わたしの珍職業:AV制作会社(仕事編)
前回のお話はこちら
AV制作会社でどんな仕事をしていたのか?
ヘアメイクのアシスタントとして雇われたわたしの主な仕事はこの4つ。
現場でヘアメイク
わたしを面接してくれた後に上司となるチャラ男は、SOD専属のヘアメイクだけではなく、他社のメイクも受け週に何度も撮影をこなす売れっ子だった。
当然アシスタントのわたしもこの上司と共に現場に入る。
現場でやることは、メイク道具をテーブルに並べ部屋のセッティングにはじまり、衣装の準備、モデルのテンションを上げるための会話など心身ケア。
単体モデルであればプロダクションのマネージャーが現場につくけど企画レベルだとつかず、モデルを現場に入れたらマネージャーが帰っちゃう。
そうすると撮影中モデルをケアは、過ごす時間が1番長いヘアメイクが彼女らの世話を担当するのが暗黙のルール。
現場慣れしているモデルやプロ意識をもっている人は扱いやすいけど、初現場のモデルやハードな内容など精神的に負担のかかる撮影は、メイクがたわいもない話をしたり、恋バナで盛り上げたりと女子高的な雰囲気で場を和ませ、極力リラックスできる環境をつくらなくてはならない。
特にAVモデルは精神的に不安定な人が多く、アップダウンが激しいから慎重に接する必要がある。
「こいつゴミみたいでしょ。だからゴミって呼んでやってください」
モデルのテンションを上げるためなら何でもする上司。
アシスタントのわたしは、ただのご機嫌とりピエロでしかなく、バカにされ人間扱いされないことが多かった。
ヘラヘラ笑ってその場を盛り上げてはいたけど、こんなにも雑でコケにされたはなく。
わたしここで何やってるんだろう…。
自分の存在意義を見失いつつあった。
カメラがまわると上司はメイク部屋から出てこずお昼寝。
V(ビデオ)撮影中にモニターを見て直しが必要かチェックするのが、わたしに与えられたメイクらしい仕事。
スチール(パッケージ撮影)ではリップを足したり、ヘアや衣装の乱れを直しをしたり、そんなことをしていた。
とはいえヘアメイクのアシスタントは、モデルのご機嫌とりや世話が主。
メイク道具の管理
SODの撮影は長丁場になることで有名だった(今は知らないけど)
24時をまわるてっぺん越えは日常茶飯事。
撮影が終われば上司は帰宅するけど、そのあと彼がメイクをしやすいようにブラシのクリーニングやスポンジの手入れなど、メイク道具の管理はアシスタントの大切な仕事の1つ。
夜中に翌日のメイク道具準備を済ませて帰宅。
数時間就寝し、早朝から現場。
これがわたしのルーティーン。
デパートに行き、コスメの買い足しも重要なお仕事。
上司には月たしか10万か15万くらいの枠が会社から支給されていて、その中で必要なものを揃えていた。
「メイク道具はいいものを使えよ。特にスキンケアはブランドのものをな。モデルのテンションはそれだけでも上がるから」
口酸っぱく言われたことを今でも覚えている。
お給料が手取り20万くらいだったわたしにとって、シャネルやサンローランなどデパコスを試せるショッピングの時間が楽しくて仕方なかった。
スタイリスト
SODのヘアメイクはスタイリストも兼任し、自社撮影の衣装はすべてメイク部が揃えていた。
監督や助監督と打ち合わせをして、求められる衣装を集めてくるのだ。
社内にある衣装を使うこともあるし、セーラー服や学ランなどないものは、レンタル屋さんで借りる。
特に制服20着とか同じものを数揃えるのは手こずった。
撮影同日に他社でも制服を使う撮影があろうものなら、レンタル屋でとりあい(笑)
衣装集めに数日かかることもあり、1日歩きまわるのもザラ。
おしゃれな私服なら原宿にある衣装屋さん、オフィス系なら恵比寿のお店でレンタルとか、系統によりお店を使い分けていて。
中でもわたしが得意としていたのは超ダサ系の服集め。
ある有名監督は、田舎くさくて芋っぽく”こんなん誰が着るの?”みたいな昭和レトロの洋服が大好きで、わたしの揃えた服にいつも満面の笑みを浮かべていた。
ダサ系のオーダーが入ると、イモ服ハンター魂に火がつくってなもの(笑)
当時中野ブロードウェイ近くにあった、ジャスコ的な地域密着型のお店でイモ服を調達。
厚手の綿パンツに、小学生がしてそうなノンワイヤーの綿ブラジャー、襟元にレースをあしらった白コットンシャツ、謎のキャラクタートレーナーや赤のエナメル靴とか、コーディネートのダサさも重要で。
限られた衣装費の中からいかに監督のイメージするものを揃えられるか?
