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LINE NEWS事業担当執行役員が見据える、「LINE NEWSが従来のニュースサービスを超える未来」とは?

こんにちは。LINE NEWS企画チームです。LINE NEWS編集部、LINE校閲チームに続いて、企画チームも、LINE NEWSのプロダクト企画に携わるメンバーやプロダクトにかける思いについて、発信しています。

今回ピックアップするテーマは、LINE NEWSがこれから進もうとしている方向性について。様々な施策や新しい取り組みの大元に紐づく、LINE NEWSが見据えている未来を掘り下げていきます。お話を伺うのは、LINE NEWS事業担当執行役員 上田恭史さんです。

上田 恭史(うえだ・きょうじ)
LINE株式会社 執行役員 検索・ニュース事業担当。2010年3月入社(当時はネイバージャパン)。8年間の大学生活と教師として過ごした20代を経て、30歳からインターネット業界へ。NAVERまとめを始め、様々な新規サービスに企画・ディレクターとして携わり、2013年にはLINE NEWSの立ち上げに参加。現職に至る。

― 「LINE NEWSのこれから」について話を進める前に、「LINE NEWSのこれまで」を改めて振り返っておきたいと思います。2013年にLINE NEWSがまずアプリで始まった時、上田さんはサービス企画としてディレクションをされていますね。LINE NEWSアプリのリリース当時、サービスのキャッチコピーは「LINEが作ったやさしいニュース」でした。

― この「LINEが作ったやさしいニュース」誕生には、どのような背景があったのでしょうか。

状況的な背景でいうと、まず当時、ニュースサービスはYahoo!ニュース一強の時代が長く続いていました。PCからスマホへのシフトが進み、2012年頃からスマホ主体の様々なニュースサービスが登場しましたが、まだまだYahoo!ニュースが絶対王者。どのサービスもYahoo!ニュースには遠く及ばない中で、私たちはまず、Yahoo!ニュースの主たる利用者とは別の層であり、そもそも普段から“ニュースに触れる習慣があまりない層”、つまりは10代、20代に向けたニュースサービスから始めようと考えました。そういう人たちに何らかの形でニュースを届け、もっと読んでもらうことが、私たちLINEだったらできるんじゃないか、というのが始まりです。

立ち上げの頃よく言っていたのが、ニュースって毎日やってくるものだから、その瞬間だけ見ても何だかよく分からないことが多いんじゃないか、ということ。例えば、ある閣僚が辞職したニュースを見ても、そもそもこの人が誰で、何が原因で、その原因の元にある背景は何で…と、日々ニュースを追っていないとコンテクストが見えない。それなら、ニュースに接した時に、知りたいと思ったらいくらでも掘って知ることができるようなフォーマットを作って、それこそニュースに詳しい友だちが自分に合わせて教えてくれるようなイメージで、短く簡単に話題が伝わる。そうやってニュースを分かりやすく消費してもらおうというのが、「LINEが作ったやさしいニュース」の試みだったわけです。

また、立ち上げ当時、私やニュースチームが共通して感じていた“ニュース”に対する違和感も、LINE NEWSに反映されてきたと思います。それは、一見、自分とは直接関係しないように感じる話題でも政治や経済に類するニュースが常に優先され、日々の生活に密着する話は優先度が下がるというような序列が、マスメディアのニュースにはあるのではないか、ということ。もちろん、そういった公益性の高いニュースは必要不可欠ですし、LINE NEWSとしても、そこはしっかりと伝えていきたいという姿勢に変わりはないのですが、自分の手が届く範囲の事柄も同様に大切なニュースではないのか、という違和感もありました。これは、インターネットの創成期から関わってきた人間の感覚なのかもしれないけれど、ユーザーからも情報の発信や要求ができ、ユーザーごとに情報を出し分けることもできるのが、“インターネット前”にはありえなかったインターネットのいいところ。それゆえに、マスメディアとは違う価値観を提供できて、これまでの情報の流通に対してパラダイムシフトを起こすことが可能になります。多くの場合、マスメディアが取り上げるトピックは、「行列ができる都内の人気店」や「首都圏の大規模イベント」など、大多数の人が興味を持つであろうというマジョリティ性が前提となっています。一方で、そのマジョリティ性を持たない人、そこからこぼれ落ちてしまう人たちもいます。例えば、10代の頃、当時人口10万人台の山口県山口市に在住していた私だったら、「行列ができる都内の人気店」や「首都圏の大規模イベント」は縁遠く、どこか他人事のような気がしてしまうでしょうし、それよりも、近所に新しくオープンしたカレー屋の方が、自分の生活に密着した「欲しい情報」だったりするわけです。そういった、マイノリティ性のある人たちが求める情報もきちんと届けたいという、 ブロードキャスト的な情報に対するアンチテーゼに重きを置く価値観が、当初から色濃くあったなと思います。

