青い鳥

君のその薔薇、誰からもらったもの?

青い鳥

君のその薔薇、誰からもらったもの?

最近の記事

君のこと

僕が探そうとしていた君は遠くに 夜を超えて過ごしたあの日の夢よりも遠く儚く、 なのに時計の針が物語るように、君は 偽りもなく、真っ直ぐ 眩しすぎた銀色が寄せては返す、さざなみの中 僕は手探りで 諦めかけていた君のかけらをもがいて掴んでも、 君のことだから きっとにべもなく、 僕を手離すのだろう?

    • まどろむ貴方へ

      今日もとても高い天井の下でぼくは眠る。扇風機の音が響いているこの部屋で、君と抱き合える夢を見た。 夢の中の君は少し風邪気味で、眠りながら鼻をすすっている。その音がとてもいとおしく、思わず近づくと君のおでこからほんのり熱い体温が感じられる。 蒸し暑いその部屋は微熱の君によく似合う。生乾きのままこの乱れたシーツの上、汗に濡れた君をいっそ抱きしめたい。 昼も夜も、夢の中でも、目が覚めても。 ぼくはずっと君の夢を見ているのだろう。微熱の君、くたびれた君をずっと見ているのだろう

      • 薄汚れたベンチで夏を過ごした二人

        放課後、夏の夜を過ごした薄汚れたあのベンチを見た?ぼくはいつものミルクティー、君はいつもの氷いっぱいの麦茶、一緒に飲んで過ごしたね。海を見に行きたいと言っていた君に、ドライブに行こうと返したぼくだったのに、行かなかったね。たった一度も。行くことはなかった。 そう、口先ばっかりで未熟で、のろまだったぼくたち。それでも、君と無駄に過ごした夏の夜は、何もかもが大丈夫だと感じられたんだ。君もそう思わない? do you see that old, dingy bench, wher

        • 夏バテ

          最近の自分は自分らしくない。 寂しさとはまた違う、空しさ、というものだろうか。 「デート」なんて呼びたくないデートを、次々と。 まるでジャンクフードを食べ続けるように。 しおりにした去年のクリスマスに観た映画の半券が、3ヶ月前と同じページに挟んであった。 好きなはずの読書が進まない、まったく。 余ったお金はどう使うか分からず、でもお金を残して死にたくないから意味のないものを買い続ける。 心の穴を埋めようとするように。必死に。 まるで赤くなっている信号を、ゆっくり

        君のこと

          あの夜

          君は感情が激しい人だった。感情が高ぶり、ひたすらに人を愛し。時とともに、その感情がすぐ薄らいでいって、そして、無くなる。まるで、暑い日に朝露が蒸発して消えるみたいに。 あの夜のこと覚えてる?狭いリビングのソファーに二人が並んで座り、冷めかけたピザを君は手で食べた。わたしはピザでもなんでも、お箸で食べるからお箸で。確かテレビで映画を観てたはずだけど、何を観てたのか思い出せない。覚えてるのは、映画のキスシーンを見た後の、照れくさそうに隠そうとしていた、ほろ酔いのような君の頬。

          匂い

          ベッドに寝転んで 死体のようなぬいぐるみ 君の匂いがする ほのかに残る石鹸の匂い、柔軟剤の匂い 少し混ざった甘い匂いは、 わたしのだった 日光浴をさせてあげなかったのにアイビーが生い茂り、 洗面台にぶら下がっている その萌黄色の葉が背負ったような 重い淋しさ 錆びついた哀しみ 激しい君の愛を感じさせた

          青信号

          渋谷スクランブル交差点で青信号を待っている間、彼が「彼女と別れたいと思ってるよ」と言いだした。なんかあったの?と聞いたけど、普段と変らない表情で言っていたからか、わたしはそのときその言葉を信じなかった。 一年前も彼が同じことを言っていたが、それを言い出してから数週間後にその彼女と同棲することになった。よくわからない話だ。 だから今回も同じだろうと思っていた。 彼はそれきり口をつぐみ、わたしもそれ以上何も言わなかった。 わたしは山手線へ向かい、彼は銀座線へ。言いたいこと

          blue クリスマス・イヴ

          今夜はクリスマス・イヴ クリスマスはどうでもいいけど、淋しい。 今年寄ってきた男は、3人いた。 一人はグズだけど。 ホテルの鏡の前で自撮りした写真をインスタに上げている男。 自撮り男と呼ぼう。 自撮り男に去年一度告白されたけど、「好きな人がいる」と理由を付けて断った。ストレートに無理といった方が良かったかもしれない。 自撮り男からの連絡には98%の確率で返信しないのに、今年は「きみと結婚したい」とチャットで言われた。 就活選考に落ちたときに採用担当の人が書くメールの

          blue クリスマス・イヴ

          観覧車の二人

          秋の夜 観覧車の中の二人は 甘い金木犀の匂いにつられ 儚い夢へ 十月の月は 白くひかって 二人を照らす 照らさないで 染みだらけの二人だから 彼は繰り返す 照らさないで 汚れているだけだから 彼女は言う そして観覧車の中の二人は 月明かりを逃れて 抱き合った そして観覧車の中の二人は 慌てて 飛び込んだ    深い淵の底へ

