短編小説3

(多少グロデスクな表現があります。苦手な方はお控えください)
昔々、あるところに、黒雪というお姫様がいました。
黒雪はとても美しく、それはそれは毎日10人の王子様が求婚に来るぐらいでした。
人柄も評判で、お国の人たちには常に愛されていました。
しかし、昼間までぐっすり眠るお寝坊さんでもあります。黒雪が寝ているというだけで、帰らされる王子様もそれはそれは沢山いました。
ある時、国王が言いました。
「黒雪よ、お前はもう今日で38じゃろ。そろそろ結婚を考えたらどうだ」
黒雪は言いました
「いやよ、ここに来る王子様は私の美しさしか見ていないわ。そんな面食いはお断りよ。私の心を見てくれる、心が綺麗な素敵な方を見つけたら結婚を考えるわ」
国王はうーんと悩みました。
国王は思いつきました。「そうだ、あれを使えばいいじゃないか」


国王のお城にはそれはそれはたいそうな鏡がありました。なんでも、質問に答えてくれる「すごい鏡」というものでした。
国王はすごい鏡に聞きました。
「鏡よ鏡。世界で一番心の綺麗な王子様を紹介しておくれ」
鏡は答えました。
「それはサンヌ王国に住むピサロ王子どのでしょう」
国王がものすごい大きな声で召使に言いました。
「今すぐピサロ王子を連れてこい。今すぐだ」

1時間も経たないピサロ王子がやってきました。
「ピサロ王子殿、黒雪と結婚してくれんかね」国王は言いました。
「おやすい御用です。姫様が望むなら構いません」ピサロ王子が言いました。

ピサロ王子は黒雪にお部屋に入りました。
「こんにちは、黒雪姫」ピサロ王子が一礼して言いました。
「ごきげんよう、ピサロ王子」とてもかわいらしい笑顔で黒雪が言いました。
「人が居ると親密な会話ができないわ。あなたたちは出て行ってくれるかしら」黒雪は召使に言いました。

30分ぐらい経った頃でしょうか、召使は妙に思いました。黒雪の部屋から全く音が聞こえないのです。
召使はドアをドンドン叩いて言いました。「黒雪様、黒雪様、いらっしゃいますか」
声は聞こえません。
召使は勢いよくドアを開けました。そこには椅子で目をつむっている黒雪が居ました。
「黒雪様、大丈夫ですか」
黒雪は目を覚ますと、大きなあくびをして言いました。
「どうかしたの?」
「寝ていただけですのね、よかった。ピサロ王子はどうしたのですか」
「あれ、いないわね、帰っちゃったのかしら」
しかし、ピサロ王子の馬は庭で休憩してました。
不信に思った召使はお城にいるみんなにピサロ王子が居ないことを伝えました。しかし、どこにも姿がありませんでした。
深夜まで捜索が続き、やがて朝になりました。
黒雪の部屋を召使が捜索していると、床に血痕のようなシミを発見しました。
「黒雪様、これは」

「私、深夜は強盗狩りをしてたのですの。昔から生き物を殺すのが好きで、人もやってみたいと思ったの。この国すごい治安が悪かったでしょ。強盗だったら殺してもいいかなってそれはもう1匹残さず殺したわ。っすごい楽しかった。でも、強盗がある時みんな消えちゃったわ。そして、だんだん私の欲求が押さえつけられなくなったの。ピサロはそんな私を受け入れてくれたの。私のこの忌まわしき性癖を。今までで一番生きてるって感じがしたわ。私、今、世界で一番幸せよ。ピサロ王子待っててね。今すぐそっちへ行くから」
召使があっけに取られていると、黒雪は包丁を取り出して、お腹に突き刺し言った。
「行ってきます」
見たことのない満面の笑みだった。
そうして包丁を上にぐっと動かた。

姫様の訃報を聞き、国王が言った。
「やっといなくなってくれたか」

この記事が参加している募集

#ホラー小説が好き

1,088件

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?