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会議・イベントのカーボンオフセットに挑戦してみませんか?

TBMでは温室効果ガス排出量の可視化事業を行っています。今回は、最近問い合わせが多いイベントや会議のカーボンオフセットについて、カーボンオフセットとは?という基本から、イベントや会議のオフセットを行なうための9つのステップについてご紹介します。


カーボンオフセットとは


日常生活や企業等の活動で発生してしまうCO2(=カーボン)。これをいかに減らすか、今やだれもが努力しているところです。しかし、それでも自力で削減しきれなかった分について、森林による吸収や省エネ設備への更新などによって他の場所で削減された分を買い取り、埋め合わせ(=オフセット)することを「カーボンオフセット」と呼びます。

オフセットのためのCO2削減については、森林や植林に基づいたものの他に、風力、太陽光、バイオマス、地熱など再生可能エネルギーの利用や、伝統的な調理法に頼る地域にエネルギー効率が高く環境や健康負荷の低いクックストーブを設置する取り組みなど、様々なプロジェクトが世界各国で組成されています。

主な買い手である企業は、どういったプロジェクトが良いか、どの国のものが良いか、プロジェクトがどのSDGsの目標に貢献しているものかなどを吟味しながら選べるようになってきています。

そんなカーボンオフセットの仕組みを使って、会議やイベントで出るカーボンをオフセットしたいというニーズも徐々に増えています。

どんなイベントがオフセットされているか


環境省が紹介している事例を見ると、青森ねぶた祭りや大阪のだんじり祭りなど他県からも多くの人が集まるお祭りや、そうめん流しのイベント、コンサート、スポーツの試合、医学系の学会での活用など多岐にわたります。

カーボンオフセットの他、会場でのポスターやコップなどを環境配慮素材で作ったものにし、回収してリサイクルを行う資源循環の仕組みを取り入れた事例などもあります。

環境省のガイドライン


イベントにおけるカーボンオフセットの取り組みは少し複雑なため、平成23年に環境省からガイドラインが出ています。

ガイドラインによると手順は、会議・イベントにおけるオフセットの企画立案~総括とオフセット完了報告 までの9ステップとなっています。

少し手順が多いので、1つ1つ見ていきましょう。

会議・イベントでのカーボンオフセットの9ステップ


ステップ1:会議・イベントにおけるオフセットの企画立案

まず最初は、目的・実施内容・スケジュール・カーボンオフセットの証明方法の検討など企画立案を行い実施意義を明確にしたり、イベントまでの業務内容・スケジュールを把握したりし、必要な人員を明確にすることで全体像を把握します。

目的例
・地球温暖化対策の取り組みやオフセットの意義について理解を促進すること
・「見える化→自分ごと化→削減努力→埋め合わせ」という流れを作り出すことで、ライフスタイルや事業活動が低炭素型にシフトする契機を提供すること

ステップ2:体制づくり・役割分担

オフセットにかかる全体の取りまとめを行う責任者は誰か、算定に関わる情報を集める担当者、算定を行う事業者、クレジットの調達・無効化は誰が行うかなど具体的に役割を明確化しておくことで混乱が起きないようにします。

ステップ3:事前算定

役割を明確化したら、事前算定を行っていきます。会議・イベントにおけるどの部分(会議開催で使う電力使用、参加者の移動に伴うエネルギー使用、会議で使うポスターや紙の作成、廃棄物の処理で発生する部分など)を可視化するか決めます。

次に、可視化する部分に関わる活動量を把握するための情報を集めます。当日に使うリーフレットやポスターの数、参加者がどの地域から参加されるか、廃棄物はどういったものがどれくらい出るか。

上記の情報を元に、活動量(重さや金額)を算出し、その活動量に、算定したい対象やエネルギー・サービスの排出係数(一定の使用量あたりのCO2排出量)をかけて温室効果ガスが全体でどのくらい出ているかを把握します。※温室効果ガスを算定するコンサルやツールなどもあるので、それらを利用することが多いようです。


・電力消費量×排出係数=電力使用で発生する温室効果ガス量
・一般廃棄物発生量×排出係数=一般廃棄物廃棄により発生する温室効果ガス量

ステップ4:クレジットの調達と無効化方法

上記でイベント・会議全体で発生する温室効果ガス発生量が把握できたので、クレジットの調達を検討していきます。想定した発生量に対してオフセットを行うパターンと、会議終了後に実際の実績に基づいた発生量を再度計算してその分をオフセットするパターンの2つの手法があります。

昨今は、どういったクレジット(森林由来、省エネ由来、どの国で実施されているプロジェクトかなど)でオフセットされたかも注目されますので、イベントや会議の特色にあったものを選定すると参加者へ意義をより感じてもらえます。※算定と同じく、クレジットの調達においても専門家を頼ることが多いようです。

参考)中部地方では、中部経済産業局により「中部産CO2クレジット」がまとめられており、情報共有なども合わせて行なわれています。

ステップ5:会議・イベント開催前の情報提供

事前の情報発信も重要です。せっかくカーボンオフセットの取り組みを行なっても、参加者に伝わらなければ意味がないので、HPで分かりやすく説明と共に告知する、チラシ、メールでも算定結果やオフセットプロジェクトの概要を伝えるなど積極的に発信していきましょう。

ステップ6:イベントの実施(会場での準備・開催・撤収)

カーボンオフセットするので削減の努力はしないで良いということでは本末転倒になってしまいます。イベント実施前、実施中、実施後を通じて削減の努力はできる範囲で行うことも心掛けましょう。

・会場をアクセスしやすいところを選定し、来場までにかかる温室効果ガスの量を減らす
・参加者に服装面での協力を呼びかけて、空調の温度設定を適切に管理する
・会場で配るチラシやリーフレットを環境配慮素材を用いて作成する
・参加者にゴミの分別で協力を求め、廃棄するものもリサイクルする仕組みを回す
など取り組めることは多岐にわたります。

ステップ7:事後算定・評価

イベント・会議終了後は、実績値に基づき速やかに算定し、関係者で把握、分析し、次回の類似のイベントを行うときなどの参考にできるようにしておきます。

ステップ8:追加のクレジット調達・無効化

イベント終了後に実績値に基づき算定を行います。実施後にクレジット調達を行う場合、想定外の追加で排出した温室効果ガスは、このタイミングでオフセットします。オフセットした後の報告はイベントHPなどで広く公開し参加者に訴求しましょう。

ステップ9:総括とオフセット完了報告

アンケートなどで参加者からの声を拾い、カーボンオフセットを実施した効果や改善すべき点を検証して終了になります。集めた情報に関しては、公開することで社会一般への理解促進に繋がることが期待されます。

 まとめ


以上9ステップをご覧になって、いかがでしょうか。少し工程が多く、温室効果ガスの算定やカーボンクレジットの調達部分は大変そうという印象を受けた方も多いかと思います。

ですが、イベントや会議の入札要件の1つになっていたり、主催者側から求められたりするケースも今後増えてくることが予想されます。

1つ1つのステップを確実に進める、専門家の力を借りてみる、など取り組みをしっかり進めればそんなに難しくないはずなので、イベントや会議運営に関わる方は是非挑戦してみてください。

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