薄くなった味
通りすがりの人々の背中を大きな窓ガラスから眺めている。コーヒーカップの中の氷が徐々に溶けている。その薄くなった味が恋しくて、わざと溶けるまで待っていた。
今日の東京は灰色。今日のわたしは、何色に見えるのだろう。
ストローで氷をかき回しながら、ぼんやりとあなたのことを想っていた。久々に。
あなたは昔、言ったよね?
「もし君に出会うことがあるとすれば、今向かっているところ」
あの日あなたが向かった、新宿三丁目のある場所に、さっき行ったよ。薄くなったあなたの痕跡が現れてくる、徐々に。そんなあなたに、今も想いが募る。よく分からない想い。
辛いほど 苦しいほど 痛いほど
それでもあなたと
もう一度