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秋の列車旅とドモドッソラ|旅の回想

もうだいぶ前の話になるが、ちょうどこの時期にドイツからイタリア・ミラノの夫実家へ子どもたちと電車で行ったことがあった。

ちょうど学校の秋休み、夫は出張で1週間留守にするという。これまでは車でしか行ったことがなかったミラノ。みんな自分の荷物は自分で持てるようになったし、たまには電車旅もいいじゃないかと思ったわけだ。

向かい合わせの4人がけテーブル席を予約し、おにぎりやおやつ、トランプや本を用意して乗り込んだ。うっすらとかかる靄を通り抜けて届く穏やかな秋の光が、落ち葉のじゅうたんを照らす。いい旅だ。


さて、このルートはドイツ内で1回、スイスで1回乗り換えがあった。
と書くと何やら「フラグが立つ」ようだが、予想に反してどちらの乗り換えもうまくいった。あとは乗っていればミラノまで行ける。

と思わせて、やはりそうはならないのが旅の醍醐味である。

検札に来た車掌がボソッと「これは途中のブリーク止まりとなります。ホーム向かいの電車に乗り換えてください」と言った。
乗客がざわつく。「ブリークってどこよ」「乗り換える電車はミラノまで行くのかしら?」「いや、もう一度乗り換えると聞いたが…」
一斉に車内アナウンスをしてくれればいいのに、相次ぐ又聞きで情報が錯綜している。
当時はいわゆるガラケーを使っていて、自分たちが今どこにいるのかすら調べることができなかった。

ともあれ、電車はブリークに到着し、そこで乗客は全員降ろされる。
ミラノ中央駅まで迎えに来てくれるはずの義父に、列車の変更があって到着が遅れるかもしれない旨を知らせると、なんと、もう駅にいるという。いや早いですって。笑

そうこうしているうちに、車掌の言った通り、電車がやってきた。
念のため駅員に聞き、ちゃんとミラノまで行くことを確認する。

列車は空いていた。よし、あとはミラノに着くのを待つだけだ。
すっかりリラックスしていると、30分もしないうちに車内アナウンスが入った。

「ドモドッソラー、ドモドッソラーー、終点になります」

ドモドッソラ?終点?!それにしてもなんだかよい知らせはもたらされなさそうな語感だ。

急いで荷物をまとめて電車を降りた。
ちなみに、ドモドッソラはスイスとイタリアの国境近くの山あいの町。心なしか遠回りしている気がする。

しばらくして「ミラノ行きの電車、あと10分ほどでまいります」とアナウンスがあった。往々にしてあるように10分経っても15分経っても電車はやって来ない。情報がないまま1時間近くが過ぎた。4人で退屈しのぎに始めたしりとりにもさすがに飽きる。

と、待望のアナウンスが!
「ミラノ行き、あと25分ほどで参ります」
あたりからほっとしたような半ばあきれたような、行き場のない「あぁぁぁ」という声が上がる。
ところでこのアナウンスはイタリア語のみ。
ドイツ人と思われる女性が、イタリア語を解するとみえる中国人らしき二人組に「今なんて言ったんでしょうか」と英語で質問している。カオス。
そして二人組「フィフティーン!」
いやいや、25分だってば。もうなんでもありだ。


さて、ここからの展開もまたひねりが効いている。
25分経っても電車が来ない、ではないのだ。
なんと……2分後に電車到着!なんでもありだ。(再掲)
ホームを渡ってわいわいトイレに行った人たちは、気の毒なことに間に合わなかった。
「ドモドッソラ」の名は彼らの脳裏にずっと影を残すだろう。(実際は穏やかな雰囲気のよいところです)

そこからはさすがに乗り換えさせられることはなかったが、結局ミラノには予定時刻から1時間以上遅れての到着となった。まあドイツ鉄道のいろいろを思えばこのぐらいはなんでもない。

おそらく一番疲れたのは予定の1時間前には駅に着き、都合2時間待つことになった義父だっただろう。


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