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【富士山の見える山】 明神山周辺の3つの植生

4月の火入れによって山全体の枯葉が焼かれましたが、その後どうなったでしょうか? 1か月あまりたった5月下旬に行ってきました。

(明神山の過去の記事はこちら↓)

火入れによって焼かれたススキ草原も、新たな葉が元気に伸びて、すっかり緑になっていました。残念ながら富士山は雲の中で見ることはできませんでした。

5月25日の明神山山頂のようす
火入れ直後(4月下旬)の明神山山頂のようす

このように毎春、火入れを行うことで、森林への遷移を止めて、草原が維持されるのです。

火入れの境界からの眺めも、一面緑色になりました。

火入れの境界(5月25日撮影)
境界より右側(写真右、山梨県側)では火入れ後の草原、境界より左側(写真左、神奈川県側)ではカラマツ林になっている。写真奥は三国山のブナ林。


上の写真のように明神山周辺では、

  • 毎年の火入れで維持されている草原

  • 火入れのないカラマツ林

  • 三国山のブナ林

の3つの異なる植生を見ることができます。

火入れだけでなく、富士山の噴火も少なからず植生に関係している!?

富士山の噴火跡の遷移では、植生は火山性荒原→草原→陽樹の先駆林→極相林へと変化していきます。

(富士山の遷移についてはこちらをご覧ください↓)

明神山周辺では、宝永山の噴火の影響を受けて、約300年前に植生が一部破壊されたと考えられます。

カラマツ林

現在も明神山山頂は、富士山の火山性砂礫地と同じように遷移の初期の段階でイタドリ、フジアザミなどのパイオニア植物が散在していますが、神奈川県側斜面では、噴火の影響は比較的軽く、すでにカラマツ林へと遷移が進んでいると考えられます。

神奈川県側斜面のカラマツ林

樹高の高いカラマツの下には、日向を好む落葉広葉樹(陽樹)が育っていて、富士山における先駆林と同じです。

その陽樹で花が目立っていたのは、ニシキウツギでした。花は白から赤に変化します。そのため、白と赤の花が同時に見られるので、「ニシキ」という名がついています。

ニシキウツギ(5月25日撮影)

一方マユミはまだ固い蕾でした。花が咲くのは6月です。

マユミ(5月25日撮影)

草本も明るい場所を好む種類がみられます。

シロバナノヘビイチゴ(5月25日撮影)
富士山のお中道でも多く見られる
ウマノアシガタ(キンポウゲ、5月25日撮影)
明るい山野によく見られる。花弁が光ってみえるのが特徴。

三国山のブナ林

三国山(標高1340 m)では、噴火の影響は植生全体を破壊するほどではなく、ブナ林は再生して、極相林が維持されていることが分かります。

(三国山のブナ極相林については長くなりましたので別の記事にしました。ぜひそちらもご覧ください)。

三国山のブナ林
樹高10mを超えるブナが優占する林
ブナの樹肌
ブナの幹は灰色だが、年とともに地衣に覆われて独特の模様になる。

ブナの他、ミズナラ、イタヤカエデ、オオモミジ、イヌシデなど20種を超える落葉広葉樹が混生しています。

ブナをはじめとする落葉広葉樹が混在している

カラマツ林とは異なりブナ林の中は薄暗いです。
そのためブナ林の中では、比較的暗いところを好む植物が見られます。

ミツバウツギ(5月25日撮影)
ヤマクワガタ(5月25日撮影)
シロカネソウ(5月25日撮影)
イワボタン(5月25日撮影)
ネコノメソウの仲間。



富士山お中道を歩いて自然観察」の連載はこちら↓

「富士山お中道の生物図鑑」の連載はこちら↓


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