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窪美澄さんの『いるいないみらい』という小説を読んだ。(先日読んだ山本文緒さんの『自転しながら公転する』と一緒に買ったもう一冊がこの本でした。) 子供がいるみらい、いないみらい。それを巡った5編が収録されている。 自分の意見をどこまで突っ張るか、という問題。一度きりの人生なのだから、自分のやりたいように思うように、と。こと結婚や子供という話になった時にそこを突っ張り”過ぎてしまう”人がいる。許容の姿勢を見せることで満足して、妥協するなんて微塵も考えていない。片側が寄り
数ヶ月前、僕が聴いているラジオ番組のイベントが横浜アリーナで開催されたのですが、その時に行った新横浜駅の書店で買った中の1冊がこの『自転しながら公転する』でした。その書店でこの本が平積みされていて、帯の「恋愛、仕事、家族のこと。全部がんばるなんて、無理!」という文言に意識が吸い込まれました。 帯を見て僕は、主人公が「恋愛」「仕事」「家族のこと」の全部を諦める過程の物語が読めるのではないかと思って内心ワクワクしました。そんな話が読みたいなと、この本を見つけた時に心の底から思
1.又吉直樹『人間』(角川文庫, 2022) 【読了:2022.05.08】 ”読書”という行為への抵抗が、敬愛する何人かのお笑い芸人さんの書くエッセイによって少しだけ薄れた感覚がある。そんな最中、僕はお笑いコンビ『ピース』の又吉直樹さんのYouTubeチャンネルを視聴しまくっていた。この文章を書いている現在、僕は又吉さんのオフィシャルコミュニティ『月と散文』に加入しようか迷っているくらいである。そんな中で『人間』という小説が文庫化されると知り、好きな人のエッセイばかりを読ん
書店で伊藤朱里さんのこの著書を見かけた時、心を射抜かれました。今年買った本の中でも5本の指に入るくらい好きなタイトルで、前向きとも言い切れないし、ネガティブとも言い切れないのがとても好きでした。 「きみはだれかのどうでもいい人」。自分にとっての特別な存在も、”だれかのどうでもいい人”。 その”だれか”も、自分にとってはどうでもいい人。 その”だれか”からしてみれば、自分も”どうでもい人”。 ただ、誰しもが「誰かにとっては”特別な存在”である」という事実がそこには横たわる。
小説『死にがいを求めて生きているの』の登場人物の一人が、物語の中で人間を大きく3つに分類した。2種類の“生きがいのある人間”と、1種類の“生きがいのない人間”。あなたはどれに当てはまるのでしょうか。 このnoteを読んでいる人にも、この小説を読んでタイトルの「死にがい」という考えに風穴を開けられてほしい。ぜひ、読んでみてください。 1.順位 この本では、ナンバーワンからオンリーワンの社会に変化していく様子とそれによって生まれた新たな苦悩が描かれている。その中でも印象的だ
この小説の主となるのは、シロイヌナズナ(通称:ペンペン草)の葉っぱの研究に精を注ぐT大院生の“本村紗英”と、町の食堂『円服亭』で店員として働く“藤丸服太”の二人である。本村が属する『松田研究所』と藤丸が勤める円服亭の周辺の人たちの優しい雰囲気の中で話が進んでいく。 「愛」とは何なのか、延いては「好き」とは何なのか。何故ゆえに愛を抱き、何故ゆえに好意を抱くのか。この小説はそれらを全部横たえて、読み手を包み込んでくれます。 藤丸の、本村に対する気持ちも素晴らしいなと思い
僕はスーパーでレジ打ちのアルバイトをしているので、それはもうたくさんの学生、社会人、ご年配、カップル、夫婦、子供連れ、家族連れの接客をすることになる。僕がバイトを始めてからはまだ1年半ほどしか経っていないが、始めた頃はベビーカーに乗っていた赤ちゃんが今はよちよち歩いていたりする。自分の親の少し上くらいの世代の人が急に赤ちゃんを抱っこしていたりして、お孫さんなのかな〜と思ったりする。この前までポイントカードを持っていなかった若めの男女2人組が、いつの間にかポイントカードを作っ
