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「ここが私の出番だ!」と思える時が、きっとやってくる - LIPの今と昔を語る会レポート

「働きながら、社会を変える。」を合言葉に、発足から10年以上、専業従業員を雇わずにプロボノメンバーのみで運営を続けてきた認定NPO法人 Living in Peace(以下、LIP)。

この10年で活動メンバーは100人(こどもプロジェクトは50人)、継続寄付プログラムChance Makerの登録者数は600名を超え、おかげさまで組織として安定的に活動することができるようになりました。

しかし組織が安定した一方で、社会的養護のあり方が大きく変わりはじめている現在、私たちは組織のあり方を改めて問い直すべき時を迎えています。

そこで2019年 10月20日、活動歴のそれぞれ異なる有志メンバーが集まり、「Living in Peace こどもプロジェクトの今と昔を語る会」を開催しました! 

このnoteでは、その様子の一部をお届けしたいと思います。

当時は「子ども支援の秘密結社」みたいだった

当日、メインスピーカーを担当したのは、現在LIPの監事をつとめる飯田一弘(活動期間 2010 - 2015)、代表の中里晋三(2012- 現在)、そして法人営業を担当している池谷真祐子(2018 -  現在)の3名。

話題はまず、こどもプロジェクト立ち上げ期を知る飯田のエピソードトークからはじまりました。活動初期は「とにかく困難な環境下にある子どものために何かしたい!」という思いだけが先行し、激しいぶつかり合いが繰り広げられていたと飯田はいいます。

飯田:初期の頃は、みんなが熱い思いを持っている一方で、何をするかが決まっていない、すごいチグハグな状況だったんですよ。そのせいか、いつもミーティングには、「やり場のない怒り」みたいなものが満ちていた。議論を延々と続けているけれども、何も決まらないみたいな。生産性が高い感じではなかったなぁ。

現在は600名を超える方々に支えられている寄付プログラム「Chance Maker」も、その仕組みが整い、導入が決まるまでには多くの苦労がありました。Living in Peace 子どもプロジェクトは、ほぼ全員が社会的養護に対して素人。そのため、最初は適切な支援のあり方が見つからず、なかなか本格的に動き出すことができなかったのです。

まだ新人だったその当時の印象を、現在代表をつとめる中里は次のように語ります。

中里:あの頃はメンバーも「はぐれ者感」がある人が多かったですもんね。オフィスもないので、ボロボロのビルの一室を借りて集まっていて、なんだか「子ども支援を目論む秘密結社」みたいな感じだった(笑)。常に張り詰めた雰囲気があって、僕がはじめてPowerPointでアイデアをプレゼンした時も、「話が長い」「資料がダメ」ってボコボコにされたのをよく覚えてます。でも、その緊張感が魅力でしたね。

しかし、「継続寄付者を募り、寄付金の価値を最大限まで高めたうえで児童養護施設の建て替え支援を行う」というChance Maker の仕組みが形になってからは、寄付者を募ることに全員の意識が向かい、組織がうまく回るようになっていきました。

それ以降も組織は順調に拡大し、2018年には兜町オフィスが完成。毎週末にオフィスに集まってミーティングを行うという現在のスタイルが定着しました。

「ここが私の出番だ!」と思える時が、必ずくる

一方で、組織やオフィスが整い、活動が安定したがゆえに抱えている課題もあると語るのが、法人営業を担当している池谷です。

池谷:現在は組織としての体制が整い、かなり活動がしやすくなりました。メンバー間の連絡もメールからSlackに移行し、タスクベースで合理的に生産性を高めていこうという雰囲気が強くある。一方で、どうしてもモチベーションが比較的高いメンバーにばかりタスクが偏ってしまうという問題が生じています。それに、団体としての歴史が長くなった分、新しく入ったメンバーが歴の長いメンバーに萎縮して、積極的に動くことを遠慮してしまっているという側面もあります。

池谷:こうした状況が続くと、多くのタスクを担当しているメンバーが本業や家庭の都合などで急に活動できなくなった時などに、業務が進行できなくなる可能性がある。こうした問題は解決していく必要があると思うんです。

LIPはメンバー全員が本業を持ちながらプロボノとして参加するというスタイルを採用しているため、メンバーに給料は支払われていません。

そのため、いただいた寄付金のほとんどを支援先のために活用することができるメリットがある一方で、「給料分の仕事」という概念がないため、それぞれのタスク量はどうしても各メンバーのモチベーションに左右されてしまいます。

