かもめ食堂(2005年)

この映画をみて、あらためて思い出したことがある。
映画も本と一緒なんだな、ということだ。
観るタイミング(本なら読むタイミング)が、あるということ。

 二十歳の頃の私には、テンポが遅く、退屈にしか見えなかった。
この映画は、面白い言い回しも、刺激的な事件もない。
その退屈な(だと思われた)時間を過ごすということを肯定する映画だ。

荻上監督x小林聡美 映画は、大体同じ感じだと聞いていて、今まで見てこなかった。

 今になってみたら、すごく面白かった。
『かもめ食堂』には、ゆっくりと時間を生きることが描かれている。

 ゆっくりでもいい。
自分が想像しているような速度で、生きることは難しい、といわれているようだった。

※※※

 私はひそかに、『かもめ食堂』は、小林聡美が主演を務めているが、映画の後半部分しか出ていない、もたいまさこの映画だと思う。
もたいまさこばかり、みてしまう映画だ。

 もたいまさこが、森でキノコ狩りをするが、ふと見上げた木々たちが素晴らしかった。
そして、私は新宿御苑にある、ものすごく背の高い木々を見上げたくなった。

 今のところ、『パンとスープと猫日和』『かもめ食堂』『めがね』を観たが、『かもめ食堂』が一番面白かった。

 荻上監督作品の面白いところは、同じテーマを描き続けていて、出演者がお馴染みであるところだと思う。

『かもめ食堂』では、小林聡美演じるサチエが、丁寧に生きている人物として描かれ、もたいまさこ演じるマサコが、人生に迷っている人物を演じているが、『めがね』では、それが逆になっている。

あらすじ

サチエ(小林聡美)は、フィンランドの首都ヘルシンキにて「かもめ食堂」という日本食の食堂を開店させる。メインメニューは、おにぎり。

フィンランド人は、客はまったくこない日々が続いていた。そんななか、初めてのお客のトンミ・ヒルトネンに、『ガッチャマンの歌』の歌詞を全部教えて欲しいと頼まれるが、サチエは、思い出せない。

書店のカフェで、日本人のミドリ(片桐はいり)に、声を掛ける。
「旅をしようと世界地図の前で目をつぶり、指した所がフィンランドだった」というミドリと親しくなり、ミドリは、食堂で働くこととなる。

ある日、マサコ(もたいまさこ)が、かもめ食堂を訪れる。

マサコは介護していた両親が亡くなった後、フィンランドまでやってきた。父を介護しているときに、ふと目にしたテレビでフィンランドのエアギター選手権を知り、おおらかな国民性に惹かれてフィンランドに来たという。
空港で荷物を紛失して足止めを受けていたマサコは、荷物が見つかるまでのあいだ、観光をしながらかもめ食堂を手伝うようになる。徐々に客の入りが増え始めて、かもめ食堂は、ついに満席になった。

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監督: 荻上直子
出演:小林聡美 片桐はいり もたいまさこ
2005年/日本/102分

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2019.9.20 Prime Videoにて。

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