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眠る15分前

チェストを引き、中にある招待状に視線を向ける。
頭に文字に二重線を引き、丁寧に丸を付けたそれは返信期限は過ぎていた。
「別れてるのに、よく送って来れるよね」と招待状を送ってきたあの人を
おかしく思う反面。
素知らぬ顔で返そうとしていた私もほんと、どうかしている。。。

あれから6年たった、、はず、、
あの頃、、、なんて懐かしむようなものではなかったのに
思い出すと悔しいくらい鮮明に出てくる記憶が「忘れられない」のだと押し付けてくるようで、少し居心地が悪い。

人から奪っている訳でも、誰かを傷つけている訳でもないのに。
"違うかたちの恋"だと遠巻きに見られる。
「そういう人達ね」と枠組みされる。
手を繋いで歩くことさえ、気を遣う。
そんな窮屈さを、一緒に居ることで溶かし合っていた日々。

あの日告げられた別れも、予想していた通りの内容だったのに、
案外ダメージを食らった私は、引き留めもせず、幸せになってね。
なんて心にもないことを言うだけで精一杯だった。


静かな部屋で小さな寝息だけが響く。
起こさないようにゆっくりと動き、優しくない光の液晶をつける。
消せずにいた番号を表示させる。


寝返りすら打つこともしないこの人は、どこまでも私を安心させてくれる。
朗らかなでよく笑う太陽みたいな人。
痛いくらいのブルーライト受けながら、指を動かし削除の「はい」を押す。
雑にスマホを放り、残像が残る瞼の中、目を閉じ隣のぬくもりにしがみつく
深呼吸をする。胸に広がる穏やかさ。"お日様"の匂いに安心する。


明日、祝福されるあなたへ
ベタなことを願うのは癪に障るからやめとくね
幸せだったよ、私
幸せなんだよ、今
.….…おやすみ。



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