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中小企業もできる!企業の脱炭素目標「SBT認定」のメリットと取得法

最近、環境関連のニュースで時折耳にするSBT。TBMも2022年3月に認定を取得しています。一体何のことで、その取り組みにどんなメリットがあるのか。そして実際に、どんな作業が発生するのか。TBM新規事業部のメンバーがお答えします。

SBTって何?


SBT(Science Based Targets:科学的根拠に基づく目標)とは、気候科学に基づく温室効果ガスの削減目標のことでパリ協定に定められている世界共通目標です。

目標は具体的に定められており、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち(Well Below 2℃)、1.5℃に抑える努力をする」と示されています。

その水準と整合した目標を企業も設定し、国際環境NGOのCDP(Carbon Disclosure Project)や世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)によって設立されたSBTi(SBTイニシアティブ)に申請を行うと、整合性のある目標であることの承認を受けることできます。承認を受ければ、SBT認定企業ということがSBTiウェブサイトでも公表されます。

つまり、企業としての温室効果ガスの削減目標を世界の目標基準に合うかたちで作りました!というアピールができるというわけです。

SBTに取り組むメリット


・CDP評価の向上
CDPとは、温室効果ガスの排出量や気候変動への取り組みに関する質問書を企業に出して情報を収集・評価し、公表をしている国際NGOです。気候変動へ関心のある機関投資家から支持されています。
CDPの質問書にはSBTに関する質問もあり、評価対象になっているためスコアリング結果にも影響してきます。

・投資家から信頼される
機関投資家は、中⾧期的なリターンを得るために企業の持続可能性を評価します。前述したようにCDPの採点においても評価されるため、投資家からのESG投資の呼び込みに役⽴ちます。実際に、SBT企業の185社の企業の役員へアンケートを実施した結果、52%が信頼向上につながったことを実感したと回答しています(出典:SBTSix business benefits of setting science-based targets」)。

・ビジネス機会の獲得
大手企業ではサプライヤーへSBT目標の設定を依頼している企業もあります。SBT認定を取得していれば、新しい顧客の開拓や顧客離れのリスクの低減にもつながると考えられます。

コスト削減やイノベーションの機会
排出量削減目標の達成に向けて、企業が省エネルギー製品や再エネルギー製品の開発、業務効率化に取り組むきっかけを作り、コスト削減やイノベーション促進につながる可能性があります。

・企業のイメージアップ
環境問題への取り組みは私たちの生活を持続可能なものとするためにも必要不可欠です。特に日本全体のCO2排出量のうち企業活動が占める割合は80%以上と言われています。企業として温室効果ガス削減に努めていくことは、環境問題に貢献できる上にブランドイメージや社員の意識を高める働きも期待できるでしょう。

企業の取り組み状況


2023年2月1日現在、認定とコミット(2年以内にSBTの認定取得を目指すことを宣言すること)を合わせて世界で4,484社(うち⽇本企業426社)がSBTに取り組んでいます。

下のグラフからも分かるように、昨今のカーボンニュートラルへの関心の高まりを受け、ここ数年で参加企業が急激に増加しています。
新しい商取引をするにあたり、環境意識があるかの確認の一つとしてSBT目標を尋ねられる日が来るのもそう遠くないのかもしれません。

出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」

中小企業向けSBTと通常SBTとの違い


SBT申請には、どの企業でも受けられる通常のSBTと、従業員500人未満の非子会社、独立系企業が受けられる中小企業向けSBTの2種類の認定が用意されています。
中小企業向けSBTの場合は、安価かつ取り組みやすい条件になっています。

・中小企業向け
目標年:2030年
基準年:2018年~2021年のいずれか
算定範囲:Scope1~2
費用:1回1,000ドル(税抜き・以下同)

・通常
目標年:申請年から5年先~10年の任意年
基準年:最新データが得られる年での設定を推奨
算定範囲:Scope1~3(3は全体合計の40%を超える場合のみ)
費用:1回9,500ドルで最大2回の評価

SBT認定を受けるまでの流れ


コミット表明(任意)
前述した通り「コミット」とは、2年以内にSBT⽔準の排出削減⽬標を設定し、SBT運営事務局に申請することを、対外的に宣⾔することです。コミットしたい企業は、ウェブからダウンロードできるレターに企業名・⽇付・場所・署名を記入し、事務局の担当窓口へ送付します。コミットを⾏うことでSBT運営事務局のウェブサイトに企業名が掲載され、対外的に企業が脱炭素に取り組む姿勢をアピールできます。

温室効果ガス排出量の把握
Scope1~2の範囲である事業者⾃らの排出量や、Scope3といわれる事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量の把握・削減が求められます。温室効果ガス排出量算定に関しては専門知識が必要だったり社内での情報収集の手間がかかるなど、作業負担の多い作業にもなりますので、専用の温室効果ガス排出量算定ツールを用いるなどで算定にかかる負担を減らして取り組むのがおすすめです。

目標の検討
目標年・基準年・対象範囲・目標水準などの項目ごとに要件があります。要件を満たすように、目標を設定します。

申請・承認
申請書を提出します。通常のSBTは9,500ドルの申請費用で最大2回の評価を受けられ、それ以降の評価には1回につき4,750ドルの費用が必要です。中小企業向けの場合は、1,000ドルです。

SBT事務局による⽬標の妥当性確認が⾏われ、認定基準への該否を審査され、メールで回答されます。晴れて⽬標が認定された場合、SBT運営事務局のウェブサイトに企業名及び⽬標が公開されます。

まとめ


SBTの申請にはいくつかのステップがあり、取り組むのにも手間がかかりそうだという印象を持たれた方もいるかもしれません。

すでに温室効果ガスの算定をされている場合は、目標などを決めていくことで申請ができますので是非取り組んでみてください。

算定がまだ済んでいないけれども、今後会社の方針として脱炭素経営をすすめていくという方針でしたら、まずはこの機会に算定と目標設定を検討してみてはいかがでしょうか。

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