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子どもたちに「遊具」を!コロナ緊急支援を通して考える児童養護施設への効果的支援のありかた(後編)

新型コロナウイルス感染症の感染拡大が広まるなか、社会におけるさまざまな場所で多様な困りごとが発生しています。

そしてそれは、わたしたち認定NPO法人Living in Peace(以下、LIP)が支援をおこなっている児童養護施設(親と暮らすことのできない子どもたちが生活する、児童福祉施設)も例外ではありません。

そうした困りごとにともない、Living in Peaceは5月、国内2個所の児童養護施設を対象とした「遊具」の寄贈支援を実施しました!

後編(前編の記事はコチラ)では、支援の具体的な内容、施設の職員さんや子どもたちからいただいた声を紹介します!

執筆:村瀬彩萌(Living in Peace)

◆施設の特性に合わせた支援を

―前編では職員さんにうまく子どもたちを巻き込んでもらい、子どもたちの要望を反映している遊具を贈ることにしたとありました。Living in Peaceからは、意見を出さなかったのでしょうか?

今回の緊急支援の目的を以下の3点に定め、それに沿うかたちで施設側に選んでいただくことにしました。

1 コロナ対策によって増加した職員さんの負担を軽減することで、養育環境を維持する
2 休校によって生じた時間を有効活用するとともに、子どもたちのストレスを減らすことで、トラブルを減少させる
3 職員さんや異年齢の子どもたち同士のコミュニケ―ション活性化を図る機会創出に寄与する

前編で述べた通り、LIPの視点で選んだものを一方的に提供するのではなく、子どもたち自身に、今の状況をどう改善したいか、そのために何が必要かを考えてもらう時間を時間を作ってもらいたいという私たちの考えと上記の3つの目的をお伝えして施設の皆様にもご理解いただき、職員さんサポ―トのもと、子どもたちの声を拾っていただきました。

結果的に施設の職員さんからも、「他団体の支援含めて支援物資が決まっていることが殆どだったけれど、本支援は、施設側の意図を汲んでもらえてとても嬉しかった」という大変ありがたいお声もいただきました。

―子どもたちにとっても、また施設の職員さんにとっても貴重な機会となったのですね。具体的にはどのようなニ―ズが出てきたのでしょうか。

支援先である筑波愛児園とクリスマスヴィレッジでは施設の特性が異なるため、遊具のニ―ズもそれぞれでした。

まず筑波愛児園は、茨城県つくば市にあり園庭が広いので、外で遊べるものが良いということでした。くわえて、「自粛期間中は学校に行けず身体を動かす機会が減ってしまっており、また各お部屋で遊ぶおもちゃは揃ってきたので、一つの遊具に予算を集中してもらえると嬉しい」という意見をいただいたため、バスケットゴ―ルを支援することになりました。

一方で、クリスマスヴィレッジは東京都足立区にあります。園庭が狭く道路に面しており、外で遊ぶのが難しいため、お部屋の中で遊べるものが良いという要望でした。また子どもたちは、感染拡大を防ぐためにお部屋の行き来ができない状況だったので、各お部屋で遊具の希望を募ってもらうことになったんです。

お部屋ごとに子どもたちの性別・学齢が異なるため、その要望も様々でした。たとえば、未就学児の女の子のお部屋では創造性を育むための知育玩具、中高生の女の子のお部屋では、共感性や感受性、子どもたち同士で譲り合いの心を育むためのポ―タブルDVDプレ―ヤ―や、調理への関心を高める目的でハンドミキサ―とレシピ本。

男の子のお部屋では、コミュニケ―ション能力の向上を狙ったカ―ドゲ―ムや、ストレス発散と運動不足解消を目的としたバランスボ―ドなどです。

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◆支援後の変化

―子どもたちの要望ならではの物品ですね。理由も把握されており、時間が限られた中でも丁寧に現場のニ―ズをくみあげられていたことが伝わっています。支援後に、子どもたちにはどのような変化がみられましたか?

