御所散歩と心地よい重さの幸せ
寒気が緩んで久々にプラスの気温になったが、これからクリスマスまではぐずついたお天気が続くらしい。
穏やかな晴れの日が多かった京都滞在の話に少し戻りたい。
その日は京都御所に赴いた。
入口で手荷物検査を受け、入門証を首からかけて順路に沿って進む。
入ったところからすでに時間の流れがゆっくりになるような、そしていつもの世界から少しずれるような感覚があった。
雰囲気にまったく不釣り合いな入門証のひもの鮮やかなピンクが現実につなぎとめてくれている。笑
ここではからすの鳴き声からして優麗に聞こえる。
「アァー、アァー」というまさしくへんいちさんのお好みのカラスだ。
人も少なく、ゆっくり散策することができた。
ところどころに案内板や注意書きを持って立っていらっしゃる職員のうちのおひとりと、
「いいお天気ですね」
「そうですね、このところお天気に恵まれていますね。どうぞごゆっくりなさってください」
などと言葉を交わすのも、またいいものだった。
さてゆっくりと散策して御所を出たあと、近くのもうひとつの目当ての場所に向かった。
むしろこちらのほうが御所方面へ出向いた目的だったりもする。
私はこちらのお菓子「味噌松風」が大好物。
といっても、最後にいただいたのはもう30年近く前のことになる。
東京の当時の職場に京都からのお客さまがよく持ってきてくださった。
2015年に家族で京都を訪れたときにはあまりの暑さにあまり出歩けずに諦めた。
今回、やっと訪れることができてうれしい。
からからと引き戸を開けると、土間風のタイルの床のすぐ向こうに小上がりがある。
ショーケースのようなものはなく、旧い家の茶の間的に和んだ空間だ。
壁際には昔の行李や道具などが置かれている。
「味噌松風をひとつお願いします」と言うと、奥に入って一箱を手に戻っていらした。
売り切れることも多く、予約しておくのが確実とのことだったが、運よくいただけた。
ぽかぽかと温かい日差しの中で帰りのバスを待つ。
手には心地よい重さの味噌松風。900円で買える幸せな時間だ。
味噌風味の素朴な味わいのお菓子。
カステラよりももちっとした食感で、ほんのり香る白味噌と胡麻になんとも和む。
30年前にいただいたときに比べ、もちもち感も甘さも増しているように感じたが、伝統の製法を守り作られ続けているとのことだから、私の印象のほうが変わったのだろう。(おいしさに変わりはないです)
この魅惑の艶と色合いは、いま携帯電話のロック画面を飾っている。笑
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