Baobab 第15回本公演 Re:born project vol.7+8「ボレロ -或いは、熱狂。」シアタートラム
冒頭、Perfumeの曲「ポリリズム」に乗って、Baobab主宰の北尾亘さんとダンサーたちが舞台(台にはなっておらず、床が舞台としてのスペースで、正面席と後方席=特設席が階段状に設置されている)から観客に声をかける。マイクも使っていた。若干滑っている大道芸のような趣。
観客と一緒にダンスを作り上げたいと述べ、どのダンサーの踊りが見たいか、体のどのパーツを使って踊ってほしいか、などの意見を観客から募集する。観客からちらほら反応があり、「〇〇、頂きました!」とダンサーたちが叫びながら動くのだが、あまり意見を反映して踊っているとも思えない。ライブ感、躍動感を演出したかったのかもしれないが、ごちゃごちゃ、ばらばらと動いている感じで、興ざめだった。笑いを取るはずのシーンも、あまり面白くない。
1回目の「ボレロ」が踊られるが、特に何かを感じるということもなかった。
「ここは自由が約束された場所」というようなことが述べられ、北尾さんが「マエストロによってこういう舞台の展開になっている」というようなことを言い、ボレロ中に北尾さんは指揮者のように振る舞っていたのだが、そのとき着ていた白いスーツ(ジャケット)を脱いで、ジャケットは天井に掲げられる。
この後はボレロ以外の曲や無音でダンスが繰り広げられる。北尾さんのキレキレのソロや従来のBaobabらしい(と言っていいのか?)カチッと決める群舞は健在だが、ダンサー同士の身体を反応させて動くようなところなどはバラバラ感が気になった。まだ仕上がっていない感じ(初日だったから?)。
最後にもう1回ボレロの曲で踊るのだが、振付はモーリス・ベジャールの「ボレロ」っぽい、腰を落とすような重みのある動きと勢いとが表現され、新しい何かが提示されている気はしない。
透明なビニールの大きな風船の中にマエストロのジャケットを入れて膨らまし、またしぼませたり、鉢植えの花(おそらく偽物だろう)が置いてあったり、ミラーボールが天井につり下げられたジャケットのすぐ近くで光って回ったり、というモチーフは、当日配布されたパンフレットに掲載された北尾さんのコメントから察するに、現代の戦争に向かう風潮や想像力の欠如などへの批判を表現しているのだろうか。だが、ダンス自体がいまいち作品としてまとまっているように思えなかったため、解釈しようとする気力が起きない。
約1時間半の上演は長い。ダンサーたちはみんなほとんど出ずっぱりで、体力的にかなりハードそう。終わった直後、ダンサーたちの苦しそうな荒い息遣いが聞こえた。
初日だから出演者の知人が多いのか、平日の夜のせいか、観客には若者が多かったようだ。拍手も結構熱かった。
全編で写真も動画も撮影OKで、BaobabのTwitter投稿によるとSNSなどにアップしてもいいらしい。こうした試みをするダンス公演は初めて体験した。
政治的なコンセプトを入れ、観客との「共同作業」を目指すなど、新奇的な試みなのだろうか?Baobabの公演は数回しか見たことがないのでわからないが、新たな境地を切り開こうとする過渡期を迎えているのだろうか。その実験、挑戦はあまり成功していないように見えた。
これまでにいくつものダンス作品が作られているラヴェルの曲「ボレロ」を踊るということで、Baobab・北尾さんはどのような作品にするのだろうかと楽しみにしていたのだが、「ボレロ」で何をしたかったのだろうか。「熱狂」の表現?私の考えが浅く、読み取れていない。
Baobabのサイトで本作に関する説明を読んだら、下記のようにあった。そういうことか・・・(だから「Re:born」?)。
こんな記載も(私はここから考察を進めてはいないが)
(↑劇場のサイトで設定してあるサムネイルが間違っているっぽい)