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【一般・初学者向け】ミミズ腫れみたいな術創部は誰のせい?

皆様ごきげんよう!

最近、CPT2021「日本大会3」でウメハラが優勝したのを見聞きして、衝動的に『勝ち続ける意志力』を読み返したbusonぶそんです。初見の方、はじめましてよろしくです。

今回は臨床でよく見る、『いかにも手術痕』みたいな傷口の話。

皆さん(病院勤務の方は特に)疑問に思ったことありません?

これだけ医療が発達して低侵襲が叫ばれる中、『手術後の傷口の見た目』って個人差が大き過ぎちゃいますのん?って。

そんなん傷の長さとか部位、体組成なんかの違いが炎症反応(治癒経過)に影響してるんじゃないの?って声が聞こえてきそうですね。

はい、確かにそれらも一因であるとは思います。でも例えば身近な対象者や身内、知り合いのTKA人工膝関節全置換術術後』なんかを思い浮かべてみて下さい。

先に挙げた『傷の長さ』、『骨格特性』、『体型』とかあんまり関係なく『傷の太さ』がランダムに違くないですか?『糸』みたいに細い傷もあれば『ミミズ腫れ』みたいな太い傷もある…アレって一体何なんですかね?

結論から言えば、やたら太くて主張が強い『ザ・傷痕』みたいな術創部の多くは入院中のリハビリの過程で生まれた医原病みたいなモンです。

まさかの身内の犯行でした、ホントにごめんなさい。自分も新人の頃は普通に加害者でした、正直反省してます。

なので、ここではかつての自分と同じ過ちが繰り返されぬよう主に術後リハビリに従事しているセラピストやトレーナー、これから何らかの手術を経験されるかもしれない皆さんを対象に、傷口悪化の簡単なプロセスや対処方法についてご紹介したいと考えています。

では早速行きましょう!

術後早期の皮膚モビライゼーションって要る?

もう結構前振りで文字数使っちゃってるから手短に。手術後の傷口が大きく広がるように太くなってしまってる最大の原因『早期の皮膚操作』です。

正確には、頻回な傷口離開方向への伸長ストレスによって組織が肥厚し、適切な炎症反応瘢痕化が促されなかった結果として、悪目立ちするブッとい術創部が作られてしまいます。

外傷や手術後に限った話ではありませんが、『医療における治癒の考え方』如何に不要な炎症を防いで必要な炎症を促すかが基本となります。

これは治療行為として運動や徒手的な介入を行う場合、患部の炎症を増悪させないことが大原則になるということです。これは医療従事者であればさほど違和感のない見解だと思います。

ではなぜリハビリにおいて基本ルールを無視した術後早期の謎モビライゼーションがやたらめったら横行しているのかと言えば、多くの初学者が『皮膚の短縮による関節拘縮を予防しなくては!』という誤った使命感を持ってしまうからです。

ある種の職業病のようなものですが、医療者にとって『褥瘡』や『関節拘縮』などの特定のキーワードには過敏性があり、ともすれば適応の評価が不十分なままに一辺倒な『廃用予防』を図ろうとしてしまうことがあります。

セラピストにおける『TKA術後の皮膚モビライゼーション』まさにそれで、漠然と膝屈曲の制限因子っぽいイメージがある皮膚に安易なアプローチを行ってしまいがちなのです。

自分の経験上、皮膚の柔軟性が拘縮の明らかな原因となっていることはほとんどありません。また、仮に問題があったとしても治癒が十分に進んだ後でも改善は可能です。

したがって、臨床においていたずらに傷口の治りを遅らせてしまうような『術後早期の』皮膚モビライゼーションを行う意義は極めて低いと考えられます。

まずは3週間待て、話はそれからだ!

では今度は、患部皮膚の治癒に要する時間やその期間中の具体的な対処方法について説明していきます。

まず時間について、最低でも『術後3週間』は傷口が離開する方向への伸長刺激を極力減らしましょう。

ここで注意すべきは、あくまで傷口の方向を中心に考えるという視点で、多くの場合において『荷重訓練』は問題ないということです。逆に複雑な荷重移動や四肢の屈伸運動によるせん断ズレ力を伴う『歩行練習』は本来あまり望ましくありません。

次に、先程述べた3週間中で患部をどのように刺激すべきかですが……これはシンプルに『皮膚を離開方向と逆』の短縮位にまとめるように内側に摘みましょう。この時、傷口に直接触れないように注意しましょう。

『関節可動域練習』時も同様で、まず皮膚を摘まんで短縮位にたわませてから動かすと『局所のせん断力』を防止しながら血流増加及び治癒の促進を図ることができます。

上記からもわかるように、実は『患部皮膚』の柔軟性においては伸長方向よりも短縮方向への可動性の方が重要なのです。

傷口の見た目もQOL生活の質の一部

いかがだったでしょうか?

何か自分の過去の恥を晒す感覚で心苦しい部分もありましたが、実際病院で中々に酷い具合の手術痕を見るとそれ以上に心が痛むわけです。

何かを知るとその分だけ良くも悪くも想像力が広がってしまい、以前の状態には中々戻ることができません。

そういった意味では、今回の記事は人によっては呪いのような一面もあるかもしれません。ある種、責任の在り処を問うような内容でしたから。

でも少なくても、医療従事者にとっては一考してもらいたいという想いは自分の本心です。意識一つで変わるケアの在り方もあるはずですから。

願わくば、傷口の見た目如何でその人が半ズボンを履けるのか、長ズボンで隠してしまうのか…そんなことも生活・人生の質に関係してくるという想像力を持って対象者に寄り添っていきたいですね。

ここまで読んで頂いてどうもありがとう!

ではまたのノシ




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