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映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』:ロンドンに超正統派ユダヤ・コミュニティがある事実に衝撃

イギリス・ロンドンにある超正統派ユダヤ・コミュニティを舞台に、同性愛者である女性2人と、その幼なじみで将来を嘱望されるラビ(律法学者)の男性の「葛藤」「選択」「自由」を描くイギリス映画。

原作は、「フェミニズム文学の新たな旗手、気鋭のイギリス人女性作家ナオミ・オルダーマンの自伝的デビュー作」だそう(映画の公式サイトより)。監督は、トランスジェンダー女性が主人公の『ナチュラルウーマン』(2017年)で第90回アカデミー外国語映画賞を受賞した、チリのセバスティアン・レリオ。

映画の原題は、"Disobedience"=「不服従」。

ニューヨークで写真家として活動するロニートは、撮影中に、故郷のロンドンから、イギリスのユダヤ・コミュニティで尊敬され影響力を持つラビである父の死の知らせを受け取る。母はすでに亡く、父が病気だったことも知らされていなかったロニートは、10年ぶりくらいに帰郷する。

幼なじみのドヴィッドと再会し、彼が結婚した相手が、同じく幼なじみのエスティと知って、ショックを受けるロニート。ロニートとエスティはかつて愛し合い、そのことがロニートの父にばれて激しく非難された過去があった。ユダヤの掟に忠実に従って生活する人々のコミュニティに、「異分子」のロニートが再び現れたことで、止まっていた時間が動き出すーー。

同性愛の物語でもあるが、現代(または現在より少し前?)のイギリスでありながら、同性愛がタブーとされる超正統派ユダヤ・コミュニティが舞台になっているのが、本作の重要なポイント。

作中でも描かれているように、地下鉄に乗って移動すれば、同性愛が普通に存在するロンドンの街中なのに、ユダヤ・コミュニティの中では、別世界の掟が存在し、その世界が絶対的で逃れられないものとなっている。

海外でキッパ(敬虔なユダヤ教徒が頭にかぶる帽子のようなもの)を着けた男性やユダヤ教徒の家族を見掛けたことはあったが、恥ずかしながら、ロンドンにこのような超正統派ユダヤ・コミュニティがあることは知らなかった。

映画の冒頭で、帰郷したロニートは、家に入る前にシャツのボタンをきっちり一番上まで留め、幼なじみのドヴィッドに再会してハグしようとするが、やんわり彼に拒否され、異性に触れてはいけないというユダヤの戒律を思い出す。登場するユダヤ教徒の女性たちは皆、全身をほぼ覆った服装をしている。

掟には他に、夫婦は金曜日にセックスをし、結婚した(または成人した?)女性は髪を短くし、外出時には(夫以外の人に会うときは)かつらをかぶる、という決まりがあるらしい。それらのことがわざわざ明確に描かれているということは、もしかしたらイギリス国内でも、このユダヤ教徒の掟を知らない人たちはいるのかもしれない。

▼ユダヤ教の掟について

最後、ドヴィッドはやはり幼なじみの女性たち2人ともを大事に思っていたのかもしれない、と思った。

作品情報

監督:セバスティアン・レリオ
出演:レイチェル・ワイズ、レイチェル・マクアダムス、アレッサンドロ・ニヴォラ
製作:フリーダ・トレスブランコ、エド・ギニー、レイチェル・ワイズ
脚本:セバスティアン・レリオ、レベッカ・レンキェヴィチ
原作:ナオミ・オルダーマン
撮影監督:ダニー・コーエン
配給:ファントム・フィルム
2017年/イギリス/英語/DCP/カラー/114分
原題:Disobedience

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