【富士山お中道の植物観察日記】 2023年10月16・17日
黄葉・紅葉の季節
秋も深まり、カラマツの黄葉も見頃となりました。ただ、風当たり・日当たりの微妙な違いなのか、まだ緑の葉が多いカラマツもあります。
9月に黄葉が見られたダケカンバも、まだ見頃の場所があります。
今年は暑さが続いたためか、ダケカンバ、ナナカマドなども全体的に色づきが良くないようです。
黄葉!黄葉!黄葉!
御庭バス停から遊歩道を登った辺りでは、ちょうどカラマツが鮮やかな黄金色に輝いていました。
カラマツと同じく、ダケカンバも葉が黄色に変化します。
ダケカンバの黄葉はカラマツよりも早く始まる(9月に始まる)ため、すでに黄葉の終盤です。
カラマツとダケカンバを一緒に観察できる場所では、黄葉の進み具合の違いがよくわかります。
カラマツやダケカンバは6月が新緑の季節です。いま黄葉(落葉)しているということは・・・生育期間が4ヶ月しかありません。標高約2,200 mのお中道では、生育サイクルは短期決戦です。
樹形観察をしてみよう
夏に斜面を見上げると、カラマツ・シラビソ・コメツガなど全て緑色の葉で見分けがつきませんが、黄葉しているとカラマツが簡単に見分けられます。
カラマツの樹形を見るには良い季節です。下の写真を使って樹形観察をしてみましょう。
富士山では、特に冬は西風が強く(写真の右側から吹く)、風当たりの強い場所では、カラマツは立ち上がれません。風下となって少し風が弱まると立ち上がりますが、写真の左側に見られるように風上側に枝のない旗型樹形となります。
さらに風下では常緑のシラビソの旗型樹形が見られます(写真左端の緑色の樹木)。
(樹形変化が見られるスポットについてはこちらをご覧ください↓)
イタドリの黄葉は?
高山帯を見上げると、黄葉が終わり茶色に変化したイタドリが見られました。
イタドリに似た草本であるオンタデは地上部がすでに枯れ果て、わずかに残骸が残っていました。
両者の違いは生活サイクルの違いでしょうか。
(イタドリとオンタデの違いはこちらをご覧ください↓)
紅葉!紅葉!
例年ナナカマドは真っ赤な紅葉になるのですが、今年は多くの山でくすんだ赤色や、赤くならないまま茶色くなってしまっているようです。
そんな状況ではありますが、やはり紅葉は目を引きます。
ナナカマドは紅葉がさらに進むと黄葉します。
お中道の5合目バス停寄りでは見頃を迎えていました。
ナナカマドの真っ赤な実は健在です。
富士スバルラインを上る道中、道路脇のナナカマドの実を探してみてください(真っ赤な実なので簡単に見つけられます)。
お中道を歩いていると真っ赤に紅葉した低木が目につきました。
ツツジの仲間のスノキです。
よく見ると照りのある濃い紫色の実がついていました。食べてみたい衝動に駆られますがお中道は植物採取禁止です。
キノコ!キノコ!
今年の夏は暑く乾燥が続いたためキノコはあまりみられません。
カラマツの根元に見られるハナイグチを見たかったのですが、もう時期が遅いようです。
写真のキノコは何でしょうか?キノコの見分けは全くわかりません。
冬支度はじまる
シャクナゲは、葉をつけたまま越冬する常緑広葉樹です。
真冬の環境ストレスを回避するため、葉を葉巻のように丸めて越冬します。
(シャクナゲの真冬の様子はこちらをご覧ください↓)
すでに葉が丸まりつつあるシャクナゲを見つけました。
葉の丸まりが始まっているシャクナゲは、開けた明るい場所で多く見られました。一方まだ葉が丸まり始めていないシャクナゲは森林内で見られました。
開けた明るい場所では、冬の環境ストレスの訪れが早いのかもしれません。
シャクナゲのように分かりやすい変化ではありませんが、他のお中道の植物たちも着実に冬の準備を進めているでしょう。
次回をお楽しみに!
前回(9月)のようすはこちら↓
富士山お中道を歩いて自然観察」の連載はこちら↓
「富士山お中道の生物図鑑」の連載はこちら↓
今回の登場人物たちの紹介もあります。
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