみんな似たり寄ったりです。中には、博士取得時に筆頭論文を持っていない人も珍しくないです。でもみんなキレッキレで刺激的で最高な同僚です。

すでに述べましたが、ポスドク就活時点では業績はあくまで一要素だと思います。気にすることは無いです。

おおまかな就活日程

詳細は省きますが、僕が過ごした大まかな日程を書いときます。
以下、すべて博士3年の時の日程で、海外ポスドクに関する日程です。

9-11月 研究室探し
10-11月 CVや志望動機書の作製
11-12月 研究室へコンタクト
1月 オンライン面接
2月 現地での面接、採用内定
3月 博士課程修了

はい、ぎりぎりです笑
業績は大切じゃないとかっこつけましたが、締切を逃したともいえます笑
でもなにより、コネなしで、しかもビジョンを描くのに時間がかかったんですよね。9月まではなぜ自分がポスドクを目指すべきなのか、その先何をしたいのかを考えてました。

なぜポスドクか

皆さんにとって就活とは何ですか?進路選択とはなんですか?
なんで研究を続けたくて、将来どうなりたいですか?

僕にとってポスドク就活は
過去~現在~未来にいたるまで自分は何者なのかを明かにして表現していく過程でした。

大学院の研究生活は本当に楽しかったです。純粋に研究をするのが好きです。ですが、将来の事となると、特に何も考えていませんでした。普段も3日後より先の事は考えてないです笑

なので、就活はなんで研究が好きなのか、過去から今に至るまでの自分の思い出を振り返るところから始まりました。

僕の研究生活における原点は、幼少期から続けてきた生き物への興味と飼育経験です。身近な生き物から熱帯植物に至るまで、さまざま飼育しました。特に、カブトムシの累代飼育や、新女王アリの採集およびアリのコロニー飼育はとても楽しかったです。

博士課程では代謝臓器における損傷と再生に関する研究を行い、組織の大きさや質が厳密に調節されることに強い関心を持ちました。博士課程で最初に行った、骨格筋へ急性損傷を誘導する実験は忘れません。薬剤により急性的に重篤な損傷を誘導した骨格筋組織は、数日でボロボロになります。しかし、1-2週間程度でほぼ元通りのサイズ、状態に戻ります。筋トレや運動によって、いくら筋肉に効く刺激を入れたとしても、翌日にボディービルダーのように仕上がる人はいません。だれが、どのように、組織の質や大きさを決めているのだろう?それは人為的に調節可能なものなのか?それが僕の大学院を経て抱いた問いでした。

身体そのもの、あるいは組織のサイズや形はどのように決まっているのか。幼少期の時から興味の中心は変わっていないんだと思います。生き物に備わったこの不思議を自分の手で解き明かしたい。自分の興味をもっともっと深掘りしていきたい。それが仕事になるなら最高だなあ。そう思ったのがアカデミアにもっといたいと思った理由です。

博士課程まで修了した皆さんは何かしら、他の人にはない疑問や興味を持っていると思います。アカデミアで今後やっていこうと思うなら、業績や今後のフェローシップのことよりも、まずは何を最終的に知りたいか、根本的な問いは何かをはっきりさせておくべきだと思います。

なぜ海外ポスドクか

僕は国内か海外かという視線で就活はしていません。

国内のポストも見ていましたし、実際に採用すると言ってくださった先生方もいらっしゃいます。ただ、自分の求める環境が整っている場所を選んだだけです。

僕にとって、自分の求める環境とは何だったか。
それはまた今度書くことにします。

最後に

博士課程での業績に不安があっても焦らないでください。
何とかなると信じて進みましょう。

ポスドク就活は、一般企業の就活よりも日程や進め方においては自由度が高いと思います。なんで研究が好きなのか、解き明かしたいことは何か、自分はどうなりたいのか。就活を始める前に、まずは自分がどんな研究者であるかを言語化してみて下さい。

それでは。Moi moi!



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