LINE NEWSを押し上げた三つの転換点

― 2013年にサービスを開始し、2019年にはYahoo!ニュースと肩を並べるまでに成長しました。その変遷を振り返って、LINE NEWSの転換点となった施策・出来事を三つ選ぶとすると、上田さんは何を挙げますか?

まず、2014年から始めたダイジェスト配信。LINE NEWS単独のアプリから、LINEアプリの中にサービスがあるという形にシフトして、LINE公式アカウントから1日3回(現在は4回)、パッと見ただけで主なニュースが分かり、読んでもらいやすいダイジェスト形式で配信するようにしたんです。そしてこのダイジェスト配信の形を媒体社さんに開放して、LINEアカウントメディアとしてスタートさせたのは、大きな飛躍だったと思います。

LINE NEWSのダイジェスト配信はすべてのユーザーにとって主要なニュース、最大公約数を扱うという意味で非常にブロードキャスト的なんですよね。LINEアカウントメディアを始めたことで、立ち上げの動機でもあったマス向けではない情報も届ける、さらにユーザーは受け取る情報・媒体を自分で選べる仕組みができたのは、最初の転換点ですね。

二つ目は、2017年から設置されたニュースタブ。ダイジェスト配信、LINEアカウントメディアを通してLINEの中でニュースを見てもらう習慣ができたところで、今度は「自分の好きな時にニュースがチェックできる場所」を作りました。それまでLINEには、「友だち」「トーク」「タイムライン」「その他」の4つのタブしかなかったので、5つ目の「ニュース」タブが設置されたことは、LINE NEWSにとってかなりのインパクト。というのも、これまでダイジェスト配信が届いたタイミングでニュースを見てもらうことが主だったのが、ちょっとしたスキマ時間にニュースを見るという行動へ、LINE NEWSの使い方が変わったきっかけになったからです。

三つ目は、記事のレコメンデーションに舵を切ったこと。パートナーメディアによって配信される記事数が底上げされたことで、より個々のユーザーの趣味嗜好に合う記事をマッチングして届けるレコメンデーションを強化できる下地が整ってきたんです。2016年から、レコメンドの精度を上げるべく本格的に力を入れ始め、2019年にはLINE NEWSのトップ最上部にパーソナライズ枠を設置しました。各ユーザーの興味関心を惹くと思われる記事が自動で掲出される枠ですね。

記事のレコメンデーションに舵を切ったことにより、自分の好きなタイミングで自分の興味関心のあるニュースを見ることができる、よりインターネットらしいニュースサービスへと変わりました。LINE NEWSはこの10年ほどで、みんなが同じものを見るブロードキャスト的な世界観から、より一層、個人の関心事に目を向けたパーソナライズドメディアへと加速していったんです

LINE NEWSの成長と同時に進んだ、ニュースを取り巻く状況の変化

前述した三つの転換点を経て、2019年にはYahoo!ニュースと同等レベルになるという目標を達成しました、が…。それでゴールまで登り切ったかというと、実は全然そうじゃないんです。

