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愛だの恋だの結局知恵の前には0

 朝の澄んだ空気に水を差す副流煙。

 深い青から、薄いブルーへ変わる空を見上げ進んでいると、深海から海面に顔を出す潜水艦になった気分だ。ゆっくりと視線を動かし、真っ直ぐ前を向く。いつからそこに立たされているのか分からない年を食った電柱に、縋るようにべったりと落ちた雑巾を見て「ああ、明日は我が身だ」なんて、肩をすくめた。

 それにしても、日の出が5時18分なんて大嘘じゃないか。

 愛されたくて、貴方と一緒にいようと一緒になろうと、そう思っていたのにこれじゃあ、地獄に突き落とした男達に笑われる。いや、これは天罰なのかもしれない。いずれにせよ、朝の空のように恋心は白けた。

 終わりだ終わり、サヨナラだ。

 眠気、月経痛、酔い、そして心臓の痛み。耐え難い苦痛のせいで体が小刻みに震え、今にも倒れてしまいそうだった。だけれど、歩みを止められないのは、女として生きていくと決めたからなのだろう。

 しばらく歩み続けた先で、狗尾草えのころぐさを踏みつけて、虫を啄むスズメの狩りが目に入った。

「こうやって狩りをするんだ」

 また一つ知恵がついてしまった。脳内が煌めく。そんな事ひとつで、先ほどまでの苦悩は和らいだ。結局のところ、私にとって男なんてそんなもんなんだよな。どうだってよくなってきて、私は踵を返し家に帰った。

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