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ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築

六本木ヒルズの52階にある森美術館で開催しているヘザウィック・スタジオ展に行ってきました。
よく漫画家の展覧会をやっていたり集客に割り切った企画が多い中、不動産デベロッパーである森ビルの意向もあるのか建築系のかなりお金のかかったちゃんとしている展示をしていることでも有名です。

今回も現在建設中である麻布台ヒルズの低層部デザインをヘザウィックスタジオが担当しているということで宣伝的な側面もある展覧会です。



人はなぜか高いところにのぼると写真をとってしまう。
東京は雨が似合うね。

モックアップがたくさん置いてあるエリア。

尿管結石みたいなモックアップ

スケッチもたくさんあり建築家の展覧会だなとなりますね。

壁の割れ目が色っぽい

図面の枠外に設計事務所の名前や図面の名前を入れるものを図枠といいますがヘザウィックスタジオの図枠です。かわいいフォントしてる。

断面パースというやつ
すぅ~
いいっすねぇ
一個上の断面ですねたぶん
実はマスキングテープは蛍光ピンクだったのです
こういうのが手書きで書ける人は設計事務所で重宝されるだろうな

トーマス・ヘザウィックの出世作でもあり最高傑作でもある2010年上海万博英国館「種の聖殿」。
イギリスには「キューガーデン」といわれる世界で最も有名かつ包括的なコレクションを持つ植物園があります。
大英博物館同様、近代イギリス覇権主義のレガシィでもあります。
世界のすべてをロンドンに集めようとしたその記憶ですね。
そういったイギリスの特徴も反映し、25万種の植物の種をアクリルの棒の先にかためそれをたんぽぽの綿毛のように集めて作ったパビリオンです。

アクリルの棒なので光ファイバーのケーブルみたいに光を通す

植物資源という考えがあり植物の遺伝子多様性を確保するために植物の種を保存しておく「seed bank」と言われるものも作られていたりします。
ビル・ゲイツがリーダシップをとり、核戦争をも耐え抜く永久凍土の中に植物の種を保存する「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」なんてものもあります。

そういったこともあり植物の多様性、種子は世界の潮流の先端でもあり2010年にこのパビリオンをとんでもないクオリティで作り上げたトーマス・ヘザウィックの非凡さがわかるかと思います。

有名なロンドンの2階建てバスをリニューアルした際にヘザウィックスタジオがデザインしたようです。

かわいい

バスのスケール感は電車とも少し違ってヒューマンスケールでありながら乗用車ほど缶詰感がないので建築家が空間をデザインするようにバスをデザインしたらいいのになと普段から思っていたのでヘザウィックがロンドンのバスをデザインしてるらしく乗りたくなりました。
暗闇の中、直方体のバスから漏れ出た光が道路を照らしながら動いてく様は動く家のようだと思うんですよね。

ロンドンオリンピックの聖火台

iPad直置きしてる展覧会もありますがちゃんと仕舞ってますね。

産業革命を始めた国であるイギリス出身ということもあるのか機械の美しさとウィリアムモリス的な手仕事感みたいなものがうまくかみ合ってきれいなものが出来てる感じがします。

建築のプロジェクトがいくつか。
模型がかっこいい。

3Dプリンタでしか作れない模型ってのがあるね
意味がよくわからないくらいツルンとした外構
かわいいね
おれとどっちがかわいいかな?

有名な階段井戸をモチーフにしたものですね。

模型を御影石の台座に並べたり見せ方がちゃんとしてるよな

模型の綺麗さにしても斜に構えてないというか王道の綺麗さみたいなものがありますね。逆張りしないデザインの良さを感じる。

近年の代表作ですね。
NYにあるリトルアイランド。

中に入ればただの公園だなって感じですね。

麻布台ヒルズ
すごい素敵な建物に見えますね
まるで麻布台ヒルズ本体は別建物みたいな見せ方するじゃん

特にコメントすることもないですね。麻布台ヒルズ。

最後にコマみたいにぐるぐる回る椅子に乗ってヘザウィックのTEDが聞ける場所。
TEDってまじでしょうもないですけど最近聞かないですね。

座り心地はよかったです


小さく美しいものを作るのはそんなに難しくないのです。民芸品とかがそうですね。器とか。
ですが大きな大きな美しいものを作るのが難しい。
それは人間のパーソナルスペースをも越え、視界からも消え、認識の外に出るくらい大きな大きな美しいもの。それを作るのが本当に難しい。
美しい器を作るように美しい建物を作ることはできるのですがそれには規模の限界があります。
その先に手をかけられる建築家を私は本当の天才だなと思うのです。ほとんどいないのですが。

このスケール感によるものづくりの限界点をレムコールハースという建築家は「S,M,L,XL」という著作で全ての建物を4分類することで理論化しました。
建物の大きさがある臨界点を超えるとデザインの手を離れる。
エレベーターという機械の発明によって建物は法律の許す限り際限なく大きくなるようになりました。森美術館は52階にあります。
地上と森美術館の間には同じ間取りが永遠と連続する空虚なオフィスが詰まっているわけです。

今回の展覧会の主人公ヘザウィックの建物はSサイズです。
万人が美しいと思う手仕事のようなものの美意識の延長線上に彼のデザインはあります。
そしてコールハースがビックネスと呼んだあまりにも巨大が故に建築家の手を離れた巨大な高層ビル。六本木ヒルズであり、麻布台ヒルズですね。
麻布台ヒルズの低層のデザインをまかせ、さらに52階という積みあがった空虚の上で展示をする。これは抵抗なのか皮肉なのか単なる宣伝なのか…。
麻布台ヒルズの竣工が楽しみですね。

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