今やYouTube、TikTokがあるし、Twitter、Instagramもあるわけで、ニュースも含めた情報を得る手段というのは必ずしもニュースサービスじゃなくていい状況なんですよね。それこそ、私たちが当初ターゲットにした10代、20代は、ソーシャルのタイムラインに流れてくるニュースで十分な情報は取れていると感じていて、タイムラインに流れてこないものは自分の観測範囲外だからあまり知らなくてもいいや、という割り切りがあるんじゃないかと考えています。さらに2020年からの状況の変化もあってか、全世代で政治経済のようなニュースジャンルに対する関心度合いが下がっているという独自調査の結果も出ているんですよ。つまり、LINE NEWSが成長を続けたこの9年の間に、急激なスマホシフト、ソーシャルネットワークのプラットフォームとしての成熟化、そしてニュースドメインの地盤沈下が進んできたと言えます。なので、ニュースという狭いドメインの中ではNo.1かもしれないですが、それって、どうなのと(笑)。

― 2013年当初に「No.1のニュースサービス」というゴールを目指して山を登ってきたんだけども、取り巻く状況の変化があって、途中から違う山に登り始めることになった感じですね…。

そうですね〜。戦う相手も、場所そのものも変わった感じはありますね。可処分時間の使い先としてはYouTubeやTikTokに今は敵いませんから。だけど、LINE NEWSはそれらに代替するもの、並ぶものになりたいと思いますし、さらには私たちにしかできないことをして、LINE NEWSにしかない価値を求めてユーザーが集まる、という状態を目指したいですね。そのためには、前述の転換点に匹敵するような大きな節目を作って、ブレイクスルーをしないといけないと思っています。

その次の節目が何かというと、情報の質の変革だろうと思いますね。具体的には、よりユーザー個人の趣味嗜好、生活エリアなどに特化したニッチな情報を得られるようにしていきたいと思っています。全員のための情報ではなく、特定の誰かにとって身近な、濃い情報を届けるというイメージです。実際、今年8月から始めた「AM(アカウントメディア)セレクト」で、駅単位くらいでの地域や、より細分化された趣味に特化した媒体がアカウントメディアに参画しやすい環境を作り、粒度の細かいコンテンツを増やしているところなんです。現在は東京の一部地域のみからスタートしている「地域」タブを全国展開し、ゆくゆくは生活エリアに関する情報を「地域」タブから得られるようにしたいと、考えています。

「地域」タブとは、現在地・居住地・勤務地・よく行く地域など、ユーザー一人ひとりの生活エリアに密接した「もっと身近な情報」をお届けするもの。例えば、新宿に職場がある40代男性ユーザーの「地域」タブには仕事終わりに立ち寄りやすいカフェ・居酒屋に関する記事が優先的に掲出されたり、吉祥寺に住む30代女性ユーザーの「地域」タブには吉祥寺に新しくオープンしたパン屋の記事がピックアップされたりするなど、各ユーザーの生活や興味に寄り添う情報を得ることができる。

「地域」タブのプロジェクト進行と同時に、現在は“媒体”という集合体として情報を発信しているところを“媒体に属する個人”が発信し、より距離感の近い情報を、ユーザーとインタラクティブにやり取りできる世界観を目指す「AM2.0」という企画にも着手していますね。

AM2.0のイメージです

「AM2.0」で目指すことの一つが、媒体に所属する一個人とユーザー個人、という関係性の構築。例えば、音楽系の媒体に所属している編集者、記者とユーザー(読者)間で、「次のフェスで見たい(呼んでほしい)アーティスト」についてインタラクティブにトーク。共通して興味のあることや媒体を介して、編集者・記者・ユーザーとより密なコミュニケーション、コミュニティを実現できる。

さらに大きな視点で見ると、近い将来、LINE NEWSは政治経済などの従来の代表的なニュースカテゴリーだけを扱うのではなく、近所の新しいカフェや週末の音楽イベントなど、ユーザー個人が求めるローカルやニッチな情報も含めた広義のニュースを届けていくことになると考えています。そうなると、その“パーソナライズされた広義のニュース”というコンセプトに合わせてUIも変えていかないといけない。そもそも、トップにリスト型のページがあって、見出しがあり、そこから詳細ページに飛び、読んだらまた戻る…という従来の構成はPC時代の名残だと思っていて。スマホに向いていないんですよね。それよりはタイムライン的なフローというか、その場でどんどん情報が消費できる形にしていく方が合っているだろうということで、ニュースタブのリニューアルも現在進めているところです。

NEWSにLINEだからできること、を掛け合わせた“その先”は

― “パーソナライズされた広義のニュース”を届けるニュースサービスへと進化した、その先については、どんなことを期待していますか?

