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コロナウイルス再考〜この感染症を乗り越えた先の未来

日本はコロナウイルス感染症(COVID-19)の話題でうんざり、という人も多いと思います。
アメリカはようやく本腰を入れて取り組み始めたところであり、後だしジャンケンなのに、そのアドバンテージを活かしきれていない印象もあります。

この記事は、日本の状況を外から見て、感じることの私見です。

一般的な情報として日本の情報源を活用されている方が多いと思いますが、noteの良いところは海外組がそれなりにいることですし、海外の情報発信を見ると、情報の密度の違い、捉え方の違い、そして温度差なども感じますので、敢えてアメリカの情報源のみで判断して記事にしたいと思います。

意外によくまとまっているニューヨークタイムズ

こういう時に問題になるのは、どの情報を信じるのか、だと思います。
とにかくネットの発展によって情報が簡単に得られるようになりましたが、一方で、どの情報が正しいのかがわかりにくいです。

一次情報(オリジナルの情報)を見るのが鉄則ですが、時間がない時はマスメディアやまとめサイトなどの記事(二次、あるいは三次情報)を見ることもあると思います。
一次情報を読者がどう解釈するのかも重要ですが、二次情報以降は必ずその発信者のフィルターを通した情報(バイアスといいます)になりますので、そこは十分に考えないといけません。

私は医師であるという立場上、基本的に医療情報を発信する際は自分がなぜその情報を選んだのか(自分の中のバイアス)を明らかにするように心がけています。

そういう立場で見ると、ニューヨークタイムズのこちらの記事は客観的事実を中心にまとめているのがいいなと思いました。

最初に6つのポイントが挙げられています:

1. How contagious is the virus? このウイルスの感染力は?
かなり広がりやすいので封じ込めが難しい。
2. How deadly is the virus? 致死率は?
まだ明言しにくい。致死率はおそらく1%以上、季節性インフルエンザより高い。
3. How long does it take to show symptoms? 症状が出るまでの期間は?
典型例は5〜7日間。
4. How much have infected people traveled? どのくらいの感染者が旅行した?
世界中でアウトブレイクするに足る人数。
5. How effective will the response be? 今のところどのくらい対策が効果を挙げている?
中国では新規発症例が減少してきているが、その他の国ではむしろ増え続けている。
6. How long will it take to develop a treatment or vaccine? ワクチンはどのくらいでできる?
臨床試験の始まった薬剤もいくつかあるが、少なくとも1年はかかる見込み。

致死率と感染の拡がるスピードからわかること

今回一番目にとまったのは死亡率と感染の拡がるスピードの表。

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縦軸は致死率、横軸は感染の拡がるスピード。
赤い四角が、今回のコロナウイルスの今のところの立ち位置。
死亡率がそこそこ高いが初代SARSやMERS、鳥インフルエンザほどではなく、拡がるスピードはインフルエンザより早い。

この表から言える事の一つは、ものすごくやばい病気は潜伏期間が短く、すぐに症状が進行し、あっという間に致命的になるけれども、致命率が高い分他の人に感染させる時間が少なく、拡がりにくい。
逆に、致死率の低い病気は、一般的に潜伏期間が長く、致命的になりにくいので、軽症者を中心にどんどんと拡がっていく。

今回のコロナウイルスの正確な致死率は、軽症例がどのくらいいるのかはっきりしないとわからないのですが、現象としてみてみると、おそらく無症状や軽症例が相当数いて、致死率そのものは今わかっている値よりもかなり小さくなる可能性もあるのかなと。

再考〜この感染症の起こった意味と未来

では、なんで中国で拡がり、致死率が高いのか?
これは推測にすぎないけれども、やはり衛生面や社会構造などの背景が大きいように思えます。人口密度、クラスターの密閉度、ビュッフェやスポーツジムなどの気道分泌物が散布されやすい環境、そして医療機関へのアクセスなど。

世界に拡がっているのはもちろん、みんなが旅行をする時期に運悪く重なったこと、そして北半球全体が冬まっただ中であることが大きいと思います。
どの国も水際対策をしてはいますが、現実的にはすでに水際では防ぎきれていない印象です。市中感染として拡がっていくのは時間の問題でしょう。

時間差で拡がることで、医療機関が破綻することなく対処が可能になるという一面があるのですが、初期に感染が拡がった国ほど状況は厳しく、エピセンター(感染源)である中国の致死率が高いのも、ある意味では当然の結果なのかもしれません。

個人的には、日本は感染者が拡がっている割に致死率が高くなく、そこが私が注目している点です。日本は、衛生面は中国よりよいですし、文化的にも清潔を保つことが当たり前の環境なので、この難局もうまく乗り越えていけるのだと思います。この点では、アメリカは中国に近い部分があるので、感染がまだ拡がっていないものの、今後が非常に心配です。

世界的な感染症の危機は定期的にやってくるものですし、人類はそれを幾度となく乗り越えてきました。かつては世界の人口の1/3が亡くなる疫病もありましたし、その都度、工夫して乗り越えてきたのだと思います。

今回の日本で報道されている色々な騒動に心を痛めていますが、実は、この感染症クライシスを乗り越えた先に、より一層強くなった日本社会が見られるのでは、と海外から期待を寄せています。

テレワーク、テレメディスン、働き方改革、オンラインコミュニティ、健康、未病・予防医療などの分野は飛躍的に伸びる可能性があり、これに適応した社会構造に改変されることで、みんなが幸せになれるきっかけにもなりうると思います。

暗い話題ばかりですし、特に何一つ解決策を提案しているわけでもないですが、海外から感じるのは、「日本ならきっとうまく乗り越えられる」という確信です。「このピンチをどうやって打開して新たなステージに上がっていくのか」という未来への希望を絶やさず、でも過信しないで立ち向かっていくその立ち居振る舞いに期待するのでした。

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