『いのちの車窓から』
星野源さんのエッセイ、「そして生活はつづく(文庫)」「働く男(文庫)」「よみがえる変態(文庫)」「いのちの車窓から(単行本)」の4作はしっかりと買っていたのですが、序盤を読んだっきり積読状態が続いていました。
今回「いのちの車窓から」の文庫版が発売されるということで、勝手に重くしていた腰を上げることにしました。
読む順番としては適切ではない気がしますが、改めて「いのちの車窓から」から読んでいこうと思います。
読みながら思ったことを順に挙げていこうと思います。
1.話の展開のさせ方
源さんのエッセイは、話の最後に”街で見かけた人物”が出てくることが多いように僕は思いました。
源さんが内で話を展開させ、最後にその人物を出して「その気持ちわかる気がする」と寄り添って肯定しているように思えました。
僕は「見かけた人・関わった人から色々発想を展開させて自分に落とし込んでいく」という順序でnoteを書くことが多いので、「誰かに自分を重ねる」ことと「自分を誰かに重ねる」ことの違いを感じました。
源さんのエッセイで見受けられる後者の方は、懐の広さが桁違いな気がします。
2.読みやすさが半端ではない
源さんのエッセイは”特段”難しい言葉を使って書かれているわけではなく、読んでいてスッと頭に入ってくるほど親しみのある文体を用いた文章で構成されていて、「俺もこんな文章がかけたら良いなぁ」と思ってしまいます。
それっぽい音楽とか溜まったラジオとかを聴きながらする読書としてはこの世で一番適していると思います。
3.日常の描写
日常のなんてことない一コマの描写が、源さんのエッセイはえげつないです。
「ベランダに出たよ」というだけでそんなに情景描写できてしまうのか….と脱帽してしまいます。(p180「夜明け」参照)
読み手側にも、意味わからないくらい鮮明に情景が思い浮かびます。
それと、可愛いものをより可愛く、食べ物をより美味しそうに描写するのがうますぎます。
いや、「ぷりぷり」て。
可愛すぎんだろ。
チャーハンに至っては4Dかと思いました。
4.気持ちの描写
綺麗で簡潔なまとめ方や例えが、脳内に響いてきます。
もう、雷鳴くらい響きます。
僕がnoteを書いていて「思ってたことが全部書けた」なんて経験は数える程しかないですが、この”心の中が綺麗に整頓される感覚”はすごく共感できます。
源さんの文章によって、僕の心がまた一つ整頓されました。
5.人間と転機
p114の「寺坂直毅」、p144の「細野晴臣」、p156の「大泉 洋」、p174の「新垣結衣という人」が僕は本当に好きです。
特に、寺坂さんの章は号泣してしまいました。
これくらい大きくて人生を変えるほどの”人との出会い”は、僕にはまだない気がします。
素敵です。
6.没頭とゾーン
たびたび「没頭」や「ゾーン」について触れている箇所があり、個人的になんか嬉しくなってしまいました。
後期の大学の講義で習った内容ということもあるのですが、自分が身を持って体験したわけでもないのに「本当にこういった感覚になるんだなぁ」と思いました。
7.夜の素晴らしさ
ラジオというものに特別な思いのある人だったり、周りよりは色々考え込んでしまう性格だったり。
そういう人の語る”夜”が僕は好きで、より一層"夜"が好きになります。
夜は良くも悪くもなんでもできる。
本を読んだり動画を見たり音楽を聴いたりラジオを聴いたり散歩をしたり。
もちろん、何もしないこともできる。
ここ2年、深夜はめっきりラジオを聴いている。
「昨日のあの番組面白かったよな」と翌日に言われた時、内容をどれくらい覚えているかというとそんなに覚えていない。
言われると思い出せるんですけどね。
聴き終わった後の圧倒的な”走りきった感"(リスナーのくせに)と”笑った”というふんわりとした感覚を抱き締めながら寝るのが常です。
でも、それがいつまでも新鮮で良いんです。
昼にタイムフリーした内容は妙に記憶に残っていたりするので、源さんの言う通りなんだと思います。
でも逆に、その朧げな感じが、「リアルタイムで聴く」ことの醍醐味なんじゃないかなとも思います。
いつも「星野源のオールナイトニッポン」、楽しく拝聴させていただいています。
8.過去の自分
2021年3月6日放送の「オードリーのオールナイトニッポン」のオープニングトークが僕は狂おしく好きです。
オードリーのお二人がまだ仕事のない若手芸人だった頃の、ギャラもほとんど出ないような仕事の思い出を振り返るような話になりました。
若手芸人だと、テレビ番組のカメラリハーサルに呼ばれて名札をつけて座ったりする仕事を任されたりします。
今現在のオードリーさんは出演者側なので、自分の役をやってくれている若手芸人さんがいることになります。
そういう状況の時、若林さんは「昔の俺がいる」と思うと話していました。
「世の中を目の敵にしていた過去の自分」がいるからこそ、今になってそいつから見られている気がする、と。
この「昔の自分が苦しめてくる状況」は僕もずっと苦しかったのですが、若林さんの言葉を聴いて整理がつきました。
これ以降、「昔の俺がいる」をネガティブなものと捉えて、これからの自分が避けて通れない道だな….と悲しくもなりました。
ここを読んで、僕の中の「昔の俺がいる」という言葉にポジティブな意味が加わった気がしました。
9.怒りの吐き出し方
p20の「怒り」が僕はとても刺さりました。
怒りを吐き出すことは重要だけど相手に与える負のエネルギーが大きいのでなるべく楽しく面白く吐き出す必要がある、と。
肝に銘じます。
10.記憶が道に焼き付く
星野源さんがあちこちオードリーにゲストとして出演した時、「感情が道に焼き付く」とおっしゃっていました。
歩いている時は考え事をしてしまうことが多く、数年後にそこを通るとその時の感情やそれに付随した記憶も蘇る。
僕は散歩が好きなので、考え事をしすぎているなと思った時は、頭を冷ますために散歩に出かけることもあります。(冬は物理的に頭が冷えるから好き)
昼間に普通にラジオを聴きながら散歩をしたりもしますが、その時に急に考え事がフラッシュバックしてきたりします。
悪い感情だけではないのですが、感情が道に焼き付くというのはすごく分かります。
でも、通るたびに思い出すと思うとどこか億劫な気がしてなりませんでした。
ですが、p196の「文庫版あとがき」を読んで希望が見えました。
詳しくは「いのちの車窓から」を通して読んでみて欲しいのですが、その焼き付いた記憶を”アップデート”することができるらしいんです。
僕も源さんのように”アップデート”できるように頑張ります。
最後に
もう少し書きたいことがあるのですが、エッセイの「感想文」から程遠くなてしまう気がするので後日分けて書きます。
大きく分けると
・p168「恋」 の話
・p99「人見知り」、p102「YELLOW DANCE」、p110「おめでとうございます」、p186「ひとりではないということ」 の話
の二つです。
#235 『いのちの車窓から』
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