純金の箔を使う理由
マガジンを増やしました。
画材や技法や好きなものなどについての記事をまとめていきます。
私の作品あるいは白黒ええよんという作家がどのようにつくられているのか、制作過程とはまた違った部分をお伝えできたらと思いました。
船大工の独り言
に入れようかとも思いましたが、ちょっと違う気がしたので、新設。こうしてまた上限の21に近付くのでした。
私の作品には、様々な素材が使われています。
そのひとつが、純金です。純金といっても箔ですが。
なんで使っているのか、簡単に書くと、人生は短いからです。
とにかく、気になったことはできる範囲でやってみることにしています。
話せば、長くなります。
一部、どこかに書いたかもしれませんが、あらためて今の言葉で書きます。
元々、私はデジタルで制作していました。
ある時、ご依頼の絵に銀色を使いたいと思いました。けれども、デジタル作品の制作における私の限界を感じました。
その後、アナログの制作を再開(「再開」というのは、うんと昔に制作していたため)し、金色の絵具を買いました。他にはトランスペアレントローアンバーなども買いました。これらは、セット以外で自分で初めて選んで買ったアクリル絵具でした。(直感で選びました。後で気づきましたが、Gの数字が大きめでした。絵具は、メーカー様やシリーズの他、同じ枠組みの中でも色によって値段が違います。私は、無意識のうちに高いものを選びがちなのかもしれません。これも純金と関係あるのかもしれませんが・・・。)
初めて金色を使い、筆をゆすいだ時に、筆先に付着した金色の絵具が、私に話しかけてきました。ビックリしました。
私は絵具というものの仕組みを意識しないで使っていたのですが、絵具は、大雑把に言うと色の粉と糊でできていることを後で知りました。水により自由になった色の粉が動き出したのです。
金色は特別で、色の粒たちがまるで生きているかのように動くのが見えました。後から、他のメタリック系の色も同じ仕組みであることを知るのですが、初めてのこのときは、本当にビックリして、感動しました。アナログの世界へようこそ、仲良くしましょうと言ってくれているようでした。
私は、金色が好きになりました。
金色のつぶつぶたちの振る舞いを観察したくて、水で溶いたのを塗るのを楽しんだりしました。これなら、後片付けの時だけでなく制作中もあのキラキラを眺められるのです。嬉しいったらありゃしない。この水溶液には、「秘伝のタレ」という名前を付けました。複数の種類の金色を混ぜていました。
さらに金色は、塗れば金色になります。これはデジタルの世界から移って来たばかりの私には奇跡でした。
塗れば、金色。ちゃんと、光る。
デジタルで銀色の表現(あくまでも自分のできることですが)に限界を感じた時のことを懐かしく想い出しました。
アナログってなんだか楽しいと思いました。デジタルの世界で私が表現し得なかったことを、色々できたらと思いました。
その後、天然石のキラキラにビックリしたりするのですが、今回は純金の話に絞って書いてきます。
金色が大好きになった私は、折に触れ、金色を使うようになりました。
そして、あるとき、金箔が気になりました。
金色の絵具と、金箔は、どう違うのだろう?
とことん究めたいタイプの私は、鑑賞者として作品を拝見するときだけでなく作家として実際自分の作品に採り入れたとき、金箔だとどんなことができるのか知りたくなりました。知るには、使ってみるしかないです。
2021年10月の終わりごろ、私は金箔を注文しました。金沢の老舗の金箔です。思い切って、純金にしました。
色々制作していて、記憶が曖昧なのですが・・・確か、ちょうどオーダーをいただいていたのです。ご希望の中に、「クリムト風に」というのがあり、クリムトについて調べました。どの部分でクリムトらしさを出すのか、そしてそのクリムトらしさを出しつつも私らしい絵にするのかという点について、大いに悩みました。単なるマネはしたくありませんでしたし、そっくりにするのは技術的にも難しかったからです。
調べを進めるうちに、純金を使っていたらしいという情報を得、純金を使うことにしました。純金を使えばクリムト風になるという単純な話ではないのはわかっていましたが、私なりにクリムトらしさを出してみようと思いました。クリムトが見ていた色を見て、クリムトが触れた素材に触れてみたいと思ったのです。
このオーダーがきっかけで購入したのか、それとも少し前に購入してあったのか今となっては定かではありませんが、ピッタリのタイミングでした。
駆け出しのアーティストが純金を使うことについては、色んな意見があるでしょう。ネガティブなものをいちいち気にしているより、気になることはできる範囲でやってみることにしました。オーダーは嬉しかったですし、自分が巨匠になるまで待っていたら、一生かかっても純金を使えないかもしれません。
それに、私はそんなに器用ではないので、「練習用は純度の低いもの、本番用は純金」という使い分けができません。厳密にしようと思ったら、容器や道具なども倍必要です。そうしないと「これはカニが使われているお菓子と同じところでつくられています。」みたいなことになりかねません。
(あ、カニは大好きです。だからこそ例として登場してもらいました。カニのところは落花生でも何でも大丈夫です。私のアセンダントはカニです。)
ならば、最初から純金がいいです。これは純金だろうか?他のが混入してないだろうか?と心配しながら使わなくても済みますし、お客様にも堂々と純金ですとお伝え出来ます。それに、元々純金の柔らかさに慣れておけば、同じ枚数を使い終わった頃、併用した場合と比べて純金に慣れているのではないかとも思いました。
結局、純金の他、丸と四角の部分もちょっぴりクリムト風にしました(形にクリムトにとっての意味があり、それはお客様のご状況と合致したためちょうどいいと思いました)。
お客様に大変お喜びいただけたのも嬉しかったです。
純金は、変質し辛く、ほぼ永遠に残るのも嬉しいです。錆びたりする変化を楽しむ作品もあるのでしょうけれど・・・。
かくして私は、純金のことも好きになりました。
(他の箔を使ったことが無いので、純金の箔が好きというだけで他のが嫌いという意味ではありません。また金色の絵具も相変わらず好きです。)
その後、折に触れ金箔(24K)を使いつつ現在に至ります。恐らく可能な限り今後も使うでしょう。この人生で純金の箔を使うことができ私は嬉しいです。
砂子が特に好きです。ふわふわと舞う様子がとても可愛いです。これは絵具では体験できないことだと思いました。逆に、金箔は秘伝のタレができませんが(あのつぶつぶたちの振る舞いもとても可愛いです)。
色んな光り方をしたりテクスチャーをつくることができたり、他にも色々好きなので、金箔と私でできることをこれからも探っていきたいです。最初は金沢産でしたが、その後、京都産のも注文してみました。まだ使っていませんが違いを知りたくて興味津々です。
100%が好きな私は、その部分でも純金に惹かれるのかもしれません。もっと自分の作品の純度を高めていきたいです。
また、これは、自分の作品のオリジナリティを高める自分なりの工夫でもあります。単に使っているわけではなく、こういった背景がありますということを今回書くことができ嬉しいです。
ありがとうございます。それでは、また。
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