朝井リョウさんの著書『ままならないから私とあなた』を読み終わりました。 読み終わった時に頭に浮かんだのは「アイデンティティやその人らしさは、”出来ないこと”の方に宿るのかもなぁ」という考えでした。 以下、ストーリーのとある要素について要約した文章です。 技術の進歩を受け入れる人。 技術の進歩の『都合の良い部分』だけを受け入れる人。 「昔の方が良かった」とか。 「俺たち/私たちが子供の頃なんてさぁ」とか。 雪子の言い分も分かる。 薫の「電子黒板は嫌だけど車や電車には
今年の春休み中、地元の友人が一人就職するということで、友達何人かで焼肉を食べに行くことになった。 夕飯を食うだけかと思っていたら昼前に友人が車で迎えに来て、昼飯を食い、車で1時間以上かかるショッピングモールに行き、焼肉屋に着いたのは18時すぎくらいだった。 この日の発起人が運転手をしていたため、そいつはお酒を飲まなかった。(当たり前) 各々の実家から徒歩で行けなくもないくらいの距離の焼肉屋でみんなで酒を飲むのが一番良かったはずなのに、時短営業の影響でショッピングモールからの
多分、一年以上は本棚の隅っこに置いてあった気がする。 なんとなく放置していたけど、やっと読むことができた。 元気とか正気みたいなものは、どこかへいってしまった。 結局、理解されない側は理解してくれない側のことを理解しようとしない。 ”理解してくれない側”が歩み寄ろうとしてくることすら拒絶するほどに、理解しようとしない。 排除してきた側が大義名分を振り翳して歩み寄ってくるのは胸糞以外のなんでもないから、しょうがないよなと思う。 登場人物らはそれぞれ相反することを言って
「何者かになる」という探究を成し遂げた人間を俺は見たことがない。 ”俺が好きな人たちと読んだ小説の中に”というだけではあるが、見たことがない。 南海キャンディーズの山里さんは漠然と「何者かになりたかった」けど、自身は天才ではないからその差を努力で埋めようとした。モテたい気持ちや嫉妬を燃料にし芸人になった。 ピースの又吉さんは、芸人という変わり者になれば「何者かにならなくていい」と思い芸人になったが、結局は「何者かであること」を求められてしまっている。 又吉直樹さんの著作『人
はじめにnoteを始めてから読書をするのがより楽しく感じるようになった気がする。本を読んだ感想を自発的に書くようにもなった。小学生の夏休みの「読書感想文を書くための読書」はあんなに退屈なものだったのに、「読書を楽しむための読書感想文」はこんなにも有意義なのかと思わされる。僕はそんなにたくさんの冊数を読んでいるわけではないが、「この本を読んでよかった」とこんなに思える小説に初めて出会った。 1.感情移入この本を読み始めた時は何の疑いもなく主人公の「永山」の気持ちで読んでいた。
星野源さんのエッセイ、「そして生活はつづく(文庫)」「働く男(文庫)」「よみがえる変態(文庫)」「いのちの車窓から(単行本)」の4作はしっかりと買っていたのですが、序盤を読んだっきり積読状態が続いていました。 今回「いのちの車窓から」の文庫版が発売されるということで、勝手に重くしていた腰を上げることにしました。 読む順番としては適切ではない気がしますが、改めて「いのちの車窓から」から読んでいこうと思います。 読みながら思ったことを順に挙げていこうと思います。 1.話の展
いきなりですが、誤字脱字がおそらく大量にあると思うので広い心で受け止めてくださると嬉しいです。 はじめに 発売日の朝一で近所の本屋に走って買いに行き、9:30には一丁前にコーヒーを入れて、机に向かって本を読み始めました。 最後にナナメの夕暮れ(単行本)を読んだのが4月の終わり際だったので、もう7ヶ月経っています。「明日のたりないふたり」よりも前ですね。 文庫版のために書き下ろされた17,000字だけを読んでも良かったのですが、「最初から読み返した方が絶対良いよな」と