これがスタイリストの腕の見せどころ。
エロの世界は奥深く、イメージ通りの衣装が揃わないこともある。
そんなときは即席で作ったりなんかもした。
AD
自社撮影ではADの仕事もよくやっていた。
たとえばモデルの”つなぎ”と呼ばれる朝ごはんやおやつの買い出し、お弁当の発注。
チョイスをミスるとモデルのテンションは下がるし、あそこの現場はつなぎがショボイだの陰口を言われてしまうから、これもセンスが問われるわけで。
わたしがつなぎを担当するときは、なるべく新作とかちょい気分が上がりそうなものをいれるようにしてた。
とはいえこれまた低予算内で集めないとだから、けっこう苦労するんだけどね。
あとはギジづくりを手伝うことも。
いわゆる偽物の精子。
ギジには各社オリジナルレシピがあるみたいで、配合とか微妙に異なるけど、基本は卵白とその他の食べ物を混ぜていた。
今はどうなんだろうね。
え?ギジを何に使うのかって?
そりゃAVはファンタジーですから…。
想像におまかせします。
湘南ナンパシリーズの車内ロケでは、スタッフを最小限にして女のみ現場に入れたいという女性監督の希望のもと、ADとしてわたしが駆り出されたこともあった。
指示された任務は、ビデオカメラをもつ監督について照明をあてるというもの。
もちろん照明なんてしなことないし、どうすべきなのかも教えてくれない。
金魚のフンのようにカメラをもって動く監督を追っかけ勘でライトを当てるも、欲しいところに光がきてないときは、鬼の形相をした彼女から容赦ない蹴りが入る。
体育会系の洗礼を受けたことにより、いかにこれまで自分がぬるま湯でぬくぬく育ってきたのか痛感。
現場の様子
ぶっちゃけ初現場は驚きの嵐に、心臓もバクバク。
だって目の前で本当にコトがはじまるんだもん。
やべー!!全部見えてるって!!
もうユーザー目線(笑)
でも人間とは恐ろしいもので、どんな刺激的な光景も慣れてしまう。
数現場をこなした頃には、非日常的な空間に何とも思わなくなった自分がいた。
ただこんなわたしでも憂鬱になる撮影はあったのよね。
それがスカト〇(あえて最後の文字だけぼかしておく)
今は変わっているかもしれないけど、当時3大NGと呼ばれるプレイの1つに入っていたスカ。
まぁこれができるモデルなんてごく一部だし、後に働くプロダクションでもNGにしてたくらいヤバいやつ。
どんなプレイなのか気になる方は個人で調べてみてくださいな。
この現場はとにかく臭いがキツイ。
アレは空気に触れることで凄まじい悪臭をぶちまけるし、撮影後もしばらく残る(涙)
辛かったのはV撮影中、メイクが呼ばれたら顔が歪むほどの香りが充満している現場に飛び込まないといけなかったこと。
使用済みの衣装を回収、処分するのもわたしの役目。
NG現場がなかった上司についたことで、ビデオ化されている撮影はほぼ全て経験した。
退社した理由
入社して1年もすると、どんな風にして撮影が行われ作品になるのかわかるように。
目標は達成した。さてこの先だ。
メイクを学びたいなら本腰いれて上司につけばいい。
より制作に携わりたいならADという道もあっただろう。
かじった程度で判断するのはよくないけど、正直どちらも魅力を感じなかったし、何より自分がこの会社で働き続けることに迷いがあった。
その理由として当時のSODは、メイク部や制作部では上司の言うことが絶対で、意見を出そうものならすごい剣幕で怒られる。
”たぶん” ”いや…”といったワードは禁句。
部下は兵隊アリのように言われたことだけをこなす毎日。
軍隊のような体制の会社に残る意味があるのかわからなかったのだ。
アイデアさえも言えない会社に未来はあるの…?
出した答えはNO
こうしてわたしはSODを退社し、次のワクワクを探しはじめることに。
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