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難民問題を知ろう学ぼう! 「本から学ぶ移民・難民」


こんにちは。認定NPO法人Living in Peace(以下、LIP)です。

難民のことは知りたいけれど、「インターネットの情報は何が正しいのだろう?」「いきなり、人道支援の活動に参加するのは勇気がいる・・・」と、思っている方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

日本や世界の難民について多くの本が出版されていますので、まずは、本を読むことから始めてみてはいかがでしょう!

今回の「難民問題を知ろう学ぼう!」では、世界の難民について・日本で暮らす移民・難民について、読みやすい本から専門的な本まで、LIPのおすすめをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

◆難民問題を知る(入門編)

難民について興味を持ったら、まずは、読んでみていただきたい作品。絵本など、読みやすい本を2冊をご紹介します。

▼なんみんってよばないで。
ケイト ミルナー

難民支援協会推薦。小学校低学年から読める、社会問題を知るための絵本です。ぜひ、お子さんたちとも一緒に読んでみてください。

▼世界の難民をたすける30の方法
滝澤 三郎

世界の難民や避難民の数は、日本の人口の約半分!?難民の方々の実際の声を通じ、難民問題を知ることができる本です。具体的にアクションを起こすための30のヒントが書かれています。


◆難民問題を知る(上級編)

難民問題について本格的に学ぶときにおすすめの本。世界の難民問題については多くの図書がありますが、LIPメンバー選りすぐりの2冊を、メンバーの読書感想付きでご紹介します。

▼外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?
内藤正典

---来るのは「労働力」ではなく「人」なんです。
帯が印象的な一冊です。

移民・難民の定義や置かれている状況、世界各国の移民・難民政策を踏まえ、日本の移民・難民政策の現状、課題について詳しくまとめられています。ポップな装丁、平易な文章、要所に挟まれる写真によって、カジュアルに読める仕様になっていますので、難民問題の大枠を把握するために、ぜひ手に取ってみてください!

●読書感想●
特に印象深かったのは、最終章の「外国人と仲良くなろう」でした。それまでの章とはテイストが異なり、内藤さんご自身の体験を踏まえたエッセイ調で話が展開されています。

例えば、「正しい発音」について。私自身もそうですが、日本では英語の勉強をする時、ネイティブな発音にこだわる傾向がある様に思います。「発音が良くないから、自信を持って喋れない…」と、思う人は少なくないですよね。

この固定概念こそが、私たち自身の首をしめ、さらには日本で暮らす外国人の方々を苦しめることに繋がるのではないでしょうか?言葉や行動が正しいのか/間違っているのか、上手なのか/下手なのか、という二元論で考えるのではなく、この人の言いたいことはこういうことなのかな?と察するコミュニケーションこそ、異なる文化から集まった人々が共生するために、必要なのだと改めて考えさせられました。

著者は、中東の国際関係、特にヨーロッパにおけるムスリム移民の研究者で、本著のほかにも『となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』『イスラームからヨーロッパをみる 社会の深層で何が起きているのか』などがあり、イスラム文化に関する理解を深めたい方には、あわせて読んでいただきたい著作となっています。

▼難民を知るための基礎知識-政治と人権の葛藤を越えて
滝澤 三郎 (著, 編集), 山田 満 (著, 編集), 佐藤 滋之 (著), 佐原 彩子 (著), 橋本 直子 (著), 堀江 正伸 (著), 人見 泰弘 (著) ほか

難民について、法律学・政治学・経済学・社会学など、いくつかの異なる分野から問題を解説。世界の難民の現状と取り組みがわかりやすく、支援の在り方を模索できる一冊です。

●読書感想●
かなり難解でしたが、一冊読み切ると、様々な視点で難民問題を知ることができた満足感があります。

例えば、国際社会学者である人見氏の論考「難民受け入れとジェンダー-ジェンダー規範への挑戦・強化・再生産」には、この様な記述があります。

「国境を超えて他国に移住する難民は、出身国と受け入れ国で異なるジェンダー規範や実践に直面する」(同作,第4部,第15章)

