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世界が退屈で仕方ない女の子たちへ #冒頭部
Ⅰ
あの女は決してわたしを裏切らない。おそらく名前なんかなくても女を信じていただろう。夜、黄昏、公園、ブランコ、信号、道路、小さな部屋。夏の暑さ、うだるようで気怠い日差し。酷く陳腐な二人の虚ろな眼差し。街燈。
医師は優しく女の言葉を促す。さあ、話してみて……。女は声を浴び背を曲げておずおずと話し始める、私はこの前、火事で周りが騒いでいる時、あ
世界が退屈で仕方ない女の子たちへ #一部抜粋
十七歳の時、彼女は初めて膜をみた。本当にこれが存在するのか、果たして彼女自身が発している境界なのか、エリには見当もつかなかった。愚かな彼女はそれを自分だけが受け取ったサインだと考えていた、そして膜に触れた後、自分の手を嗅いでみた、薬局の戸棚の奥で消毒液がひと瓶まるごと零れ出したように柔いツンとした匂い……その時、膜はまだ彼女だけを覆い、太陽も月も世界も勿論外に放り出されて、もろもろとした、濡れて
もっとみる世界が退屈で仕方ない女の子たちへ #第2章
2
海辺の家だ。小さな港町を車でひたすら奥へと入っていく。「さっき、買い物にいったあなたをデパートの一階で、大理石の柱にね、もたれかかって待っていた時……」町の先端に微かに見える岬を目指していくと、嘘のように人気がなくなり、建物は消え、漁師たちの活気も幻のように霞んでいく。そして急に緑が増えだし、左手にきつい潮の香りを伴った