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発問をつくろう国会編

公民の授業はつまらない。政治経済の授業はつまらない。国会のしくみに関心を持ってもらうことはできないだろうか。教員向けの実践を提案したい。

01国会は何をするところですか?
政治

これでは展開しにくい。
02国会議員って何人くらいいますか?
500人くらい。教科書見てみよう。載ってる。人数を覚えないといけないですか?

やはり、つまらない。
03大勢の人が集まって何しているのだろう?
話し合い。
500人で?話し合い?
多数決!
少し見えてきた。

04多数決で決めたいことって何だろう?
学校でも決めているよ。生徒総会で。
先生方も職員会議で別に決めている。
会社でも話し合って決めている。

誰かが一人で決めたらいけないから、多数決をしている。一人で決められると、腹が立つ。勝手に決めるな!と怒るから、話し合いと多数決で決めます。国会が特別じゃない。

国会の役割は、予算の議決と法律の制定である。よのなかの不満は、たいてい国会で解決できる。
国がやってくれたらいいのに。
国が禁止してくれたらいいのに。
国が認めてくれたらいいのに。

05社会への不満は何かないですか?

生徒が抱いているよのなかへの不満を集めてみる。紙に書かせてもいい、黒板に書かせてもいい。教員は出された生徒の考えを整理する。

06国か地方か。問題の大きさと関係する人で、どちらが対応すべきかを示す。07費用が必要か。08法律の制定や改廃が必要か。生徒の考え全員分を取り上げるのは、授業時間の制約があるが、1つ選んでしっかり検討したい。09関係法令は何か。10関係省庁はどこか。11現在どれくらいの予算が使われているか。12どんな事業が行われているか。13これまで国は何かしてきたか。

生徒の考える国への不満を、国会の力で解決するにはどうすればいいかを教員が調べて提示する。途中に発問06〜13を生徒に投げかけ、生徒の発言に沿って教員が調べる。教員が授業中に生徒たちの発言を持ち帰り、調べてわかったことを教える。そのクラスのための専用の教材を作るということだ。もちろん、生徒の学力や関心が高ければ、生徒に調べ方を教えて、生徒が自分たちで情報を集めさせる展開もある。

教員はどうやって調べたかと、調べてわかったことを題材に、国会の力で問題を解決する方法を教える。

教科書は説明書だ。
はじめから順に読めば体系的だが、知りたいことから読むのも悪くない。新しく買った家電なら、気になる機能をすぐ使ってみたい。あとでじっくり説明書を読んで、意外な使い方や知らなかった機能を見つけることもある。

洪水対策をしてほしい。
14すぐに?
今年の予算でやることを紹介、費用が足りないなら、補正予算や臨時国会のしくみを取り上げる。
15国に〇〇をさせるには?
新しい役割を国に求めるには、法律の制定が必要で、法案提出から審議、可決成立までの流れを取り上げる。国に何かをさせるということは、国の義務だと定めなければならない。国民に何かをさせる場合も同じだ。義務は強制力を伴うのか。目標なのか。国の持っている強制力を使わせるために国会はある。強制力は使い方を間違うと、取り返しのつかない問題が起きる。だから、慎重な手続きが定められている。国民から強制的に集めたお金を無駄遣いさせないためでもある。多数決をしているのは、単独で決めさせないことがねらいである。二院制も単独で決めさせないしくみであり、議院内閣制も首相の想いだけで決めさせないしくみである。実際に存在する問題を取り上げながら、国会の力で何とかしようとすると、どんな手順が必要かを教える授業展開は、取り扱い説明書を使う機能が書いてあるページから読むようなやり方だ。

もっと授業時間に制約がある場合でも、
実際に制定された法律を紹介したり、法律の制定でどんな問題が解決されたか、国会が役に立った側面を伝えることが重要だ。うまく機能した成功例を取り上げ、国会の持つ力を使えば何ができるかを知ってもらうことを授業のねらいにしたい。

自宅の一部や空き部屋を旅行者に貸す民泊が、訪日外国人旅行者の増加に合わせて増えてきた。2018年に住宅宿泊事業法が施行された。

この法律にも両面がある。
義務と権利

住宅を旅行者に貸すことは、宿泊業と同じではなく、周辺住民とのトラブルや安全や衛生面での問題も生じてきた。貸し手と旅行者それぞれの問題を解決するために、法律が制定された。

制限
民泊を運営するには届出が必要になった
宿泊者数を面積で制限
一年間の営業日数の上限は180日以内

義務
衛生管理や災害時の宿泊者の安全確保
外国人観光客向けの外国語による案内
周辺住民からの苦情への対処

運営者に制限や義務がが課されることで、トラブルを防げる。近隣住民の生活環境を守り、旅行者の安全も守れる。一方、運営の自由度は下がり、旅行者も制限の影響を受ける。貸し手は収益が下がるが、宿泊業との公平性がある程度確保できた側面もある。法律の効果は全方位で、多様な利害関係が調整している。生徒は法律を、禁止や制限という面だけでとらえている場合がある。校則の延長線上に法律を置いている。利害関係を調整し、権利を守る役割は見落とされがちである。国会について学習する際には、この点を押さえておきたい。

国会で可決するのは簡単じゃない
法案は作れても提出するには条件がある
法案を提出できても審議するには条件がある
審議する期間は限られている
審議ができても可決成立させるには条件がある
衆議院と参議院の一致が条件になっている

国会議員の活動は保障されている
国会議員の邪魔はさせない
国会議員の活動を支援する体制がある
審議と議決だけじゃない

制度のしくみを規定から解説するとつまらない。
そういう制度にした理由、意図が大事である。

制度のつくりかたは学習する機会が乏しい。制度は国や政治だけのものではない。企業や組織でも社内の制度を持っている。誰かが作った制度を使っている。学校でも部活動や委員会活動で、届出や許可が必要な場面はある。活動の制限事項もあると思う。何らかの許可を与えたり、権限や裁量を持たせたり、制限したり、役割を分担したり、これは制度である。なぜそんな制度になっているのか、誰のための制度なのか。何も考えず、決まりだからと従う者ばかりでは、よのなかの問題は解決されない。「社会が悪い」は、「制度が悪い」と言い換えられる。社会に参画して、健全な批判をして問題解決を図ろうとする社会人を育てるためには、制度のつくりかた、制度設計と意図を学ばせる必要がある。国会についての学習は、その入口だ。



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