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自転もままならない

 数ヶ月前、僕が聴いているラジオ番組のイベントが横浜アリーナで開催されたのですが、その時に行った新横浜駅の書店で買った中の1冊がこの『自転しながら公転する』でした。その書店でこの本が平積みされていて、帯の「恋愛、仕事、家族のこと。全部がんばるなんて、無理!」という文言に意識が吸い込まれました。
 帯を見て僕は、主人公が「恋愛」「仕事」「家族のこと」の全部を諦める過程の物語が読めるのではないかと思って内心ワクワクしました。そんな話が読みたいなと、この本を見つけた時に心の底から思ってしまいました。(キラキラした青春小説・恋愛小説は、自分が好きな作家さんの作品だけでお腹いっぱいです。)
 現実を見せつけてくる小説が僕は好きです。誰もが「自分の人生にそんなこと起こらない」と思いたいことに、全部狂わされる主人公の話がいい。「目を背け続けていた未来」が急に現実になって、全部狂わされる主人公の話がいい。暗い内容の小説を探そうと検索しても、すぐ人が死ぬミステリー小説ばっかりで、そういうことじゃないんだよなぁと萎えます。

 想像していた結末ではなかったですが、読んでよかったです。タイトルの意味も早い段階で出てくるのでなるほどなぁってなりました。僕は自転もままなってないです。

 話としては巡り巡って結局振り出しと同じ軌道に戻っただけに感じましたが、そこで‘貫一’の「同じ軌道には戻らない」という蘊蓄が頭をよぎりました。


#333  自転もままならない

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