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憎悪犯罪に対するリリシストの主張

以下に紹介するアーティスト2名には2つの共通点がある。

<Good Writtens vol. 13 / G Yamazawa>

<ANTI / Lyrics Born>

その2つの共通点とは、①「日系アメリカ人」であることと、②「アジア系人種に対する憎悪犯罪についてのラップ」を歌っていることである。

コロナ・ウィルスの発生源が中国であることを理由に、アメリカでのアジア系に対する憎悪犯罪が増加していることはニュースなどで報じられている通りだ。ドナルド・トランプ元大統領の「チャイナ・ウィルス」に端を発して以降、2020年には全米主要16都市でのアジア系人種に対する憎悪犯罪が2.5倍に増加したのである(※1)。他人種から見ると、日本人、中国人、韓国人などの区別が難しく、全て「アジア人」と一括りに見られてしまうため、この憎悪犯罪のターゲットにはもちろん日系人も含まれている

時事通信社の以下の記事では、「海外書き人クラブ」というクラブの会員がリポーターとして、各国の憎悪犯罪に対する状況をリポーターの肌感覚で報告するという形をとっているのだが、ドイツのリポーターの報告に興味深い一節がある。リポーター自体、コロナ禍以前は人種差別的なことはなかったが、コロナ禍以降に人種的嫌がらせを受けるようになったことに触れ、

「今までに経験したことのない無言の不信感や威圧感、『本当の顔』を垣間見てしまったことはショックだった」

と述べている。

https://www.jiji.com/jc/v4?id=202103cksa0004

上述した2名のラップ・アーティストも、曲内で、こういった人種差別がコロナ禍を機に始まったのではなく、これまでずっと続いてきた問題である点を指摘している。つまり、これまで人々が心の中に潜ませていた差別意識という「本当の顔」が、コロナをきっかけに噴出しているように感じられる。

もちろん、このような差別意識を持っている他人種の人々はほんの一握りであるとは思うのだが、筆者は仕事で学生の海外留学を支援している手前、コロナ収束後も、この差別意識が以前にも増して表出してしまうことを非常に懸念している。

このような状況が、コロナ禍を通して積もったフラストレーションのはけ口になってるだけだと信じたい。

ちなみに、上述した2名のアーティストはリリシストとしても知られている

Gヤマザワ(G Yamazawa)は、ノースカロライナで生まれ育った日系アメリカ人であり、アメリカのポエトリー・スラム(※2)で優勝するなど、大小数々の大会での優勝経歴を持つリリシストである。

<North Cack / G Yamazawa Ft. Joshua Gunn, Kane Smego>

リリックス・ボーン(Lyrics Born)はサンフランシスコ・ベイエリアを拠点に活動しており、歌うようなファンクな曲調であり、同地域をベースに人気を博している。

<I Changed My Mind / Lyrics Born>

※1:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021030600386&g=int
※2:ポエトリー・スラムとは制限時間内に詩を朗読してその内容とパフォーマンスの優劣を競う大会。

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