出身国では、社会的地位や就労経験を得ることが難しかった女性が、移住先の国で生計を立てるために男性と同様に就労し、収入や技術を獲得する事で、家庭内での権威を高め、自己に対する自信を深めることができるケースがあるそうです。

一方で、男性は公的役割の喪失や社会的地位の低下を経験し、男性性を誇示することができず家庭やコミュニティでの地位を失ってしまう、とのこと。彼らは移住先で適応していくための文化受容・関係構築をする反面、出身国の規範が染み込んでいる家庭内の関係の再構築にも直面するのです。

難民にまつわる問題の中にも様々な社会構造・課題が交差していることを示唆してくれる一節であり、新たな社会規範・文化が形成されていくことの興味深さを実感しました。

◆日本社会と移民・難民について知る

難民問題は対岸の火事ではなく、自国の課題です。

移民・難民の受け入れについて、日本はどのような社会なのでしょうか?また、どのような社会であるべきなのでしょうか?論者の意見をまとめた図書から、当事者の記録まで幅広くご紹介します。

▼開かれた移民社会へ
宮島 喬 (編集), 藤巻 秀樹 (編集), 石原 進 (編集), 鈴木 江理子 (編集)

19年4月に改訂された入管法。「外国人が、権利を守られ、整った条件で、安心し、活力をもって働けることにつながっているだろうか?」
外国人労働者受け入れについて動き出した日本について、多様な論者が、多角的に日本の現状を論じた内容をまとめた本です。

▼日本と出会った難民たち――生き抜くチカラ、支えるチカラ
根本かおる

難民援助の最前線で支援活動を経験した著者による、日本で生きる難民たちの姿や、それを周囲で支える日本人たちの姿にフォーカスした一冊です。

▼ふるさとって呼んでもいいですか:6歳で「移民」になった私の物語
ナディ

6歳で来日したイラン生まれの少女ナディさん。日本という異文化に投げ込まれ、生きていく過程を、当事者目線で書いた著書です。


◆移民・難民と教育について知る

2019年、紛争や迫害によって移動を強いられた人は、7,950万人。そのうち、18歳未満の子どもは、推定3,000万~3,400万人と言われています。(UNHCRホームページより

選ぶ権利もなく、異国で始まる生活。子どもたちにとって、どこにいても教育が受けられることは欠かせない権利ではないでしょうか?移民・難民と未来を背負う子どもたちの教育について、現状や課題を知ることができる本を3冊ご紹介します。

▼にほんでいきる――外国からきた子どもたち
毎日新聞取材班

外国人労働者の受け入れが拡大される中、日本で暮らす外国ルーツの子どもたちの中には、就学不明の子が約2万人います。子どもたちの『教育を受ける権利』について考える一冊です。

LIPでも、読書会を行い、日本で暮らす外国ルーツの子どもたちについて理解を深めました

▼〈超・多国籍学校〉は今日もにぎやか!――多文化共生って何だろう
菊池 聡

とある横浜の公立小学校では、国際教室を中心に多様性を尊重した学校づくりが行われています。国際教室を、長年担当してきた著者自ら語る多文化共生教育の実践と、日本語教育を含めた外国ルーツの子どもたちの教育について。

▼移民から教育を考える
額賀 美紗子, 芝野 淳一, 三浦 綾希子

日本で暮らす移民の子どもたちと教育について、網羅的かつ体系的に書かれた本格的な一冊ですので全体像を学びたい方にはおすすめです。子どもたちの困っていること、学校や地域のあるべき姿など知って考えるきっかけにぜひ。

今回は、難民と社会についての図書を紹介しましたが、難民について知るには、彼らの出身国で起きている状況やそれぞれの異文化理解も欠かせません。また、他国の事例について知ることも、必要となるでしょう。

おすすめ図書については、ひきつづき、ご紹介していきますのでぜひ一緒に理解を深めていきましょう!

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執筆:星島・宮本(Living in Peace)

※本記事は、『難民問題を学べる書籍』 LIPカルチャー部 presents ★今月イチオシの作品を再編集したものです。

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