本支援はすべて寄付で成り立っているため、毎月のニュ―スレタ―という形で寄付者に寄付内容と効果をご報告する目的で、支援の目的に沿って各施設へ支援後の評価をお願いしました。

遊具提供後の声を目的に沿って振り返ると、職員さんと子どもたちでそれぞれ以下のようなものがありました。

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本支援ではコロナ禍で負担が増加していた職員さんが過度に介入せずとも子どもたちが落ち着いて過ごすことができるようにする狙いもあったため、支援した遊具によって職員さんの負担軽減と子どもたちのトラブルが減少した様子が見受けられ安堵しました。

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職員さんからの意見だけでなく、子どもたちからも自身のストレスに気づき、またそのトラブルが減ったという声が挙がったことはとても嬉しい成果でした。

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こうした感想をみてみると、遊具によって、集団としての満足度を高める効果があるものと、個人の満足度を高めるものがあったことが分かります。

いわれてみると当たり前なことですが、たとえばDVDプレ―ヤ―は、見ている間に子どもたちは落ち着いて過ごすことができますが、一人もしくは少人数で観賞することが多いので、異年齢の交流を促すことはできません。

一方でカ―ドゲ―ムなどは、ご飯終わりにお部屋のみんなで遊ぶきっかけとなり、DVDプレイヤーとは別のかたちでストレス発散に貢献していることがわかります。

―仮説以外にも、いろいろな気付きや効果があったのですね。

そうですね。また上記の以外にも、いくつか新たな気づきがありました。二つ挙げるとすると、内容やテ―マを工夫すると遊具をきっかけに学びの場を提供することができること、そして遊具を通して「子ども達の集まる場所作り」ができるということです。

今回、『コウノドリ』のDVDをお送りしたお部屋の先生からの声によると、妊娠、出産、育児、中絶、流産、家族(両親)のことなど、施設の子供たちにとって、職員さんが性教育することはとても難しく、どこまで伝えてよいものか悩む時があるとのことでしたが、DVD鑑賞を通して自然と本テ―マに関連する会話に繋がったということでした。

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DVDを有効活用することで、子どもたちに伝えたいメッセ―ジを届けられるということ、また性教育の難しさという施設特有の悩みを知れたことも、私たちにとって重要な学びでした。

二点目について、筑波愛児園の先生からバスケットゴ―ルが「子ども達の集まる場所」となっているという声をいただき、私たちにとって嬉しい驚きでした。

特に、卒園生もバスケットボ―ルをするために施設に遊びに来ており、子ども達が施設と繋がり続ける一助にもなっている点は大きな学びでした。

~職員さんの声~
 寄付による変化はやっぱり「場所」がまたできたという事だと思います。愛児園という「場所・実家」的な存在の中に、さらに小さな「場所」が出来たと思っています。バスケットゴ―ルが出来てからは、まず天気が良くて、グランドが大丈夫であれば、バスケをしている姿を見ます。
 新型コロナウイルス感染症蔓延防止の対策が少し落ち着き、友達が遊びに来て園庭でバスケをする姿も見られました。また卒園生が遊びに来れるようになったので、在園児と一緒にバスケをしている姿を見た時はとても微笑ましかったです。そのような「場所」がまた出来た事はとても良かったと思いました。 

筑波愛児園で過ごす子ども達にとって、バスケットゴ―ルがある生活が当たり前だったので、バスケットゴ―ルが壊れてからはずっと欲しいと要望されていたと伺ってはいましたが、子ども達にとっての遊具の存在の大きさに改めて気づかされました。

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―本支援で得た学びを今後の活動に活かしていきたいですね。

現在コロナで休止しているキャリアプログラム(おしごとリップ*)にも、遊具を用いた、異年齢の子どもたち同士のコミュニケ―ションを促せるような取り組みを考えていければと思っています。

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また今回の意見交換をきっかけに現場の声に丁寧に耳を傾け、当事者の声を最大限尊重することの大切さを再認識することができたので、おしごとリップに限らず、今後も日々変化する施設状況の理解とLIPとしての支援意義や想いの擦り合わせをおこない、より良い支援の形を模索していきたいと思います。

―ありがとうございました!

※コロナ感染防止のため、本年4月からの「おしごとリップ」は延期の措置をとっております。状況を鑑みながらではございますが、現時点では10月からの再開を目指しております

―お知らせ―

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