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こどもの育ちを地域で支えぬく! いま本当に必要な「つながり」とは?

認定NPO法人Living in Peaceは2022年3月26日(土)、「にしなり★つながりの家」設立を目指すクラウドファンディング『「おかえり」でつながり合える地域の実家を!西成こども食堂の挑戦』の協賛企画として、オンラインイベントを開催しました。

Living in Peaceは、2019年3月、「困難な家庭環境にあるこどもの育ちを地域で支えるために何が必要か」を模索するなかで、本クラウドファンディングの主催者である川辺康子さんと出会いました。

大阪・西成で、こども食堂を中心に、識字教室、家庭支援等を続けてきた川辺さんが考えていたこと。それは、断片的な支援を重ねることの限界と、こどもの生活を地域で丸ごと支えることの重要性、そしてそこにおける「つながり」の意味でした。

それ以来、Living in Peaceが川辺さんとともに実現を目指してきた「にしなり★つながりの家」は、既存の支援の枠組みを超えて、目の前のこどもたちが必要としていることを”やりきる”ための地域包括的支援拠点です。

イベントには、「こどもの育ちを支えるつながり」をテーマに、当事者、実践者、研究者という異なる立場から4人のゲストが参加!

登壇いただいたのは、川辺さんのほか、依存症当事者でもある渡邊洋次郎さん、東京・新宿で親子の支援を実践している藤田琴子さん、川辺さんの活動を取材されてきた村上靖彦さん。


イベント前半では、登壇者それぞれからテーマにそってお話しいただきました。今回の記事では、その様子を一部抜粋してお届けします!

【登壇者(50音順)】
川辺康子さん(西成チャイルド・ケア・センター
藤田琴子さん(いちほの会/青草の原)
村上靖彦さん(大阪大学)
渡邊洋次郎さん(リカバリハウスいちご

「にしなり★つながりの家」とは? (川辺康子さん)

川辺:2012年に大阪市西成区で「にしなり☆こども食堂」を立ち上げました。

こどもやその親と関わるなかで分かったのが、こどもだけが困っているのではないこと。こどもの背景に家庭のしんどさがあり、親子をいっしょに支えることの必要性を痛感しています。

川辺康子さん(西成チャイルド・ケア・センター)

食堂を立ち上げてから10年間、こどもやお母さんと関わる中で、自分にできることをやってきました。でも私と親子だけの関わりでは、親子の地域での孤立は解消されない。

必要なのは、みんなで支えあっていける居場所なんだと、気づかされました。

地域の人も集まれる場として「にしなり★つながりの家」をオープンし、それぞれが誰かの力になれる場所にしていきたいです。

思いをクラウドファンディングのページにまとめています。ぜひご一読いただければ幸いです。

つながりのなかで育つ、生きることの意味 (渡邊洋次郎さん)

渡邊:依存症の人を支援する仕事をしています。私自身も、アルコールと薬物の依存症当事者です。

渡邊洋次郎さん(リカバリハウスいちご)

幼少期から、保育所でも学校でも家庭でも、どこにいても自分が自分でいていい感じがありませんでした。小学生のころは虫を食べてバカを演じたり、中学生のころは不良してシンナーを吸ったり、18歳からは水商売を始めて、お酒や異性関係に依存したり。

強い自分にならんといかん、勝つことでしか生き残られへん、という思いでいました。

お酒や薬物をやめるための、自助グループとの出会いがありました。同じような依存をもつ人が集まる場です。

そこでは仲間が、条件を付けずに受け入れてくれた。集まっている人たちは、前科があったり、家族や仕事を失っていたり、経歴はさまざま。自分が自分を開いていくことで、仲間という感覚をもらえました。それまで出しようのなかった気持ちを出し、生きていけるかもしれないと感じたのです。

こどもたちにも、自分が自分でいられる居場所、条件抜きに受け入れてもらえる場所が大事です。

渡邊さんのご経験について、詳しくは渡邊さんのご著書をご覧ください

親を支えること、制度のはざまをうめること (藤田琴子さん)

藤田:母子生活支援施設で母子支援員として働いています。

支援内容は、入所している母子に必要なこと、全て。お部屋の片付けや料理など生活のサポートから、法的な手続きのお手伝い、就労支援や学童保育なども行っています。 

藤田琴子さん(いちほの会/青草の原)

お母さんをケアすることが、こどもをケアすることにダイレクトにつながる実感があります。お母さんに対して、「母親として」ではなく「人として」関わることが必要。

お母さんたちも、自分が自分でいられない感覚を抱えています。日常を積み重ねるなかで、「あなたと関わりたい」というメッセージを伝えたいです。

施設ではサポートできないニーズに応えるため、2021年秋に「れもんハウス」という場所を開きました。親がこどもを預けて休憩したり、こどもが気軽に家族と距離をおいたり、ほかにも自由に使えるオープンな一軒家。

れもんハウスは、なにをしていてもいい場所。

誰でも来られて、お泊まりをしたり、やりたいことに挑戦できる場所です。

川辺さんの実践と目指すものの意義 (村上靖彦さん)

村上:川辺さんとは8年前に知り合って以来、取材を続けています。

川辺さんは、2021年10月から「滞在型親子支援」をされています。マンションを借りての住み込み型の支援で、「にしなり★つながりの家」の前身にあたる実践。実践から見えてきた滞在型支援の意義がいくつかあります。

村上靖彦さん(大阪大学)

ひとつは、親と子のニーズに応えられること。それぞれのニーズに沿った個別のサポートも連続したサポートもできます。一時保護を避けて親子を分離せずサポートできる、ということも重要です。虐待のリスクを減らしながら、生活全体のなかで親子の関係修復ができます。

親子が必要とする支援は、生活支援や送迎などから心理的支援まで、多岐にわたります。生活全体に関わるということは、従来は分断されがちだった支援を、パッケージ化して組み込むことも可能にします。

さまざまな支援が「にしなり★つながりの家」を起点にすることで、地域全体のネットワークをつくることにつながります。親子が地域のネットワークに位置づけられやすくなるほか、地域の子育て支援のハブになることもできるでしょう。

村上さんのご著書では、川辺さんの取り組みが詳しく紹介されています

異なる領域でありながらも共通すること

今回のイベントは、村上さんが川辺さん・渡邊さんと親しくされている以外は、みな初顔合わせ。

しかし普段、異なる地域、異なる領域で活動されていながらも、それぞれのお話は、親子をともに支える必要性や、「自分が自分でいられる居場所」の役割について、不思議なくらい通じ合うものがありました。

イベント後半では、そうした共通点をもとに4名でディスカッションを行いました。詳しくは後編記事をご覧ください!


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