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往診のある一日


往診の仕事を再開


病棟のみで患者さんをみてきた私だが、7月から往診を再開した。
5年ぶりである。

5年ぶりにやってみて感じたのは、高齢者の一人暮らしが増えたこと、
また、在宅や施設で、人生の終わりを迎える方が増えたということ。

7月末に、施設に暮らす80歳代女性がなくなった。進行した肝硬変であった。肝臓に流れ込む血管、門脈に血栓ができ、肝硬変が進み、腎臓の機能も悪化して、全身が浮腫んでいた。でも、亡くなる数時間前にごはんを数口食べ、施設の看護師さんに冗談を言っていた。

前の担当医から、主治医を交代し、まだ3回しかお会いしたことのない人だった。

施設での最期がスムーズだったのは、施設の看護師さんの対応が適切で、前担当をしていたドクターが、家族や施設の職員に経過や予後をきっちり説明し、おみとりの意思を確認していたからだと思う。

また、患者さんの状態を適宜施設に確認し、施設での対応をアドバイスしていた、在宅の看護師の存在も大きかった。

後日、施設の部屋を片付けていた、息子さんとお孫さんにお会いした。母をここで看取ってもらってよかったとおっしゃていた。


臨時往診


今日も往診の日だった。
臨時往診が一軒。進行した肺がんで、ベストサポーティブケアといって、がんに対して症状緩和の治療のみを行っている80歳代の男性。

肩がとても痛くてしんどいという。がんの鎮痛薬がうまく使えていないのだろうか。

お伺いすると、患者さんはトイレから歩いてリビングに帰ってくるところだった。普段は酸素吸入をしているのに、トイレに行く時、酸素のカニューレを外してしまっていた。酸素のチューブが煩わしいという。

そのせいで血中酸素飽和度は、正常よりも20%くらい低い75%になっていた。
酸素を再び吸入してもらい数分で、95%に回復した。

1時間半前に痛みの頓服を飲まれていたので、お会いしたときには、痛みの程度が10だったのが、3から4くらいになっていた。

痛みの状況について、どんな形で鎮痛の頓服薬を使っているのかなどを、本人や家族にお聞きする。

どうやら、頓服をうまく使えていないようだった。頓服薬がなくなるからと、痛くても飲まずに我慢してしまうこともあったという。

朝起き出すときに、痛みが強いとのこと。まず布団の中で頓服を飲んで、しばらくしてから起き出すことを提案した。

また、1日に使える頓服の量を、1回分増やしてみた。次の定期の往診まで5日間あるので、それまでの量を十分に処方した。

また、トイレまで行くと、酸素吸入のチューブの長さがギリギリになって大変なので、酸素の供給器を、今あるところから、もう少しトイレに近いところに移動してもらうことにした。

そのお宅を後にした。3人分の冷えたオロナミンCをいただいた。断ってもどうしても持っていってくださいという。往診でよくある光景。

痛み止めの頓服を、すぐ手に入れて欲しいので、すぐ処方をしたい。
車の中で持ち歩き用の電子カルテを使って処方しようとするがうまくいかない。病院の在宅センターに電話して、病院にいる他のドクターに処方してもらった。


新患さん 2軒


次に、新患さんを2軒回る。往診車は、ならまちの狭い道に精通した運転手さんが運転し、医師と看護師一名ずつが載っている。


新しい往診のお宅は、私がリハビリの入院で主治医をしていた88歳女性である。
家の中を歩行器で歩く形で退院したが、今のところ転倒していないようだ。

リビングにずっと座って、高校野球を見ているようで、足がむくんでいる。
テレビを見ながら、足をパタパタ動かしてくださいと伝える。

糖尿病持ちの方だが、傍らのテーブルには、卵ボーロと草もちがあり、訪問した時は卵ボーロを口にしていた。

クーラーも扇風機もついていなくて、じっとりと暑い。リビング脇のベッドには毛布があった。冷房をしっかりつけるようにお伝えする。

今まで、不摂生や通院中断で糖尿病が悪化したり、手術後にさっさと自分の基準で退院し、傷が悪化し再入院したりという方。

私がちょこっとアドバイしたくらいでは、今までの習慣を改めることはないだろうが、こうして往診を受け入れてくれるようになっただけでも進歩。できることはやって行きたい。

次の新患さんは、股関節の痛みで座れない80歳女性。肝臓の持病をお持ちだ。
この方は股関節の痛みの精査のため入院した。引き続き入院でリハビリを始めたが、入院生活がしんどく途中で帰宅された。初めてお会いする。

寝返りはなんとかできる。
寝たまま股関節を動かさせてもらうが、特に痛みはない。しかし起きて座ると痛いという。食事はベッドの上でとっているという。

退院の時に病院から処方された薬は割とたくさんあったが、飲んでいるのは1種類だけだった。薬へのこだわりが強く、自分が良いと思った薬を選んで飲んでいる。

今までかかっていた整形外科医院からもらっていたロキソニン、総合病院の消化器内科からもらっていた吐き気止めなど。

薬が入っているプラスチックケースの中には、さまざまなな種類の内服薬がたくさんあった。ケースを開けて、種類と残っている錠数を確認する。

付き添っている娘さんは、普段はお仕事で今後の往診のときには付き添えないと言いう。
往診ノートを作ってもらうことにした。
患者さん本人は2階から動けないので、今後、家に入るには、箱に入っている鍵を使ってくださいといわれた。

薬を数えた後は、本人の訴えを聞いた。娘さんと介護保険の区分変更の話や訪問リハビリテーションの話をした。そんなこんなでかなり時間がかかってしまった。

施設へ


次に訪問する施設に大幅に遅刻だ。入所者さんたちがお昼ご飯を食べる時間にかかってしまう。遅れる旨の電話を、看護師さんが施設にした。

世の中は盆休みの人が多いはずなのに、道は混んでいる。

11時45分に施設に到着。お昼ご飯を食べずに待っていてくれた方たちを5人みた。そのうち、87歳の男性の胸の音が悪く、呂律周りが悪い。また動きが悪くなって、いつもより介助の量が多い。

来週明けてすぐ、病院に来てもらい、血液検査やCTなどの検査を受けてもらうことにした。


振り返ってみて

今日は忙しかったなぁと、振り返る意味でこの記事を書き始めたが、もう2000文字を過ぎてしまった。

こうやって書いてみると、いろいろやっていたんだなぁと気づく。

この後、2件の往診に行き、病院に帰ってきた。
2人の新入院の方の対応をして、患者さん受け入れの判定会議に出た。
お昼ご飯を食べて、往診のカルテを書いて、入院中の患者さんの家族面談をした。
入院の患者さんの家族から、治療についての問い合わせ電話があって、それに対応した。

委員会への出席をサボったけれど、それでも帰るのが遅くなった。
いつもなら夕飯どうしよう、という自己対話が頭の中を巡るが、今日は作り置きおかずという強い味方があり、慌てずに済んだ。

おかげで記事を書けている。

オクラとカボチャを茹でたのみ
ほとんど火を使わない献立



往診用に購入したサボが届いていた。

きちんとしていて、底が滑りにくいつっかけ、
やっと見つけた


これを履いて、テキパキ、ときにはじっくりやっていこう。















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