そうした現在の課題に対し、飯田は「今は活動に乗り切れていないメンバーにも、どこかのタイミングで自身のスキルを発揮し、活躍できる時がやってくる」と述べます。

飯田:まだ Chance Maker の仕組みができる前、見当違いの事業提案を児童養護施設に持ち込んで、職員さんに非常に迷惑をかけてしまったことがあったんですよ。提案が全て白紙に戻って、他のメンバーは意気消沈していた。でも、僕は逆に「事業がフラットになった今こそ、俺の頑張るタイミンングだ!」と思ってモチベーションが上がったんですよ。同じように、今は何をしたら良いのかわからなかったり、モヤモヤしていたりしているメンバーも、必ずどこかで「ここが出番だ!」って時がやってくると思います。そういうタイミングを見計らい、お互いにサポートしあいながら活動する必要があるんじゃないでしょうか。

この飯田の意見を聞いて口を開いたのが、オーディエンスとして話を聞いていた仮入会メンバーの井上です(LIPこどもプロジェクトでは、正会員になる前に3ヶ月の仮入会期間が設けられています)。

井上:正直、僕も最初は「給料が発生するわけじゃないのに、モチベーションを高く保つなんてできるのかな?」という半信半疑の気持ちでした。でも、今は違うんですよね。僕が所属している「里親子チーム」は、今後の社会的養護における里親養育の重要性を認識する中で立ち上がった、比較的新しいチームです。いわば事業を新しく作っている段階なので、個人に求められている役割が大きい。「僕にもできることがある」と思いながら活動しているうちに、自然とモチベーションが高くなっていたんです。

そうした井上の意見を受け、他のメンバーからも「実は私も最初からやりがいを強く感じていたわけではなかった」「自分の出番だと感じたタイミングはあの時だった」といった声が次々とあがる展開に。

メインスピーカーである池谷も、自身のモチベーション原点を振り返って次のように語りました。

池谷:私もモチベーションが高まったきっかけは、キャリアセッション事業の人手が不足して、「お願い池谷さん! 手伝って!」とお願いされた時でした。あの時、すごく「自分が求められている」というのを感じることができた。もしアレが、担当者としてタスクを振る感じの依頼だったら、こんなにやりがいを持てなかったんじゃないかなって思います。合理性だけではない部分も大切にしていきたいですよね。

モチベーショントークはそれ以降も止まらず、中には「私がこれまでモチベーションを保ってこれたのは、◯◯さんがいてくれたおかげ」といったように、他のメンバーに感謝を述べるメンバーも!

普段聞くことのないメンバーたちの思いを聞くことができる貴重な機会となり、和やかな雰囲気のまま会は終了しました。

Living in Peace は、一緒に活動する仲間を募集しています!

組織を新しく立ち上げる際には、必然的に全ての業務に対して「これは何のためにする業務なのか」を問う必要が生じます。一方で組織が成熟していくと、どうしても既存の業務を回すだけの運営に偏りがちです。

そう前提をおいたうえで、飯田は最後に今後のLIPについて次のようにまとめました。

飯田:今の「こどもプロジェクト」は、組織としての成熟期を迎えている一方で、社会的養護のあり方が変化してきたことを踏まえ、新しく事業を立ち上げて動かしていかなければならない時期も同時に迎えています。これまでの蓄積を活かしながら、どのメンバーも高いモチベーションでコミットできるような環境を維持しつつ活動していきたいですね。

飯田のまとめにもあるように、2016年の児童福祉法改正や、2017年に発表された「新しい社会的養育ビジョン」などを受け、日本の社会的養護は今まさに大きな転換期を迎えています。

Living in Peaceこどもプロジェクトはそれらを踏まえ、これまでにフォーラムの開催や、子どもだけでなく親の回復を目的としたクラウドファンディングを実施するなど、様々な取り組みをおこなってきました。

そしてこれから、Living in Peace こどもプロジェクトは、さらに活動の幅を広げていきたいと考えています。

こうした私たちの活動に興味を持ってくださった方は、ぜひ一度、毎週末に開催しているミーティング見学にお越しください! 一緒に、働きながら社会を変えていきましょう!

執筆 撮影:大沼楽(Living in Peace)

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