そうですね、“LINEだけが持っている良さ”と掛け合わせることで、まだまだ面白いことができるなと感じています。現状はLINEの良いところや、LINEらしさを活用しきれていないなと思っていて。具体的には、LINEで繋がっている身近な人たちが持つ関心事や情報こそ、媒体からの情報だけでは得られない、かつ、リアルに興味を惹かれる“ニュース”だったりするのに、そこを何がしかの形で活かしきれていないということ。また、LINEはログインして使うものなので、一つのIDを、ログイン状態を保ったままで長らく使い続けてもらっているという潜在的な価値も活かしきれていません。ログインしているのだから、LINEマンガやLINE MUSIC、LINEギフトなどのファミリーサービスと連携して、ワンタップでアクションすることは可能なんですよね。

例えば、LINEの友だちから「LINEマンガで買ったこの漫画、面白かったよ」という情報が、自分のLINE NEWS上のタイムラインに流れてくるとします。自分も読んでみたいなと思ったら、その場でワンタップするとLINEマンガで立ち読みできたり、気に入ったらそのまま買えたりできてもいいですよね。また、私がよく訪れる店に関する記事をLINEで繋がっている複数の友だちが「いいね」していたとしたら、彼らとグループLINEを作って誘って、そのまま日程の相談からお店の予約までシームレスでできる、ということも不可能ではないんですよ。

情報を得るところからアクションまでを通しでできる、というようなことが、LINEにあるLINE NEWSならできるのではと考えています。LINEで繋がっている同級生や友だちなど、自分の身近な人たちの“ニュース”をLINEで加速してあげる方が、LINE NEWSにしかできないことじゃないのかなと。進化するにしても、LINEの持つポテンシャルを発揮したユニークネスのある成長を、と考えています。その進化を遂げる中で、もしかしたら、LINE NEWSの“NEWS”という看板は必要じゃなくなるかもしれないですね。それくらい大きな変革をしてもいいと思っています。

― LINE NEWSのチームについても少し掘り下げて伺いたいと思います。上田さんから見て、LINE NEWSのチームメンバーはどんな人たちですか。

一言で言うなら、真摯な人たち。ユーザーに対しても、仕事に対しても、本質的な価値を作ろうと真摯に取り組んでいる人たちです。真面目、とも言い換えられるかもしれません。情報を届けることに対して熱い想いを持っている人も多いです。そういう人たちと一緒にLINE NEWSを作れているのは、とても素晴らしいことだと思います。一方で、従来の枠組みの殻を破ることに対して、少し慎重すぎるかなと感じる場面もあるので、もったいないなと。それこそ私が止めに入るくらいに(笑)、新しい発想をどんどんしていってもいいのになと感じることもありますね。考える力、実現する力があるなら、その自分の力にレバレッジをかけて、ギリギリのところまで挑戦してほしい。日本にヘッドクォーターがあり自分たちで意思決定ができる環境ながら、世界規模のインパクトを作る可能性のある会社にいるのだから。

私自身、いや、LINE NEWSのメンバーやLINEの経営陣も、インターネットの可能性やLINEのポテンシャルをまだまだ信じている、というのが共通項としてあると思っています。インターネットでできることはもう出尽くしているから、イノベーションはもうないという声も聞きますが、そう言っている間に、AIが精巧な絵を描けるように進化しましたし、それこそリモート会議が主になり、日本のどこにいても仕事ができるようになりましたよね。イノベーションってまだ起こると思っているし、起こってほしいし、起こしたい、と思いませんか。「イノベーティブであれ」というある種の青臭さを持ち続けて、なんとか大企業っぽくなってしまうことを拒んで、まあ、その分、混乱はあるんだけれども(笑)、それでも何か面白いことをしたいという価値観を大事にしていこうっていうのが、うちの会社のすごくいいアイデンティティなので。GAFAに代表されるようなテックジャイアントに対して、一矢報いられるだけの何かをやりたい。本気でそう思っている人たちの集まりだと思っています。

photo / Keiko Ichihara

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