          観覧車の二人

          夏のsoliloquy

          君の背に滲む汗が光っている カーテンが揺れている隙間から入っていく 短い夏の夜の熱い風 僕と共に 苦しく 激しく もがいても 暑さは変わらず訪れていた 君は振り向いて くらむ目で僕を見ていた 急ぎすぎていた鼓動が重なって なのにその夜の縁を踏み越えられず 朝がやってきた

          夏のsoliloquy

          早朝のランニング

          ひんやりした空気、小雨が降っていた朝。粗大ゴミをマンションのゴミ置場に出して、わたしは走り始めた。今日のランニングは川沿いへ。 多摩川に架かる可愛らしい水色の橋のちょうど真ん中で息切れした。手の隙間から汗がすり抜けるぐらい、汗と雨で体がびしょ濡れになった。橋の上から河川敷を眺めながら荒くなった息を整え、長く深く息を吸うと左胸がチクッと痛かった。 雨の匂いが混じり湿っぽい5月の空気が、風と共に吹き、冷たい頬に触れた。汗を拭いてわたしは走り続けた。 家に着いたらお風呂に浸か

          早朝のランニング

          薄くなった味

          通りすがりの人々の背中を大きな窓ガラスから眺めている。コーヒーカップの中の氷が徐々に溶けている。その薄くなった味が恋しくて、わざと溶けるまで待っていた。 今日の東京は灰色。今日のわたしは、何色に見えるのだろう。 ストローで氷をかき回しながら、ぼんやりとあなたのことを想っていた。久々に。 あなたは昔、言ったよね? 「もし君に出会うことがあるとすれば、今向かっているところ」 あの日あなたが向かった、新宿三丁目のある場所に、さっき行ったよ。薄くなったあなたの痕跡が現れてくる

          薄くなった味

          彼女と恋人の空

           彼女が恋人と四年間以上付き合っていたあの空はずっと青い。  そんなある日、彼女は自分の夢を追うため、家族・飼っていた二匹の猫・友達、そして恋人も、夕方のそよ風が気持ち良いあの国に残して、一人で日出ずる国に向かった。  電話やメールなどがあるから大丈夫でしょう、と思い込んで、二人をつなぐ赤い糸の強さに信じていた彼女と恋人は甘かった。 「離れても、同じ空の下にいるから」と、キザなセリフを言いまくっていたあの時の彼女は、恋人を愛していたのだった。  異境にいる最初の一年間

          彼女と恋人の空

          友情

          「ずっと好きだったよ」  と、突然、彼から愛の告白をされたあの日曜日の夜。  二人が昔住んでいた街の、渋谷駅から徒歩十分のところにある、二人のお気に入りのあの店で。  ぎこちない冬の日だった。 「過去形?なんで今さら言ったの?」  困惑して、彼から顔をそむけたわたしは、彼の表情がよくわからなかった。ありがとうの言葉さえ言いそびれた。 「来週、引っ越して彼女と同居し始めるから」  確か去年の6月だった、彼と最後に会ったのは。確か二人で誕生日のお祝いをした。その時、二人

          果てしない叶わぬ想いの向こうで 君が消えて無くなるまで僕は待っていた 跡形もなく、脆く、君の心 その心に溺れる、僕の心 あの陶酔の中に死ねたらいいのに

          青い鳥と赤い杉:鏡の向こう

           その町では、住民たちも知らない間になぜか煤だらけだった。その煤がなくなるように、町長は隣町まで道を延長することを計画していた。その道には、両側にスギが植栽され、並木道になるような巨大な計画だった。あの有名な日光の杉並木街道のようだ。  住民たちはその道にスギを植えて、植えて、植えつづけても、まだまだ足りていなかった。町はまだまだ煤だらけで、真っ黒で、まるで放火された町のようだった。  その煤だらけの町の高い塔には、飛べない青い鳥が住んでいた。「住んでいた」というよりも、

          青い鳥と赤い杉:鏡の向こう